表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
183/359

178、魔法とスキルの違い

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

今回のお話は、ロジーの発動不可の解明編です。

突如ケイの一言で、二人の模擬戦が行われることになった。


その前に、ロジーとマリクに練習用の木の剣を手渡す。

エルゼリス学園では練習用の武器を置いていないため、ケイの十八番である創造魔法で作製したものである。木の剣といっても一般的なもので、特別にスキルや能力があるというわけではない。今回はあくまでもロジーのためであり、余計なものがついていると変に作用してしまう可能性があるため、まっさらな状態で使って貰うことになる。


芝生の校庭にロジーとマリクが向かい合って位置に着く。


もちろん互いに同級生同士の剣での模擬戦は初だが、正直勝ち負けではなく、あくまでもロジーの火属性魔法が発動するかがカギである。もしケイの想定通りなら、これで彼の能力が問題なく使えるはずだと考える。



「二人共準備はいいか?・・・それでは、はじめ!!」


ケイの合図で、ロジーとマリクが同時に距離を詰め始めた。


先手を切ったのはマリクである。

彼はドワーフ特有の体格と力強さがありながらも、素早さもあり体格を利用してのリーチが長い。戦い方は剣というより大剣の動きに近いものがある。元より体格的な特徴が故に大まかな動作になりやすいが、その点はテクニックで補っているとみられる。


対してロジーは平均的な人の体格的だが、マリクと三十センチ近くもある身長さをもろともしない攻めの姿勢を見せている。一見むやみに突っ込んでいるように見えるが、マリクが苦手とする小回りできる機動力があり、懐に飛び込む戦法を得意としている。


先手のマリクは上段から剣を振り下ろし、ロジーが半歩下がってからそれを躱したあとに突きを繰り出し、マリクが右に躱すと同時に剣を弾き返す要領で手首を返し振り上げる。

それをまともに喰らえば持ち手もろとも吹っ飛ばされかねないが、ロジーはあえて姿勢を低くしたまま、素早く逆手持ちに変えると同時に再度剣を返しながらマリクの横腹目がけて振り切る。


「ぐっ!」


横からの攻撃をもろに受けたマリクが一瞬呻き体勢を崩しかけたが、種族的な特徴である丈夫さのおかげでそのまま立て直し、次に来る攻撃に備える。


その後も一進一退の攻防が繰り広げられているが、普通に剣術での模擬戦となっているため、二人がどのタイミングで繰り出すのかが気になる。

ケイの推測が正しければ、ロジーは自ずとカンを取り戻すのではと思っている。


「ブレイズランス!」


剣の攻防のスキをついてマリクが魔法を繰り出し、赤い魔方陣が瞬時に形成されると同時に炎を纏った槍が飛び出してくる。


詠唱短縮は魔法の威力が何割か劣るため一撃必殺のようにはできないが、魔法によってはある程度手数の多さで補えるものもある。

この火属性魔法は、詠唱をすれば魔力量に応じて炎の槍の数が多く発動する。

マリクの魔法は詠唱短縮のスキルの関係で本来の威力より少し劣るが、それでも五本同時に発動するところを考えると元は手数と威力の高い魔法だということが想像出来る。


ロジーはマリクの魔法を四本目までは躱すことができたが、五本目が左腕を掠め、一瞬表情を歪ませるが、利き手ではないにしろ右手のみで剣術を行わなければならない状況に追い詰められる。


「そろそろか」とケイが見つめる先に、右手のみで対応をするロジーがマリクの剣を翻すと共に強烈な一撃を発動させる。


回避するように身体を捻り回転すると同時に、ロジーの攻撃する剣から火を噴き上げ、咄嗟の判断で防御態勢を取ったマリクの剣と衝突をした。木が焼ける音と臭いがグランドに漂い、続けて二発目に火力のさらに上がった炎がマリクの剣の重心目がけて突き入れられる。


