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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
164/359

159、アレグロ倒れる

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回のお話ですが、アレグロの身に異変が!?

「アレグロさん!!」


ケイが昼食のために二階から下りようとした時、パーシアの大声と何かが割れる音が調理場から聞こえて来た。普段は大声を出さない彼女だが、切羽詰まったような叫び声を上げていたことに驚いたケイは、慌てて調理場にいるへと向かった。


「パーシア!どうした!?」


ケイが駆けつけると床にはガラスのコップの破片が散乱しており、床に倒れているアレグロと肩を揺さぶり慌てふためくパーシアの姿があった。状況を見て察したケイは、パーシアに割れたコップの破片に触れないように注意を即し、アレグロの容態を確認した。


「どうかされましたか!?」

「ローゼン!悪いが医者を呼んできてくれ!」

「は、はい!承知しました!」


パーシアの声にローゼンが飛んで来たので、彼に医者を呼んできてほしいと頼む。


入れ違いでアダムとタレナが入って来たので、アレグロが倒れたことを簡潔に説明し自室に運ぶ手伝いを願うと、アダムが彼女を慎重に担ぎ、タレナが付き添うように運ばせた。



「外傷もありませんし、内部の損傷も見当たりませんでした」


その十分後、ローゼンが医師をしている男性を連れて戻って来た。

五十代半ばの白髪の白衣を着た男性が診察をした結果、外傷や内部の疾患などは特別見当たらなかったという。


「原因はなんなんだ?」

「状況と症状から考えますと、疲労や貧血の類いかと」

「パーシア、アレグロは急に倒れたんだよな?」

「は、はい。朝から顔色が悪かったようで、水がほしいと言われて手渡そうとした時に倒れてしまいました」


パーシアは目の前でアレグロが倒れたことに動揺しているのか、顔を青くさせながら頷いた。その側にはシンシアが寄り添っている。まぁ、誰だって目の前で人が倒れていたら動揺はする。


「倒れた拍子に頭を打っている可能性もあったのですが、それも見られませんでしたから数日間は安静にしてください」


男性医師から貧血改善の薬を処方され、安静にしておくようにと指示を受ける。


聞けば、医師は王宮などにも出入りをしているトップの医師の内の一人だということで、普段から常時商業地区で診療所を営んでいるという。この日彼は、週に二回アルバラントの街中を巡回しているそうで、たまたま住宅地区から戻ろうとしていたところにローゼンに呼び止められたそうだ。


だからローゼンが早く戻って来たのかとケイは納得をする。


医師から薬を受け取りケイ達が礼をすると、ローゼンが医師を見送るために一緒にアレグロの部屋を退出した。


「姉さん・・・」


彼らが退出した後、ベッドに横たわるアレグロを見つめるタレナが口ずさむ。

その様子を見たケイ達は、しばらくそっとしておこうとタレナを残してアレグロの部屋を出た。



「じゃあ、アレグロは以前から体調が悪かったってこと?」

「パーシアがいうには顔色が悪かったし、何かの病気じゃないかと不安がってた」

「あれを見たらそう思うでしょうね。でも気づかなかったわ」


応接室にて今後のパーティの対応を話し合うことになった一同に、ケイは先日パーシアから聞いた話をした。やはり他のみんなも気づかなかったようで、特に背中にあるタトゥーのことは誰一人知らなかった。パーシアが見たタトゥーを描いたノートを見せたが、その場にいる全員が首を振る。少なくとも現代で伝えられているものではなのかもしれないと考える。


「ケイ、鑑定でアレグロを見たか?」

「一応な。状態は正常だったが・・・」

「どうした?」


アダムがケイの様子に疑問を投げかける。

あの時、鑑定でアレグロの容態を見られるのはケイだけで、その表情に難色を示していることが理解できる。続けて問いかけるとどう考えていいかと迷っている表情をみせる。


「状態の項目は正常だったが、それとは別に【タァークル率】が表示されてた」

「タァークル率?」

「やっぱり知らないか・・・それが10%と表示されてた」

「少なくとも俺は知らないな」


隣にいるシンシアとレイブンにも聞いたが、二人共首を横に振る。


古代にあった症状の一つなのかは不明だが、そう考えると以前アレグロが思い出した「何かに閉じ込められた」ということが引っかかる。それに、エストアで一時的に塔が復元された時も黒い騎士はアレグロ目がけて飛んできた風にも考えとれる。


じゃあ、それらに共通することはなんなのか。


ケイはいろいろな推測を立ててみるも、イマイチ考えがまとまらず頭を振った。



『今戻った!アレグロが倒れたと聞いたが!?』


その時シルトが屋敷に戻ってきたようで、応接室の扉を開けて入ってくる。


彼は最近非番になると、ボガードの紹介で冒険者ギルドの非常勤の講師として働き始めた。主に近~中距離専門を対象とした研修の講師を行っており、外見によらず礼儀正しいことからギルド職員に人気が出ている。噂によると一定数のファンが居るそうで、わざわざシルトがいる日を狙って講習を受講する人も出てきていると聞いたことがある。


そんなシルトは、戻ってすぐにローゼンから聞いたのか血相を変えてケイ達に尋ねたのである。


シルトには、アレグロは大丈夫と伝えてから空いているソファーに腰をかけてもらい、ローゼンが出したお茶を飲み干してから落ち着いた。容態を聞いたシルトは安堵の表情を浮かべ、何があったのかと尋ねた。


