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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
160/359

155、記憶とアレグロ

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回のお話は、アスル・カディーム人達の記憶と推測の回です。

「ところでアルペテリアはその後、なにか思い出したのか?」


ケイがふと思い出したかのように、向かって左側に座っているアルペテリアに尋ねたが、彼女は首を横に振って否定の意思を示した。


ケイ達に発見され、ワイト家で保護されたアルペリアは、アレグロとタレナと同様に記憶が曖昧だという。彼女が唯一覚えていることは、父親とビェールィ人が自分を氷塊に閉じ込めようとした場面だという。そのビェールィ人はワイト家と似たような容姿をしていたため一時的に錯乱はしていたが、ベルセの侍女であるポーラの協力によりなんとか落ち着いている。


実は本来アルペテリアは同行する予定ではなかったのだが、アレグロとタレナのことを聞いたようで、姉たちに会いたいといい、ベルセの父・ガイナスに直談判をしたのちに同行の了承を得たという。

また彼女は、少しではあるがこちらの言葉や文字を覚えたそうで、さすがに翻訳機なしでは難しいが、時折ポーラと簡単な会話ならなんとか理解できるというのだから元から地頭がよく努力家なんだろうと察する。


「そういや、アレグロとタレナはどのぐらいで言葉や文字を覚えたんだ?」

「ケイ様、急にどうしたの?」

「いや、アルペテリアとシルトは翻訳機なしじゃ会話ができないけど、二年前にマライダで保護されたお前達はどうだったのかって気になってさ」

「そういわれてみれば、私たちは元々こちらの言葉も文字も理解できたかと」


タレナに言われ、ケイはう~んと唸った。


ケイの気になる点の一つに、アレグロとタレナのことも入っている。

二年前に港町ヴィリロス近辺の浜辺に流れ着いた二人をマーダ達が保護をした当初から言葉や文字を理解したとなると、同じアスル・カディーム人にも違いがあるのではとふと思ったのである。そうなると、二人の妹であるアルペテリアとの違いの説明ができない。ケイはもしかすると、以前マデーラの洞窟奥地で見つけたアイソレーションタンクのような棺となにか関係があるのではと思いつく。


アイソレーションタンクは一般的にリラクゼーションで利用されることがあるが、一部では臨床実験、例えば幽体離脱を再現するような実験にも使われることがあると何かで聞いたことがある。それにアレグロの記憶から「何かに閉じ込められた」という言葉から考えると、彼女は何かの理由でアイソレーションタンクのような棺に閉じ込められていたのではと仮説を立てる。


「そうそう、この間連絡をしたマライダのことなんだけどさ~」

「マデーラの洞窟のことですね」

「あぁ。アレってその後何か聞いてるか?」

「ギルバート経由でエミリア姉さんの手紙にバナハと合同で調査を進めることになったようです」

「エミリアの話では実際に赴いた時に代物を確認したようなんだが、どれもみたこともないものばかりで、アルバラントから専門家を派遣してもらうようお願いしたようだ」


ベルセとギルバートの話によると、マデーラの洞窟がある場所はマライダとバナハの境にある山々を形成している場所にあたり、二国で共同管理を行っている。

今回マデーラの洞窟はマライダ寄りに位置するため責任的にはマライダになるそうだが、やはりあの遺跡の代物には手を焼いているそうだ。


ケイはその時にスマホで撮影した写真をベルセ達に見せた。


特に顔の潰れた五体の巨像を見て、真ん中の像はアルペテリアに似ているとベルセが口にする。言われた本人はどういうことなのかわからないといった表情を向けているが、よくみると他の像より背も低いことから誰かを模して造られた可能性がある。