その直後に、突き入れた部分から木が砕け燃え上がる様子に慌てたマリクが手放した。突然のことに彼もクラスメイトもどういうことなのか呆然とその光景を見つめている。グランドには特殊防御魔法を施しているため燃え広がることもなく、砕けて燃えた剣だけが先ほどの光景を物語っている。


「それまで!」


ケイが終了の合図をし、ボロボロになった木の剣を拾い上げ観察し始めた。

やっぱりと一人納得するケイに、マリクおろかロジーもなぜ出せたのかわからないまま、呆然と自分の剣とマリクの剣の残骸を見つめていた。


「なんだ、できるじゃん?」

「えっ?あ・・・」


ロジーはイマイチ状況が把握出来ていないのか、何が起こったのかわからないまま視点を動かし考え込むと、それがダメなんだとケイが指摘をする。

考えたらダメというワードに更に困惑をするロジーにここまで言っているのにまだわからないのかといった表情のケイ。この状況に、さすがのマークも「説明をお願いしてもよろしいでしょうか?」と述べる。



「結論から言うと、ロジーは魔法ではなく【スキル】を発動させたんだ」



魔法ではなくスキルという言葉に全員が疑問を浮かべ、首を傾げる。

ケイは全員の表情を確認した後に続けてこう述べる。


「そもそも魔法とスキルの違いってなんだ?」

「魔法は体内にある魔力と外部にある魔素が属性共鳴し、対応する属性を発動することができること。スキルは体内に秘められた潜在的な能力が開花することにより発動する条件が整うこと、と習いました」


答えたマリクにケイがそう解釈するだろうなと思い、この学校ではそう習っているようだがと前置きをしてからとある事実を打ち明けた。


「たしかにそう習ったり解釈したことが一般的に認識されている。そもそも魔力とスキルは【元は同じもの】なんだ。それがなぜかわかるか?」


生徒達はハッと驚き互いに顔を見合わせる。

マークは、魔力とスキルは構成的に同じというケイの仮説に懐疑的な表情を見せたが、すぐさま何かに気づいた様でもしかしてという表情へと変わる。


「やっぱりマークはわかったようだな。実はスキルも部分的に魔力を使用しているんだ。どういうことかというと、さっきマリクが言ったように【魔法】は体内にある自身の魔力と素質のある属性が外部の魔素と共鳴して発動し、【スキル】は潜在的な能力が開花することで発動する。しかしその二つは違うようで、発動する条件はほぼ同じなんだ」


【魔力】とスキルを発動するための【潜在的な能力】というものは、同じ分類として括ることができる。どういうことなのかというと、スキルを発動させるには魔力を媒体にして潜在的な能力を共鳴させ、体現的に表しているということになる。

要は潜在能力の具現化である。


そもそも、魔力というものはダジュールに住むものなら誰だって持っている。


人種や生まれ持った素質に差はあれど、本来なら全員が魔法を扱えることができるはずなのだ。先ほど属性の素質がなければ魔法は発動しないと言ったが、厳密にいえば【本来ならば全員が全属性の素質を持ち合わせている】ということである。

しかし先ほど述べたように、個人差によって魔法を発動するための属性の素質に強弱があるため、生まれつき魔法の素質を持った人が簡単に使いこなせるのは特別ではなく、条件がもともと揃っているというわけである。


その証拠を裏付けるものは【スキル】である。

スキルは潜在的な能力を用いて使用するとあるが、発動させるための条件として自身の魔力を媒体にしている。


そもそも属性の素質を持ち合わせていないと考えると、昨日のボガードの件と辻褄が合わなくなる。彼は剣術を中心に戦闘を行うが、本来魔法を使うことがない職業なはずなのだが、スキルに【風属性魔法軽減】がある。

これは風属性の魔法に対してダメージの一割をカットするスキルなのだが、スキルが与えられた魔法の威力をカットするという説明に疑問を抱く。

もし魔力とスキルが別であるなら、そんなスキルは発動しないはずである。


ボガード曰く、最近冒険者ギルドの新人研修の手伝いでエバ山に向かったことがあり、その時に風属性を持った魔物との戦闘が多かったため、自然に身についたのではといっていた。


