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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
167/359

162、遭遇

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回のお話は、スライムを回収する最中にあることが起こります。


「このバカ!」

『ギャン!』


海に落ちた雷の影響で水面に浮かんだスライムの群を前に、ケイはヴァールの頭に盛大な拳骨を落とした。突然走り出したかと思えばこの有り様である。一歩間違えれば地獄絵図になりかねなかったこの状況を、よくロベル達やダットが判断して動いてくれたと安堵する。


その一方で、ケイはヴァールに状況の把握と自分の能力の影響を懇々と言って聞かせた。従魔の行動は結果がどうであれ、責任は契約者になる。後々それがどのように反映されるのかを理解した上での行動ならまだしも、思いつきで事を起こしたとなると話は別である。ケイはヴァールに周りをよく見ていないと指摘し、ショーンとサウガにも個々に考えを持っているのだからヴァールと話し合いを持つべきだと話す。少佐は反省の色を見せ、自身もヴァールの雷属性をすっかり忘れていたためにこれ以上の言及は避けた。


『パパ、こわ~い』


あまりのケイの剣幕にブルノワが泣き出し、慌てたレイブンが彼女を抱き上げ、タレナがあやしている。ロベル達とダットからは、結果的にスライムの行動が収まったのでこれ以上は止めてやれと制止される。


「容赦がねぇな~」

「早い段階で教育しないと後が大変だからな」


ふんっと鼻息を荒げ、仁王立ちするケイの姿を見てロベルは苦笑いを浮かべた。


「でも、これどうするの?」


シンシアが海一面に浮かぶスライムの群を見て、どう回収するのかと聞いて来た。


行動を停止しているスライムの群は海面にプカプカと浮いている。

海に生息しているスライムは全体的にを水色を帯びた透明で、外敵から身を守るために海の色と同化している節がある。

太陽が昇っている時間帯なら見分けがつくが、日が暮れてからの回収は難しいと判断でき、なんとか日没までにスライムの回収を行わなければならない。


「沖に出ているスライムは、船で回収するしかねぇな。だけどスライムは船底にくっつく習性もあるから、よほど舵取りに自身のある奴しかやらねぇ」

「そんなに難しいのか?」

「俺の船は影響を受けないが、他の船はそうはいかねぇ。ほとんどは水に耐久がある木材を使っているがそれも限度がある。この時期に海にいるスライムは、海面に上がってくる習性があって、それが船についちまうと速度が遅くなるどころかその重さで最悪沈没しちまうんだ」


普通なら沖にいるスライムは、船同士を網で括り岸に向かって回収する方法をとっている。その際に船底に水に耐久がある木材を使用し、航海の際にスライムがくっつくことがないようにその上から特殊な塗料でコーティングをしているが、それは例年の話であり、今年はは想定以上の数がいるため船で沖まで行くことが難しい。


それとダットが使用している魔道船は、ケイが創造魔法で作製したものである。


船全体に魔物を寄せ付けない魔力を含んでおり、魔物からの攻撃も無効化する特殊な防御壁を常に展開し、尚且つ魔物の集団に対しても迎撃できるほどの能力が備わっている、ある意味で戦艦といってもいい。まぁ、使用している人間が元・漁師という異色の人間が行っている関係で半ば豪華客船のような役割になっているがその辺のところは気にしない。


「沖にいったやつはこの状況を見る限り他の船じゃ無理だな。それなら、俺の船で回収するしかねぇ」

「それはいい案ね! ケイ様が創った船だもの、間違いないわ!」


前回もそうだったが、ダットとアレグロが互いに握手を交わし笑みを浮かべる。

あまり詮索はしたくないが大体想像がつく。その一方で、ロベルとルナは戦艦能力を秘めた豪華客船を前に唖然としている。そういえば説明していなかったっけと思いつつ、簡単に状況を説明したところ、ロベルから「本当にどこに向かっているんだ?」と返される。失礼な奴だ。



