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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
186/359

181、帰郷したジャック

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

今回は前回の続きでガレット村に帰郷したジャックの話です。

「サラさん、今日はありがとうございました。大変勉強になりました!」


ルトはノートを鞄に仕舞うと、丁寧にお辞儀をして礼を述べた。

サラも久々に趣味でもあるハーブのことを話すことができたのか、またハーブのことでわからない事があったら聞いてほしいと述べる。

ドランからも自身で育てている果樹園になっている果物をいくつか取って、ケイ達に手土産として手渡された。


「ドラン、こんなに貰っていいのか?」

「構わないよ。せっかく来てくれたんだし、この子達はウチの果物を美味しそうに食べていたからね~。私たちには子供がいないから妻も喜んでいたよ。もしできれば、また来てほしい」

「わかった。また来るよ。ブルノワと少佐も礼をするんだ」

『ありがとう!』『バウ!』『ワウ!』『ガウ!』


ブルノワと少佐はドランの果物をいたく気に入ったのか、終始満面の笑みで頬張っていた。ドランはまるで孫のように彼らを見つめ、自分たちに子供がいなかったのかまた来るという言葉にいつでも待っているからと返した。



ドランとサラ夫妻の元をあとにしたケイ達は、村の入り口でアダムとレイブンの姿を見つけた。


たしか今日は修理に出した防具の完成日だったはずなのだが、なぜここにいるのかと首を傾げる。それに武器を所持しているものの、何故か普段着のままだということに疑問を抱く。アルバラントからガレット村までは片道で三十分ほどの距離であるが、もちろんその道中でも弱いながらも魔物は生息している。二人の実力ならアルバラント周辺の魔物は雑作もないが、違和感しか感じない状況に思わず声をかける。


「二人ともどうしたんだよ?今日は防具の受取日だったんじゃねぇのか?」

「本当はそうだったんだけどちょっとギルドでもめ事があったみたいで、職人が帰郷したって聞いて様子を見にやって来たんだ」


アダムの話では、鍛冶ギルドで武器防具の修理を行っている若い職人が師匠の立場にある年配の職人に鬱憤が溜まったようで、意見の相違で喧嘩になった際に辞めてしまえと言われ、ギルドに脱退届を提出したのが事の発端らしい。


ここまでなら現実世界によくある話なのだが、どうやらアダムとレイブンをはじめ冒険者の武器防具の修繕の大半を担っていたようで、ギルドの職員も慌てふためいている状態なのだという。聞けば現職の歴は三年ほどで、一年目からお得意さんもいるという腕の持ち主らしい。


「その職人がこの村に帰ったってことか?」

「あぁ。たしかジャックという名の青年だと言ってたよ」

「ジャック?そういや、ドランのところに居た時に鞄を持った奴なら見かけたぞ?あ!たしかドランがジャックが戻って来たって言ってたな~。それにダンの息子だって聞いたぞ?」


レイブンからギルドの職人がダンの息子だと知ったケイは、アダム達から聞いた話が気になったため、村に戻りダンの家に向かうことにした。



「あれ?ケイさん達じゃないですか?」


ダンの家に向かうと、ちょうど表で畑作業をしていたケヴィンの姿を見つける。


ケヴィンは珍しいといった表情で持っていたクワを置き、何事かと尋ねてくる。

アダムから鍛冶ギルドで起こった事を説明されると、やっぱり何かあったんですねと困惑の表情で返ってくる。

彼の話では、少し前に兄のジャックが荷物を持って戻って来たのだという。

その時「ギルドを抜けてきた」と言ったのだそうで、両親のダンと彼の妻がどういうことかと聞こうとしたのだが、自分の部屋に籠もったきり出てこなくなったらしい。


「なんだ?ケイ達じゃないか!?」


家の中からダンと女性が姿を現した。

ダンはケイ達の姿を見るなりギルドであったことを聞き、心配になって様子を見に来たとアダムが述べると申し訳ないと思うと同時にギルドに対して顔を顰める。


隣にいる茶髪の三つ編みを横に結いだ女性はダンの妻でミモザという。


彼女は突然戻って来た息子のジャックの様子がおかしかったため、何かあったのではと察していたようだ。彼女は元々冒険者だったようで、鍛冶ギルドに所属していた知り合いから話を聞いているため、その仕事内容のハードさを理解している。


それに、突然家に戻って来た息子は顔を青くさせ、以前よりだいぶ痩せたようだとダンが述べる。


ジャックは元々農業の手伝いをしていたが、三年前に家族と共にアルバラントのバザーに行った際、たまたま他人が持っていた壊れかけの農具を直したことが鍛冶ギルドのマスターの目に止まり、直々にスカウトを受けたのだという。

当時ジャックは成人前ということで、ダンもミモザもギルド入りを反対していた。しかしギルドマスターから、彼の才能が他の人の助けになるかもという言葉に一度は考え、ジャックと話し合った末、正式に鍛冶ギルドに所属することを認めたそうだ。


彼がギルドに所属した当初は月に数回近状報告の手紙が届いていたが、それが一年、二年と経つにつれて回数が減り、年に数回の帰郷も会う度に顔色が悪く所属し始めた頃よりだいぶ窶れ始めたのだという。


