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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
168/359

163、人魚族

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

今回のお話は、未知なる生物との出会いと帰還の話になります。

ケイ達と対峙した全身青色の人型生物は、小首を傾げこちらの動向を伺っている。


特に黒い双眼はケイを捉え、挙動を確認するように凝視している。

その後方で、もう一体同じように真っ青の人型生物が現れる。こちらは男性型のようで女性型より体格も良く幾分背が高い。その二体は黙ったままケイ達を見据えている。ロベルが腰に下げている剣に手をかけようとしていたので、ケイがそれを制止させる。横目で魔物かもしれないんだぞ!?という表情が見えたが、ケイはむやみに敵対はしたくないから任せてくれと合図を送る。


「あー、お前達は誰だ?」


ケイの言葉に二体は顔を合わせたが、すぐにこちらを向く。


音に反応することから聞こえていない感じは見られず、言葉が伝わらないのかと考える。ケイは自分たちはルナを探しに来た冒険者で水中では生活できないことを伝えると、女性型のそれが口を開いた。


『オマエ ラ シャムルス人カ?』


女性の声に合わさるように機械的な音が混じって聞こえる。

海の中にいるせいなのかそのように聞こえるだけかもしれないが、言葉の感じから話すことがあまり得意ではないのだろう。ケイが違うと否定すると、抑揚のない言葉でこう告げた。


『クニ ニ カエリタイ カエシテホシイ』

「国?それはどこだ?」


女性型が海の奥を示すがルフ島の方向を示しているとなると、もしかしたらこの大陸の外を示すのではと考える。


後方にいるロベルの方を向くと、困惑した表情でケイの顔を見返した。

どうやら彼の耳には人型生物の言葉が理解できない様子で、言葉のわかるケイに一任すると返す。ケイもケイで初めて見る生物に困惑の色を隠せないでいた。


「国に帰りたいなら帰ればいいんじゃないか?」

『デキナイ』

「なぜ?」

『カコマレテイル』


その言葉に、もしや以前ダット達が体験した霧と関係があるのだろうかと考える。


二体の人型生物はゆっくりとした足取りでこちらに向かってくると、ロベルは気絶しているルナを庇うような立ち位置になる。ケイはこちらを凝視している人型生物に、再度こう尋ねた。


「俺はケイでこっちがロベル。で、気絶しているのはルナだ。お前達は誰だ?」

『ヴェルティヴェエラ』

『ノヴェルヴェディア』


ケイの言葉に二体が答える。

女性型がヴェルティヴェエラで、機械的な音が混じっている低い声の男性型がノヴェルヴェディアと名乗った。二体と呼べるかどうかもわからないが、少なくともケイの言葉が通じているので何かしらの生物であることは間違いない。


ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアは、同時にケイの顔を覗き見るように顔を近づける。テレビの再現映像に出てくる宇宙人のような目をしたモノが四つある段階で、正直かなり恐い。ましてや全身青色の生命体など見たことがないため、ケイ自身も心なしか顔を引きつらせる。


二体は性別の差しか変わらないが、鑑定をしてみると【人魚族】という種族ということがわかった。海にいる生命体ということなのだろうか?言葉自体もロベルが聞き取ることができなかったのだから、おそらく古い言語の可能性はある。


「お、おい。大丈夫なのか?」


一連の流れを見ていたロベルが口を開く。

彼からみれば、未知の生命体にケイが絡まれているとしか見えない。大丈夫だと合図を送られたところを見ると、どうやら言葉がわかるのはケイしかいないと判断しロベルが静観する。


「ところで【人魚族】って聞いたことあるか?」

「人魚族?」

「こいつらが言ってんだよ」


ケイが二体を示し、ロベルがおとぎ話に出てくるあれか?と問い返す。


ロベルはケイと二体を見比べてから盛大にため息をついた。

ケイの表情に嘘は見られないことと、自分にはわからない言語で会話をしていることから信じざるを得ないようだ。


二体の人魚族は、自分達は長い間この海域に漂っており、自国に戻ろうと奮闘したが、ある一定の海域以降にはなぜか行けなかったことを伝えた。助けを求めに人里がある場所にも行ったことがあるが、見たこともないモノばかりで恐怖を覚え、海底に引きこもっていたそうだ。その時に海に生息しているスライムと仲良くなり、互いに手を取り合い暮らしていたそうだ。

スライムは繁殖を目的にある一定の期間のみ大量に分裂を繰り返していたようで、彼らの話からそれが今回の騒動に繋がったのではないかとケイは考える。


それと彼らの国はゴルゴナというところらしい。

ロベルに聞いてみたが、聞いたことがないと首を横に振る。


「じゃあ、ダナンの海域で見たこともない生物が目撃されている噂はこいつらってことか?」

「噂?」

「最近になって、ダナンから南西の海域の底に沈没船が発見されたと聞いたんだ。その際に見たこともない生物が泳いでいたって噂が相次いでいたようだ」


人魚族の二体に聞いてみると、どうやら普段は沈没した船周辺を拠点にしているようで、表情は変わらないがまるで子供のような不安な雰囲気を醸し出している。

正直、この見た目で人前に出れば卒倒する人が出てくる確率は高い。

しかし裏を返せば、彼らの証言により大陸外にも別の大陸が存在する大きな証言の一つであることがわかると同時に問題も出てくる。


国に返すまでの間、彼らをどうするかである。

このまま彼らをここに置き、解決の見込みが出ればを連れて行くことも考えなくてはならない。


ここで、ロベルが彼らについてはギルドや国に報告すべきことではないかとケイに助言をした。彼曰く、国特にアルバラントは未知なる生物の保護に力を入れているし、何かあれば手を貸してくれるはずだという。が、言葉の壁がぶつかることになるためその部分はどうするのかと問い返すと、そっかと悩みながら顎髭を触り考え直す。


しかし何故ケイだけが人魚族の言葉を理解できるのか?