スキルというものは、魔力を介して自身の能力を変化または状況に応じて状況に適切なものを発動させる、日本で言う【火事場の馬鹿力】というものに近い。

魔法も全素質を持ち合わせながらも発動できない人がいるのには、属性の素質に対してベクトルを合わせていない状態であると考えられる。


要は、テレビのチャンネルのものだと考えてほしい。

テレビを見たい時はリモコンでチャンネルを変え、自分が見たい番組にチャンネルを合わせて見ればいい。


魔法も元々素質を合わせやすい人と会わせにくい人がいるように、訓練次第では自分の発動できない属性も発動できるのではないかと考える。


「でもケイ先生、ロジーの場合はなんで発動できなかったんですか?」

「いい事を聞いてくれた!こればかりは俺の推測なんだが・・・」


ケイの推測では、ロジー自身が属性の素質のベクトルを合わせていない状態だったが、家族が火属性魔法を扱い剣術も兼ねた訓練を行う中で自然に潜在的な能力として開花しスキルとして発動できた説と、そもそもロジーの家族が火属性魔法をスキルとして発動していた可能性があり、それにより自然にスキルとして発動した説がある。

これに関しては初めから見ているわけではないためなんとも言えないが、ロジーが学園に入ってから発動出来なくなった理由として、魔法に対しての知識を吸収するにつれて自身のスキルである火属性魔法がうまく働かなくなったのではと考える。

しかしスキルも魔法も根っこは同じで発動する過程が違うだけで、これが今後魔法として発動できるのかスキルとして更に進化するかは本人次第ということになる。



「先生!それなら自分の持っている属性魔法以外も訓練次第で扱えるようになるという解釈でいいのでしょうか?」


一人の生徒が手を上げて発言する。

たしかにその説明であるなら、自分が発動できる属性魔法以外の属性も発動することができるかもしれない。正直魔法の仕組みや基礎的なことに関しては知識がなく何も言えないため、マークが教科書の何頁に記載されている説明を自分なりに読み解釈を深めれば自ずと見えてくるでしょうという悟りの精神で答える。


魔法専門職も職人気質かよと思いつつ、マークのアシストに感謝する。


ケイは補足として、これらはあくまでも基本的な属性だけかもしれないと付け加えた。というのも、光や闇属性の上位である聖属性や暗黒属性はそもそも一般的にお目にかかることが滅多にないため、この説明に当てはまるかは不明である。


しかしながら生徒達はケイの説明に自分なりに解釈をし納得した部分とさらに疑問が出てきたのか、実際に確かめて見ようと各々それらを検証することにした。



二日目の授業も滞りなく終わり、終了のチャイムが鳴った。


「明日の三日目は二時間授業で、課外活動を行うことになります!場所は『挑戦者の試練』になりますので、各自準備をして置いてください!それでは次の授業に遅れることのないようにお願いします!」


マークの解散の合図と共に生徒達が校舎へ戻っていく。


ケイは課外活動の許可がよく下りたなと述べると、マークはケイさんなら大丈夫かという学園長の判断でしたと返される。どうやらボレアスは今後課外活動を今以上に行おうと考えているらしく、目下構成中とのこと。


ケイの方は前日にアダムとレイブンに、もしかしたら頼み事をするかもしれないと相談をしていた。しかし生憎アダムの方はギルドの試験官を頼まれていたため断られたが、レイブンが時間が空いていると了承してくれた。



明日の課外活動はどうなるか分からないが、教えたことにより生徒達の行動が今よりも落ち着いたものになるといいなと密かに願望を抱いていたケイなのだった。

ロジーの火属性魔法はスキルでした。

魔法とスキルは発動の過程が違うだけで元は一緒という事実に生徒達は新たな可能性を見いだします。

そして次回は課外活動編になります。


次回の更新は5月29日(金)夜です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