「よぉぉぉし!ヤロウ共!出航だぁぁぁ!!!!」



ダットの号令で船が港を出発した。

目的はもちろん沖まで広がってしまったスライムを回収で、スライムの影響を受けない魔導船が役に立つと判断し、船が出航したのだ。


現在、魔導船の船員はダットを含めて三十名ほど。

そのほとんどが、魔物の影響で職を失い落ちぶれていた者達である。

ダットは各地を訪れ、職を失い自暴自棄になっていた者達を受け入れる一方で、自分はケイという冒険者に助けられ、人生を生きることができたと風潮していた。


「・・・で、なんで俺達まで船に乗ってんだ?」


ケイ達は、なぜかあれよあれよという間に船に乗せられ、船員により甲斐甲斐しく世話をされていた。しかも船員達はケイの事を「親分」と呼んでいる。なぜかとダットに尋ねたところ、自分を救ってくれた恩人だと説明したところ、ぜひ生まれ変わった自分たちの働きを見てほしいと半ば強引に乗船させたのだ。


しかも関係のないロベルとルナも乗船させられている。

二人は居心地が悪いのか困惑した表情を浮かべているが、そんなことはお構いなしに船員の一人がドリンクを各自に配る。


「お嬢ちゃんたちはこっちをどうぞ」


その船員はみんなとは別に、ブルノワには木製のコップで、少佐は三頭分の木製の犬用の水入れを差し出す。中にはリンゴを絞り出したのか果実が浮かんだジュースが入っており、鑑定したところ果汁100%のリンゴジュースと表示される。

ブルノワと少佐が同時にケイの方を見上げ、ダットはウチの料理人からだと声が上がる。ケイはブルノワと少佐にその料理人にお礼を言わせ、ゆっくり飲むようにと声をかけた。



船は1kmの地点で速度を落とした。


スライムの群の数が少なくなってきているため、船員達は細かい編み目の網を取り出すと、設置するために各自配置につく。


「ダット、それって漁で使う漁網か?」

「あぁ。これはスライム捕獲用に使われる網で、特殊加工されたものだ」


ダット達が持っている漁網は、全長10mの漁業用の網である。

編み目が細かい部分はスライムが隙間から抜け出さないようにするためで、網と隙間に滑り止めのような塗料が塗り込まれている。それを船艦の左右両端に括り付けてから海に投げ入れる。あとは地球で行っている漁網と方法は同じで、希に魚も混じってくるそうだがその辺は気にしないそうだ。


「でも、これだけのスライムを回収するのは大変そうね」

「海域全体と言ってもいいのでしょう。日没までに終わればの話ですが」


ダット達が準備をしている傍ら、シンシアとタレナが口々に開く。

確かにダジュール全ての海域ではないが、広範囲にスライムが出現しているとなればやれることは限られる。ましてや全てを回収するなどどれだけの時間がかかるのだろう。


ダットは日没までに全てを回収するのは難しいけど、できる限りやってはみると答える。それを聞いたケイ達は、一応は何かあればこちらも手伝うという意思表示を示した。



「・・・あら?」


ケイ達がダットと会話をしているなか、ルナは海面に浮かぶスライムの群に何かが動いているところ見かけた。それは一瞬だったが、スライムの動きとは別なような感じがした。手すりに手をつき、目を凝らしながら海面に注視していたが再度それが確認されることはなかった。


「ルナ、どうした?」

「ロベルさん、さっき海面に何かが居た気がしたのですが・・・」


ルナの様子にロベルが気づき声をかける。

海面の方に動くモノを見たと伝えると、魚ではないかと返ってくる。

彼女自身もしっかりとは見ていなかったからそうかもしれないと納得をして、飲み終えたコップを先ほどの船員に返そうとした時、後方から何かが彼女の腕を掴み、異常な力で引きずり込まれるように海面に落ちた。



「ルナ!!!!」



海の方から何かが落ちる音と水しぶきが上がった。

その直後にロベルが手渡されたコップを投げ捨て、手すりを足台にしそのまま海へと飛び込んだ。


ケイ達は慌てて船の手すりに身を乗り出す形で海面を見る。


「くそっ!ルナが何かに引きずり込まれた!」

「なんだって!?」


飛び込んだロベルが浮上し、ケイ達に伝える。

一瞬だったが、何かがルナの手を掴み海に引き入れたところを見たと声を上げる。

それを聞いたダットは船員に漁網の中止と浮き輪を持ってくるように指示を出し、ロベルに船に上がるように伝える。


「あいつ泳げないんだ!とにかく俺はもう一度潜ってみる!」


そう言い残すと、ロベルはルナを助けるために潜っていく。


ケイはブルノワと少佐を仲間に任せ、自分も海に潜ると伝え、上着のジャケットを脱ぎ捨てると助走をつけて海の方に走り出し、手すりに足をかけるとタイミング良く海面に飛び込んだ。自身も泳ぎに自信はないが、想像魔法で潜水と水中呼吸のスキルを創造し、海に引き込まれたルナの安否を気遣う。