その辺についてはある時期以降から古代語が読める時点で、アスル・カディーム人の腕輪の能力ではないかと推測し、最初にケイが腕輪を手に入れたことで能力が譲渡されたのだろうと推測をする。現に仲間達は理解できないが、アレグロとタレナは元は古代人であるからして記憶が戻れば、その辺は理解できるようになるかもしれないと考える。


とにかくルナを見つけたことで、ケイ達は一度海上に上がろうとした。


「・・・んっ?」

『ワレワレヲ オイテイクノカ?』

「置いて行くもなにも、一度海に上がって仲間達と合流しなきゃいけないんだよ。あ!それと、なんでルナを引き込んだんだ?」

『ワレワレ サミシイ ハナシ キク サガシテイル』


ヴェルティヴェエラがケイの服の裾を掴み答え返す。

どうやら長い間国にも帰れないことにより寂しさも出てきているようで、できるなら協力者がほしいと述べた。自国に帰れるための協力者か・・・とケイは悩んだ。


言葉の問題を一旦置き、人魚族は海底に住む種族だろうと声をかける。


『ワレワレ ウミアレバ リク イキル』


ノヴェルヴェディアの言葉から水陸両用種族だということが語られる。

どうやら本来は陸に住んでいたが、他の人種の影響により海底で過ごし始めていたようで、人の耳の後ろにエラのようなモノが見える。

水中に居る時にはエラを開き、陸に上がる時には鼻や耳の穴が開くというだいぶ高度な身体の構造をしている。しかも、ヒレも今のように状況に応じて人の足に変化することもできるらしい。さすがは異世界である。


「・・・ていうか、本当にそいつ等を連れてく気か?」

「大丈夫だって問題ないって!」


ケイがヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアを連れて行くと話すと、ロベルが困惑した表情をする。未知なる生物に多くすることもないケイの姿を見れば誰だってその表情をするだろう。こちらから危害を加えなければ大丈夫だと伝えたが、言われたロベルは、心なしか半信半疑気味の態度のままだった。


「ま、まぁ、ケイが言うなら大丈夫・・・だよな?」

「問題ないって!取り合えず一旦戻ろう」


ロベルがルナを背負い、ケイは念のために気絶している彼女に水中呼吸の魔法をかける。ヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアが陸に上がるために先導するそうで、二人は素直にそれに従った。



ケイ達が海上に顔を出した時には、日がだいぶ傾いていた。


体感的にはそれほど経っていないとばかり思っていたのだが、船員達が海に飛び込みケイ達を捜索している姿が見える。


「ケイ!ロベル!無事か!!?」


船の看板にアダム達の姿が見えたので手を振ると、二人の船員が救命ボートに乗った状態でこちらにやって来た。


「「ひぃっ!?」」


船員達は人魚族の二体を見るや、幽霊にでも遭遇したかのような引きつった悲鳴を上げる。ケイが見た目はこうだが問題ないと伝えると、彼らを気にしながらもケイ達を引き上げた。



「ケイ?どういうことか説明して頂戴!!」



船に戻ると船員達から心配の声と驚きと小さな悲鳴が入り交じり、ケイ達を異様な雰囲気が出迎えた。アダム達も人魚族の二体に目を見開き、シンシアがケイの胸ぐらを掴んで説明をしろと迫ってくる。


「シンシア落ち着くんだ。と、とにかくこれはどういうことだ?」

「ルナを助けたのはいいんだけど、こいつらもついて来ちまってさ~」

「つ、ついて来たって・・・」


レイブンがシンシアを窘め、アダムが犬や猫じゃないんだからと二体を見やる。


人間達から奇異な目で見られているヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアは、この状況を理解していないのか互いに顔を見合わせ小首を傾げる。パニックになるのは目に見えていたが、ケイ自身も彼らをないがしろにすることに一応は罪悪感もあるわけで、責任は自分がとるからと話し合いに応じてほしいとみんなを説得して回った。



ルナを他の船員に任せて、ケイ達とロベルは船内にある会議室へと足を運んだ。


一度に二十人が腰をかけられるほどの木製の長椅子にダットを一番前にし、それぞれが腰をかける。人型フォルム(とあえて呼ぶ)のヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアはケイの隣に腰をかけさせ、ケイの膝と足元にいるブルノワと少佐を興味深そうに見つめている。


「話は大体わかった・・・というか、こいつらはどうするんだ?犬や猫のように飼うわけにはいかないんだぞ?」


事情を聞いたアダムがため息をついて頭を抱えるが、ケイも好きでこんな状態になったわけではないので返答に困る。ロベルも言葉はわからないが、第三者目線でケイとの会話の様子を見ていたが不審な点はみられなかったと述べる。

短時間でだいぶケイに毒されているにも見えるが、ダットやアダム達も初めての経験になんと返せばいいのかと互いに顔を見合わせてばかりだった。


人魚族のヴェルティヴェエラとノヴェルヴェディアに出会ったケイ達は、彼らの存在から大陸外にも別の大陸があると確証に近づきます。いろいろと思うところはあるが、まずは無事に戻ったことで今後どうするかを話し合うことになります。


次回の更新は、4月24日(金)夜です。


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