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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
195/359

190、シェメラの像、そして・・・

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

投稿時間22時と予告して早く出来たので投稿します。

今回は女神像の仕掛けを解く話です。

「みんな、ちょっと話がある」


その日の夜、屋敷に戻ったケイ達は話があると、そのままダイニングルームにローゼン達を集めた。呼ばれたローゼン・パーシア・ルト・ボガード・シルトが向かい側に一列に座ったことを確認してから話しを切り出す。


「急で悪いが、明日からしばらく屋敷を空ける」

「依頼でしょうか?」

「いや、歴史解明のヒントがルフ島にあるから早速行ってみようと思う。お前達には悪いが、しばらくの間屋敷を頼む」


ケイ達は冒険者なので、依頼で屋敷を空けることは良くある。

ましてや、緊急依頼のためにすぐに屋敷を出ることも数える程度だが経験はある。

しかし今回は、ダジュールの歴史に関わるヒントを見つけたのでそれがどうなるのかケイ自身も全く想像出来ない。もし女神像の仕掛けを説いた場合、それによってしばらく屋敷には帰っては来られないかもしれないとケイは考え、他の五人にも話をした。


アダムとシンシアは根回しをしたから大丈夫だとは思うけどとは言ったが、こればかりはレイブンもアレグロもタレナも想像出来ずに困惑した表情をしている。


ケイの急な話にローゼンはいつものことかと尋ねたが、今回は違う様子にやっぱりと察する。使用人の五人には、既にケイ達が歴史の謎を追っていると話している。

本来ならば慎重に調査を進めるべきなのだが、一つだけ事を急いている。


それがアレグロの件である。


彼女は以前、屋敷で倒れたことがある。

その時は事なきを得たが、鑑定で定期的に彼女の体調を見ていくと、日を追うごとに【儀式的な浸食】が進行していることが分かっている。それが初めの時に比べ10%も上がっている。時折、他の仲間達からアレグロの顔色が悪いことがあると聞いており、現段階ではその浸食を示すタァークル率とそれを止めるための手段が一切ない。実は以前にエリクサーを創造し飲ませたことがあったが、それも効果がなく今に至っている。

アレグロは自分は大丈夫だと気丈に振る舞っていたが、当初に比べて身体のしんどさは上がっていると思う。歴史も気になるが、アレグロの体調もケイのみならず他の仲間や使用人達が気遣ってはいるものの、何も出来ないことに歯がゆい思いをしている。


「それと、ローゼンにはこれを渡しておく」


ケイはローテーブルの上にある物を置いた。

それは、ケイやアダムが使用している同じ型のスマホである。


「とりあえず何かあったら、これでアルバラント城のガイナールに連絡をしろ。俺とアダムのも入っているが連絡が取れなくなる可能性もあるから、一応念のためにガイナールには話はしてある」


驚きの表情でローゼンと他の四人は、ケイとスマホを交互に見やる。


使用人の五人は、歴史関係でケイ達が国王と繋がっていることは既に知っており、いずれ歴史について調べるために屋敷を空けることも薄々感づいてはいた。

ケイからスマホを託されたローゼンは一通り機能やら使い方を教えて貰い、何かあればガイナールに相談すればいいと伝えられると、改まってケイにお願いがあると述べる。


「ケイさん、今回はシルトさんを連れて行ってはいただけないでしょうか?」


シルトを?と疑問を浮かべたが、実は大分前から五人の中で話し合い持っていたらしく、もしかしたら欠如している記憶が戻るかもしれないという一縷の望みと、自分の身に何があったのか知りたいという願望もある。


ケイは仲間の方を向き、様子を伺っていると彼らもまたシルトにも知る権利があるとそれを承諾した。


翌日ケイ達は、同行するシルトと共にルフ島にある最南端のシェメラの像を目指して出発をした。


今日はちょうどルフ島行きの船がアーベンに到着する日で、ローゼン達に見送られながら、エントランスの転送ゲートからアダムの借家経由でアーベンに到着をするとそのままルフ島行きの定期便に乗り込んだ。



三日後、ルフ島に到着したケイ達はここで一つの問題にぶち当たる。


女神像のある最南端の岬までは、広範囲に渡って存在するスル大森林を越えなければならない。前回ケイ達が向かった時は、案内役としてナットがバニューボ達に話をして乗せて貰うことが出来たが、既にナットは仲間達とエルフの森の女神像に向かったためこの島にはいない。


「ケイ兄ちゃ~ん!」


ケイ達がどうするべきか考えていると聞き覚えのある少年の声が聞こえ、その方向を向くと、こちらに走ってくるゼムの姿があった。


「ゼムか!?」

「はぁはぁ・・・も~やっと会えたよぉ」


ゼムは息を切らせながらナットから事前にケイ達が来ることを聞いていたようで、船が到着してからずっと港を探し回っていたそうだ。

詳しい事情は聞いていないが、スル大森林前にバニューボ達が待機しているからその子達に最南端にある岬まで連れて行ってもらうように根回しをしているそうだ。さすが気遣いの元・日本人である。