「パーシアによると、朝から顔色が良くなかったようだ。医者の話だと貧血か過労だろうって」

『そうなのか?』

「表向きはな。それと知ってたら教えてほしいんだけど、アレグロを鑑定した時に状態の項目に【タァークル率:10%】と出たんだが、それってなんの意味か知ってるか?」


その言葉に一瞬驚きの表情を浮かべてから、シルトは険しい表情をした。


『【浸食】のことだ』

「浸食?」

『タァークルは我々の言葉で侵されていると言う意味を示している。ただ、一般的な浸食と少し違う』

「どういうこと?」

『タァークルは“儀式的な浸食のこと”を示しているんだ』


その説明に今度はケイが眉をひそめる。


シルトは、アレグロは儀式により何かに浸食し始めているのではと推測を述べた。

それはなにかは彼もわからないが、浸食率が上がれば上がるほど彼女の身になにかが起こるのは確実だろうと続ける。


ケイはパーシアから聞いた話とタトゥーのこともシルトに説明をすると、背中のタトゥーは儀式によるものの可能性があるのではと返される。

またノートに描かれたパーシアの絵を見て、過去にこれと似たタトゥーをつけている人々を見た記憶があると述べる。正確な描写ではないにしろ、絵からの情報を汲み取り、本来はもっと繊細な模様をしているが大体こんな感じだと口にする。


シルトも全てではないが以前の記憶を少しだけ思い出していた。

それは歴史を明かす上で重要なことであり、今後のダジュールの展開を大きく変えるかもしれない。しかし、今後アレグロがどうなるかがわからない以上喜べない部分もある。


「じゃあ、なんで今になってアレグロがそんな浸食のような状態になるのよ?可笑しいじゃない!?」

「ヒントは俺達がマライダのマデーラの洞窟の地下で見た棺のような箱だろうな」

「あれのこと?たしか、アイ・・・なんだっけ?」

「アイソレーションタンクだ」


アレグロの症状に異論を唱えるシンシアに、ケイがもしかしたらとマデーラの洞窟でのことを口にする。


仮説を立てるとしたら、アレグロはそのアイソレーションタンクのような棺に入れられていたおかげで儀式による浸食が食い止められていた。しかしなんらかの原因でそこから出たアレグロは、タレナと共に今の現代を生きてきているが、それが徐々に彼女を蝕んでいると考えるとなんとなく辻褄が合う気がする。


シルトにそれを解く術はあるのかと聞くと、詳細はわからないと首を横に振る。


「そうなると、本格的にやばいかもしれないな」

「ヤバいって?」

「今後アレグロの身に何かがあるって事だよ」


シンシアはまさかと声を上げるが、鑑定でそれが出ている以上なんらかの調査や対策をしなければならないと考えてもいい。もちろん、シンシアからどうすればいいのかと聞かれ、ケイは答えられずに口を噤む。


ただ言えることは、今後はアレグロの【タァークル率】にも気をつけ、定期的に確認する必要が出てくることだ。もちろん本人はタトゥーのことは知っていても【タァークル率】自体は知らないか覚えていないかもしれない。タレナも知らないか覚えていない可能性があるため、今後ガイナール達にも情報共有や情報収集しなければならないと考える。


謎どころかアレグロ自身にも起こることを示唆しているとなると頭の痛い話だが、彼女のことを考えると本腰を入れてダジュールの謎に挑む必要があり、そしてしばらくは交代でアレグロに付き添った方がいいと結論づけた。



次の日、アレグロは昨日のような症状もなくケロッとした表情で朝食のダイニングルームに現れた。


「みんな、迷惑をかけてごめんなさい」


傍らにはタレナが心配そうな表情でアレグロを見つめ、時折いつも以上にアレグロに気を使う場面が見られる。当のアレグロは申し訳なさそうな表情を浮かべて頭を下げたが、ケイは昨日話し合ったことを二人に説明をした。


もちろん二人は、タァークルという言葉を聞いたことがないようで首を振る。


タレナに至ってはその話を聞き、アレグロに無理をしてはダメだと念を押す始末。

気持ちはわからなくないがちょっと過剰過ぎる気もするが、姉妹で双子だからこそ思うところはあるのだと感じる。それと背中のタトゥーのことをパーシアから聞いたと言うと、心配させてはと黙っていたそうだ。結果的に彼女の体調面を心配することになるが、ケイは今後定期的に鑑定を行い、アレグロのタァークル率の変動を確認すると述べる。

正気な話、どのタイミングで変動があり異常をきたすのかを考えるとまだまだ未知数で、本人もどの段階で身体に異常が出るのかがわからないのだそう。


ケイは、以前マデーラの洞窟で見つけたアイソレーションタンクのような棺とアレグロの記憶は何かしらの関係があるのではと睨む。もちろん彼女記憶が全部本当なのかはわからないが、やはり切り捨てられない部分もある。


そうなると、その辺の調査も急がなければならないのかなとふとアレグロの表情を見てそんなことを感じたのだった。

実はアレグロの身体には、儀式による浸食が始まっていた。

そのことを知ったケイ達は、今後彼女の身にも気をつけるべきだと考えます。

それを止める術はあるのでしょうか?


次回の更新は4月15日(水)夜を予定してます。

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