職人の道は厳しいということはどの世界どの職種でも共通のようで、それ故に身体を壊す人も少なくないことはケイ達も知っている。


アダムとレイブンの話から、ジャックは師匠であるガラフという人物と揉めていることから指導の一環で行き違いがあったのではと考え、逆にいえば現代でいうパワハラにもなりかねないことから、辞めるというよりは一旦休職した方がいいのではと感じる。ただダジュールに休職などの福利厚生的なものがあるのかと思うと、その辺は疑問である。


「そういえばガラフという職人は、過去に弟子が何人も辞めていったと聞いたことがあります」


そう口にしたのはルトだった。


彼は園芸用品店などの買い物でいろんな店に足を運んでいることから、自然といろんな噂を聞いたと述べる。その中には鍛冶ギルドのガラフという男性の噂もあるようで、弟子であるジャックの何代前だったか十年ほど続いた弟子がいたようだが、意見の相違と弟子の体調不良で師弟関係を解消したらしい。その後は弟子が出たり入ったりと定着せず、長くて一年、短くて数日という入れ替わりが激しいことで、知っている人達から噂をされている。


完全にパワハラじゃないのか?というケイがふと思ったが、ダジュールにはその言葉が通用するかしないかはわからない。けれど、今までの話を聞く限り、職人気質がアダになっているのは一理あるかもしれない。

ダンにジャックの様子を聞いてみると、ケイ達が来る数時間前までは一緒に居たようで、何があったのかと聞いてみたものの口を開くことなくそのまま自分の部屋に閉じこもってしまったらしい。


ケイは、ダンとミモザに精神的にナーバス担っている上にもしかしたら鬱状態の一歩手前になっているのではと話す。二人は鬱?と首を傾げたため、ものすごく落ち込んでいる状態だと伝え、この状態が続くと精神的なダメージが深くなるかもしれないから今はそっとして置いた方がいいと助言した。


「ということは、ジャックさんはギルドを辞めるということなのでしょうか?」

「どうだろうな~。ギルドの職員から聞いたんだが、ジャックは一年ぐらいで固定客が出来ていたから腕自体の評判はよかったんじゃないかと思っている。俺もレイブンもよく利用しているし、他の冒険者に聞いても自分が気づかない些細な部分も気づき修正をしてくれるって結構評価は高いと思う。それに今彼が辞めたら、ギルドの質を疑われかねないんじゃないか?」


アダムの言う通り、ギルドとしても評判の良いジャックを辞めさせるとなると国から品質を疑われ、最悪ギルドとしての機能もしなくなる可能性が出てくる。

それにスカウトしたギルドマスターにも管理不届きで国から通告される可能性もあるし、職人であるガラフも最悪の場合クビを切られるかもしれない。


こればかりはギルドの対応次第なのだろう。


しかしケイはそこまで話を聞いてから、何か別の違和感を感じていた。

聞き取り方によってはガラフからのパワハラまがいの指導に耐えかねて脱退届を提出したという意味にもとれるが、そもそも少し他の人より腕がいいからとギルドマスターの指名で職人になれるものなのかと疑問を抱く。


職人になるにはどの職でも大抵十年ぐらいはかかると言われている。

職業によっては国家資格なども存在しており、試験と面接に加え実技などもあり、ものによっては実習経験が必須な場合もあることから一筋縄ではいかない。

ダジュールの専門の職人はどういう過程でなれるのかはわからないが、おおよそケイの知っている知識と大差ないだろうと考える。


そうなると、ジャックは職人になる前から才能やそれに対する伸びしろもギルドマスターは見抜いていたということなのかもしれない。



「俺があの時バザーに連れて行かなきゃ、こんなことにはならなかったのかもな」


不意にダンが頭を垂れてそう呟く。

父親として職人になった息子に複雑な気持ちを抱えるも応援をしていたが、その息子が体調を壊し始めているとなると、彼としても考えるところはあったのだろう。

妻のミモザも知人の話から職人は大変だと知ってはいたが、息子のためと送り出しそのことに罪悪感を抱いている節がみられる。


「父さん、母さん、兄さんなら大丈夫だよ。今まで頑張ってきたんだからちょっと疲れただけだって」


そういったのはジャックの弟であるケヴィンだった。

彼は兄のように手先が器用ではなく彼を羨ましく思っていたが、久々に見たジャックに両親が困惑の表情を表情を浮かべたものの、自分がしっかりしないとと二人を励ましている。


「・・・で、ギルドの方はどうしてるんだ?」

「職員からギルドマスターに報告をするまでは話しは聞いたが、そこからどうするかは俺達も知らないんだ」


アダムとレイブンは自発的にジャックの様子を見に来たものの、ギルドの方は来るのか来ないのかわからない状態だと知る。まぁ、何かしらのアクションはあるだろうと考えたが、それがその後すぐに来るとはケイ達ももちろんジャックの家族達も知るよしもなかった。


帰郷し精神的に落ち込んでいるジャックと彼を心配するダンの家族。

ケイは今までの話しから、実は別の理由があるのではと考えます。

それは一体?

次回の更新は6月8日(月)夜です。

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