「あと、テジオラ兄ちゃんがケイ兄ちゃん達が来たら教えてくれって言ってた」

「テジオラが?ギルドの方か?」


「いや、ここだよ」


ゼムの後方から見慣れた赤毛の男が歩いてきた。

思ったより早かったなとタイミング良く現れたテジオラが軽口を叩き、久々の再会だとケイの肩を叩く。


「少し前にナットから、近いうちにケイ達が来るからって話を聞いたんだ。どういうことなのか聞いたんだが、女神像に関係があるって言ってたんだけど、どういうことだ?」


テジオラは他にもケイ達の後ろに居たシルトを見かけると、彼は何者なのかと疑問を投げかけた。シルトはアレグロとタレナに関係のある人物で、今回の件で同行していると答える。ゼムは何のことかわからなかったが、察しにいいテジオラはなるほどねと納得の表情を見せる。

テジオラは、ナットから聞いた話を既に島の長兼冒険者ギルドのギルドマスターである父のオブスに話しをしているそうで、ケイ達のサポートに回ってくれと指示を受けていた。


「ゼム、親父にケイ達と合流したからこれから最南端の岬まで行くと伝えてくれ」

「うん!わかった!」


テジオラはケイ達に同行するとゼムに伝言をたくし、一行はスル大森林に待機しているバニューボ達と合流をしてから島の最南端にある岬へと向かうことにした。



バニューボ達に乗ったケイ達は、最南端の岬に向かっている道中にテジオラからブルノワと少佐について尋ねられた。従魔だと答えるとシルト同様にお前らはどうなっているんだと呆れられる。こちらもわざとではないため抗議の声を上げようとしたのだが、テジオラから今更何を言ってるんだとバッサリと切られた。


女神像のある最南端の岬に辿り着くと、以前と変わらない位置に女神像が存在している。唯一変わったといえば、ヴィンチェによって以前より幾分綺麗になり青い目をしていることぐらいだろうか。


「で、女神像のどこに仕掛けがあるのかしら?」


アレグロが女神像の周りくるくる回り、その後ろを真似するようにブルノワと少佐がついて歩く。ちょっと微笑ましい光景を横目にケイが女神像に触れて、どこかに仕掛けがあるはずだとくまなく見て探す。


「ケイ、これじゃないか?」


レイブンが女神像の首の後ろに小さな鍵穴を見つける。


身長の関係で上から見下ろす視点のレイブンが一目で見つけたのだが、ケイはやっぱり身長か?と若干テンションが下がり気味になっている。シンシアになにいじけてるのよ?と呆れられもしたが、こればかりは仕方がないので所持している太陽の鍵を鍵穴に差し込むと、使用出来るような状態がわかった。


そしてポケットからスマホを取り出し、まずはヴィンチェに繋ぎ、次にナット・ベルセ・ガイナールの順にグループ通話を設定した。


「おーい、聞こえるか?」

『こっちは聞こえるよ!』

『僕も聞こえます!』

『私も聞こえるけど、こっちは今吹雪だから正直寒いわ』

『私の方は大丈夫だ。君達のタイミングで合図をしてくれ』


ケイの声に四人が応答する。

設定をスピーカーにしてから確認をするが、フリージアにいるベルセ達は季節風の関係で吹雪いているため、なるべくなら早くしてほしいという声が返ってくる。

公爵令嬢が吹雪で凍死などとシャレにならないため、早速作業に入ることにした。



【星月夜に 空地の影 太陽の輪廻加わらん】



もしこのフィスィ・デアの伝承が正しければ、その通りに鍵穴を回せばいいのではと考える。


『ケイさん、こっちは回しました』

『私も回しました!』


まず星と月の鍵を持つナットとベルセが鍵を回す。

すると、青空からふと夜になったかのように真っ暗になった。


「はぁ?なんで暗くなってるんだ?」


スマホの時計を確認すると時刻は三時を少し回っているのだが、明らかにおかしいことは電話の向こうの四人にも同じ状況のようで各々違った反応を示す。

ガイナールに至っては、城内にいた兵士達が混乱し始め、右往左往している音がバックに聞こえる。


「と、とりあえずみんな落ち着け!ヴィンチェ!ガイナール!頼んだ!」


仲間達や電話の向こうにいる彼らを落ち着かせ、大地の鍵を持つヴィンチェと空の鍵を持つガイナールが同じように女神像に鍵穴を回す。


「ケイ、こっちは回したよ!」

「私の方もだ!」


次に満点の星空が急に現れた。

何かのアトラクションのような現象にただ眺めているだけだったが、シンシアがほらっと急かし、最後の鍵である太陽の鍵を女神像に差し込み回した。


満点の星空から次々と光が差し込み、まるで何かの舞台の演出のような光景にケイのみならず仲間や同行していたシルトとテジオラが混乱する。


「ケイさん!女神像を見てください!」


タレナの声に女神像の方を向くと、女神像の両眼から青い光の様なものが暗い地平線の向こうに通っていくところが見えた。


「ねぇ?これ大丈夫よね!?」

「知らねぇよ!俺もこれは予見してなかったって!」


シンシアの戸惑った声にケイ達があたふたするその横で女神像から発せられた光線は、地平線の彼方から縦に上に上がるように光が上る。そしてケイ達のほぼ真上を通過すると北に向かって光が伸びていく。青い光は同時に稲妻のように左右に広がり、光線を発する星空と交わり始めたかと思うと亀裂のようなものが空全体に広がっていく。