ケイはその巨像を見た時、五人の女神のことを思い出した。

しかし両端の像は肩幅は他の三体より広いため、男性型の像と解釈したことから女神像との直接的な関連はないのかもしれないと考える。


「この五体の像は誰かを模して造られた可能性がある」

「真ん中の像がアルペテリアに似ているからですか?」

「あぁ。まぁこれは俺の仮説なんだけど、もしかしたら他の像はアレグロ達のことじゃないかと思っている」


一同がその言葉に驚愕する。


ケイはあくまでも自分の考えだと主張をし、両端の男性の像は三人の上に二人の兄がいたと聞いたことからその二人ではないかと考える。

巨像が造られた理由はわからないが、彼らの父親がアスル・カディーム人の王と考えると、王家の子供達の姿を後生に残そうと古代エジプトの全身像や胸像に似たようなものではと行き着く。ただ今のダジュールには、自身を石像などの彫刻に模すということはしないらしい。時代の違いということだろう。



「あ、そうだ! ローゼン!シルトを呼んできてくれ!」

「承知しました」


ケイは応接室の入り口で待機をしていたローゼンにシルトを連れてくるように伝えた。今日は屋敷の警備をしているが、ベルセ達が訪問した時は巡回をしていたのか姿が見えなかった。今は時間的にも巡回を終えて正面玄関の前で待機をしている頃だろう。


「シルトさんをお連れしました」


身長が2m以上もあるシルトは、応接室の入り口をくぐりながら入ってきた。

入り口の高さが2mしかなく、背の高い方であるレイブンがギリギリ通れる高さであるため、のちのち改修しようかと考える。


シルトにベルセ達のことを説明し、アルペテリアに見覚えはないかと尋ねてみる。


彼は思い出そうと一瞬考えた後、アスル・カディーム人の王の娘に似ていると口にした。彼自身も記憶が曖昧なことから思い出せる範囲が狭く、それ自体もおぼろげだったようで間違えているかもしれないとつけ加える。


「じゃあ、俺が身につけている腕輪に見覚えは?」

『それは・・・アスル・カディーム人の王が身につけていたモノに近いかと』


ケイが腕輪をシルトに向けると自信がない表情ではあるが、やはりアルペテリアと同じ言葉が返ってくる。そうなると、バナハの試練の塔の最上部に腕輪と文献を隠したのはアスル・カディーム人の王であり、三百年前に討伐された魔王の可能性が濃厚となる。


ケイはここまでは仮説を立てていたが、彼らの話でよりそれが現実となる。

その一方で、五百年前の世界戦争も歴史を隠蔽するために起こした出来事の一つじゃないかと勘ぐる。それは新しい仮説として予言者・アニドレムも関連し、その人物のヒントはレイブンの故郷だった村であると。


「そうなると、ダジュールの世界の歴史全体が隠蔽されていたと考えるべきか」

「歴史全体がですか?」

「あぁ。おそらく大元はアレサの部下であるメルディーナだろうが、予言者のアニドレムも実は関わってるんじゃないかって思う」

「メルディーナが予言者を操っているってことですか?」

「真実を嘘で塗り固める方法のひとつとして、なら可能性としてある」


ベルセはメルディーナという名が出た段階で怪訝な顔をしていたが、ケイはそこには触れず自分の仮説を話す。メルディーナが歴史をねじ曲げそれを隠すために隠蔽したことは薄々だが感じていた。しかしそれがどのようなことになり結末を迎え、今の時代にいたったかは不明な点も多い。その点は今後発見された文献などを考慮して解明が進められるだろう。



夕方になり、ベルセ達はエケンデリコスと合流するために宿泊施設へ戻ると言うことで席を立った。ケイは夕食でもどうかと言ったが、明日の出発が早いようで今日はこれで戻るということだった。


帰り際にベルセから以前ケイ達が見つけたフリージアの地下遺跡の事について、こんな話を口にした。


「そういえばフリージアの地下遺跡の件ですが、エケンデリコスからこんな話を聞きました。私たちが見つけた遺体のほとんどに損傷があったようなのですが、調べてみたところ、どうやら呪術によって負った可能性があるということでした」