ほどなくして、先ほど潜っていったロベルの姿が見えた。


ケイがロベルの肩を叩き、大丈夫かと意思確認を行う。

ロベルは自分は大丈夫だがルナが危ないと身振り手振りで伝えた。ケイは水中呼吸があるから代わりに自分が行くと伝えると、メンバーの危機は自分にもあると手振りで返ってくる。彼自身も潜水や水中呼吸スキルを所持しており、長時間は難しいがある程度の深さまでならいけるらしい。


二人は互いに意思表示を示してから、ルナを探しに海底に潜り進んで行った。



(なんだこれ?)


暫く潜水を続けていると、海の底から気泡が上がってくるのが見えた。


最初は小さな気泡だったが、海底に潜るにつれて大きく数多く上がってくる。

ロベルにこれはと手振りで示すと彼もわからないと首を振り、更に海底深くまで進んでいくと、ある地点から大きな空気の塊のようなものが見える。


ドーム型に形成されている空気の泡は、海底の景色とは似つかわしい程の異様さを放っている。ケイが空気の泡に手を突っ込むと、海面に出てきたかのような重力と感触がし、さらにケイが首を突っ込むと自力で息が吸うことができた。

不審に思いながらも二人はその空気の中に入っていくと、まるでそこだけが空気に満たされた状態になっている。海底にいるのに海上と同じような感覚がある。


「あぁ。これか~」


ロベルがある一点を見つめると、合点がいったようで納得の声を上げる。


ケイがそちらに注目すると、1.5mほどのアコヤガイのようなものが十個ほど並んでおり、開いた口の真ん中には、成人男性の握り拳ほどの純白な真珠が見え、そこから空気が放出されている。


「あれは?」

「【空気貝】だ。水中の魔素を吸収し、空気に転換する海底の生物で、人を襲うことはないがあれでも魔物の類いに入る」


ただのでかいアコヤガイにしかみえないのだが、ロベル曰く、通常の空気貝は50cmほどしかないため、ここまで大きなものは彼自身もみたことがないらしい。


その近くには、うつぶせで倒れているルナの姿があった。


「ルナ!」


ロベルが近寄りルナを抱き起こすと、気を失っているのか身じろぎをしたまま眠っている様子を見せる。ケイの鑑定でも気絶の状態で、これといって異常も見当たらず、それをロベルに伝えると安堵の表情に変わる。


「とにかく一旦地上に戻ろうぜ」


そう口にした直後、後方に何かの気配を感じて振り返る。


しかしそこには誰もおらず、ケイは首を傾げる。

ロベルも何かの気配を感じたようで、周りに目配せをしながら注意をする。


「なにかいるぞ・・・」


ロベルの言葉通り、ドーム状の空気の塊の外で何かが旋回している。


ケイがマップを起動すると、周囲に二つの反応が表示される。

一瞬サメか何かの類いかと思われたが、動きが異様に速くすぐに襲ってくることがないことから海に生息している他の魔物ではないと直感で悟る。


「おい!誰か居るのか!?」


ケイがその生物に声をかけると、旋回していた動きがピタリと止んだ。

空気の塊の外に二つの影が見える。どうやらこちらの様子を伺っているような感じがする。ケイが再度それらに声をかけると、急に海面の方から青い何かが二本突き出た。よく見ると真っ青だが人の腕のようにも見える。次に魚のヒレのような真っ青のモノが突き出て来た。


さすがのケイとロベルもそれに驚き、一瞬たじろぐ。


「・・・え゛っ?どういうこと??」

「腕にヒレ?」

「海にこんな魔物っているのか?」

「いや、俺も見たことがない」


ケイとロベルが互いに顔を見合わせ確認をしていると、ヒレの部分が人の足に変わる。そしてゆっくりと地に足をつけるように空気の中に入っていき、こちらに上体を起こすようにそれは姿を現した。


「なっ!?」


ケイもロベルも一瞬、声を失う。


こちらに現れたソレは、肌も髪も全てが青く、ほぼ裸体に近いが体型から見て女性らしく、端正な顔立ちについている二つの双眼は白目もなく真っ黒だった。


無事にルナを見つけたケイとロベルは、全身真っ青人型生物に遭遇しました。

みたこともない生物にどう対処するのでしょう?


次回の更新は4月22日(水)です。

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