「一体どうなるんだ!?」

『パパ~こわ~い』『『『クゥ~~~ン』』』


スマホの向こうにいる四人も同じような光景を目にしていると思うが、あまりの現象に声を上げることしかできない。すると次の瞬間、亀裂のように空一面に広がりきるとガラガラと音を立てて空を覆っていた黒い部分が剥がれ落ち次々と空に消えて行った。



「・・・・・・で、あんだけ大がかりな仕掛け解除の演出があったのになんもないってどういうこと?」


空を覆っていた黒い部分が全て消失すると、見上げた空はことが起こる前と変わらない青い空と白い雲が見えた。


本当に一瞬の出来事にケイ達はただ呆然とすることしか出来なかったが、ベルセの方から予想外の言葉が聞こえて来た。



『ねぇ、北の空に“大陸”が浮かんでいるのだけど?』



それを聞いたケイ達も電話の向こうにいる三人も盛大に声を上げる。


どういうことなのかと尋ねると、フリージアの北にある女神像の地点から更に北東にある海の上に大陸らしきものが浮いているのだという。これについてはベルセに同行していたギルバートから領主案件になるから今すぐそれを調べることは難しいと返す。


「ということは、他の大陸も存在するってことになるな~」

『少なくともそうなると思う。となると、ケイ達も行ってみるかい?』

「俺達は元々それを想定していたし、予めお前にも屋敷の連中にも話はしておいただろ?」

『用意周到だね。こちらは引き続き大陸に異常がないか、調査隊を各地に派遣することにするよ』


ガイナールは国を預かる身なのでおいそれと行動に移せないのが残念だという。

ナットは一度ルフ島に戻り、今後のことをオブスに相談することにするといい、ヴィンチェも以前調べたカロナック大橋が気になるから再度調べてみると答えた。


各々やることが決まると通話を切り、ケイ達は待機していたバニューボに乗って港町レベノに戻って行った。



「みんな戻ったか!?」


レベノに戻ってくると、オブスがケイ達の帰還を待っていた。

話しはゼムから聞いていたようで、やはり先ほどの空の件で町中が大騒ぎになっているのだという。ケイ達は事の経緯を説明し、これから他の大陸がないか南に向かってみると答えると「そういうと思ったぜ!」とオブスの後方から聞き覚えのある声が聞こえた。


「ダットじゃねぇか!?」

「よっ!久しぶりだな!」


いくら何でもタイミングが良すぎるのだが、ダットから以前ヴィンチェから他の大陸があるとしたら行ってみたいかと聞かれ「男のロマンだろ?」と答えた時に、それなら近いうちにケイ達の助けになってくれないかい?と言われた。


気遣いを通り越して、もはやエスパーに近い元・日本人である。


でもそれが今日だとはヴィンチェも言っていないわけなのだが、ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアがケイ達がルフ島に向かっていると教えてくれたそうで、急いで船へ駆けつけたそうだ。


「俺達はいつでも出航できるぜ!」

「あぁ・・・なんか、全てにおいて用意周到過ぎるんだけど?」

「なぁに、気にすんなって!海は男のロマンだろ?」


何でも男のロマンと言えばいいわけじゃないと思いつつ、オブスとテジオラに先ほどの現象で他の大陸に行けるかもしれないと伝えると、先ほどまで同行していたテジオラがもはやなにがなんだかといった様子と諦めの表情で頭を振った。


「とりあえず行ってみるんだろ?」

「あぁ、まずは南の海の先に何があるか調べてくるよ」

「無理するなよ?」

「分かってるって!」


オブスから魔族のベリルと協力して周辺の海域に異常がないか調べることにすると伝えられ、海では何が起こるか分からないため注意してほしいと助言を貰う。



「野郎共!出航だ!!!!」

「「「へい!アニキ!!!!」」」



準備が整った魔道船に乗り込んだケイ達は、港でオブスとテジオラ、それにゼムをはじめとする獣人族の人達に見送られながら、海の南側を目指して出航したのである。



女神像の仕掛けを解いたケイ達は、大陸を覆う結界の様なものが崩壊したことを確認し、他の大陸があるかもしれないと魔道航海士のダットと合流し南に向かうことになります。

果たしてその先に何が待っているのでしょう?

次回の更新は新展開準備中のため、6/29はお休みさせてください。

では、7/1にお会いしましょう!


※近いうちにその他の登場人物を投稿する予定です。

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