「呪術?でもあの傷み方は、外部から受けた末の損傷だったじゃん?」

「確かではないのですが、系統的には触れた者の身体を腐敗させるといったものに近いとも言ってました」


ケイ達が地下遺跡で見た遺体の数々は、ただの外部からの攻撃の損傷ではなく別の要因も入った上の結果であるとエケンデリコスは考えていたようだった。


ベルセからその内の遺体の一体をスマホで撮影した映像を見せて貰うと、台に置かれている遺体の骨の部分には確かに溶けている部分がいくつも垣間見える。

エケンデリコスは、遺体の状態から闇属性魔法の呪術の部類のによく似ている反面非常に強い呪術でなければこうならないと言っていたそうだ。

ケイは、自分でも解明したいから跡でその動画や画像を送ってくれとベルセに頼んだ。その隣ではよくそんな映像が見られるなとアダムとシンシアがげんなりした表情でこちらを見つめていた。



ベルセ達が帰った後にいつも通りに夕食をとり、ケイは食事後にブルノワと少佐が船をこぎ始めたので抱えて部屋に戻った。


「ケイさん、少しよろしいですか?」


ケイのベッドに寝かしつけた後で、タイミングでも見計らったかのようにパーシアが尋ねに部屋までやって来る。扉を開けると少し話したいことがあると彼女の口から伝えられ、しきりに辺りを見回していたので他の人に聞かれたくないことなのかと思い、彼女を中に入れた。


「実はアレグロさんのことなのですが・・・」

「アレグロがどうした?」

「こんなことをケイさんにいうのはどうかと迷ったのですが、どうやら体調があまりよろしくないようなんです」


パーシアは以前からアレグロの様子に違和感を感じていたと口にする。


詳しく尋ねてみると、時折ボッーとしたり何かを考え込んでいる様子をみたことがあると言い、もしかしたら記憶が戻っている可能性があるかもとケイが返す。


「でも、それだけじゃないんです。これはアレグロさんから口止めをされたのですが、彼女の背中一面に妙な模様が浮かんでいたんです」

「模様?」

「なんというか、タトゥー?見たいな感じのやつなんですが・・・」


屋敷には自室に備えつけられているシャワー&トイレの他に、一階に大きめの浴槽が完備されている。


少し前にパーシアが脱衣場のタオルを補充する際にアレグロの入浴と重なってしまったことがあり、その時に後ろを向いていたアレグロの背中一面に黒いタトゥーが全面に入っていたようで、どうしたのかと聞いたところ自分でもわからないと答えが返ってきたそうだ。


アレグロはいつも身体を隠すような服装をしているため、選んでも胸元や腕や足が見える服装ばかりだったことからケイも気づかなかった。

まぁ、入浴前の女性に出くわしたことがないのでなんともいえないが、パーシアはアレグロからケイ達に心配をかけたくないから黙っていてほしいと言ったそうで、みんなの見ていないところでなにかの病気にかかっているのではと不安がっている様子だった。


「ちなみにその模様覚えているか?」

「正確にはわかりませんが大まかには」

「ちょっとこれに模様を描いてくれないか?」

「は、はい」


ケイはパーシアに鞄から取り出したノートの一頁を開き、ざっくりでいいから描いてくれと頼んだ。十分ほどで書き上げたパーシアがノートを向け、その絵を見たケイが目を細めた。


パーシアが見た模様は四角を人の背中と見立てて、全体に何かの意味を示しているかのような描かれ方をしている。ただ一瞬だけだったこともあり正確な描写はほぼ無理なことはこちらも理解している。形容しがたいが、あえていうのであればトライバルタトゥーのボルネオ系統に非常に近い感じがする。


ちなみに戦闘行動の関係で全体的に露出が多いタレナにはその模様はない。

別に覗き見などではなく、いつも軽装で比較的背中が見える防具を身に纏っているため必然的に目につく事がある。非戦闘時の時も普段のクセなのか肌が見える服装を着ているため、首筋辺りの部分が見えることもある。


そう考えると以前からアレグロの行動に不自然なこともあったため、パーシアには教えてくれてありがとうと礼を言い、今後アレグロにも注意を向けようとそう考えたのであった。


歴史全体が隠蔽されている可能性を示唆したケイ達ですが、のちにパーシアからアレグロについての話も聞いたことから別の謎も出てきました。

パーシアが見たアレグロの背中のタトゥー?の意味は一体なんのことでしょう?


次回の更新は4月6日(月)です。

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