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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
16/359

14、領主

海の次は・・・?

今回は領主様の回

クラーケン祭りの翌日、四人はいつもの様に朝食を取っていた。


「おはようございます。パーティ『エクラ』の皆さんがこちらにいらっしゃると伺ったのですが・・・」

宿屋に冒険者ギルドの職員と名乗る男がやってくる。

「俺たちだけど、なんの用?」

「朝早くから申し訳ありません。ギルドマスターからの伝言を預かっておりまして、『昨日の話を聞きたいので来てほしい』と」

ケイはスプーンを加えたまま項垂れた。

「ケイ、仕方ないわよ。あれだけ派手に騒げばそうなるわ」

スープをすくって飲むシンシア。

「とりあえず今は食事中だから、終わったら行くと伝えておいてくれ」

「承りました」

アダムの返事に一礼をし、職員が立ち去った。


「めんどくせぇぇぇ!」

ケイが悶絶する。

「なに!?話が聞きたいから来い?お前が来いよ!!」

「まぁまぁ」

字下駄を踏むケイに宥めるレイブン。

「この調子だと領主まで話がいくだろうな」

「長年の悩みというやつか?」

「たぶんな。領主にしてみれば、今まではその期間だけ海からの物流が完全に止まるわけだから、それがなくなったことで少なくとも興味を持たれている可能性もある」

アダムとレイブンがパンをかじりながら、互いに意見交換をする。

「というか、今までにいなかったのか?」

「過去に何度か討伐をする動きはあったが、全て失敗に終わっている」

「船しか行けない場所で、戦闘になれば陸路を断たれる。一時的なことであれば放っておくことが得策というわけだ」

レイブンの言葉にアダムが続けた。

ケイが思ったことはすでに行っていたようだ。

なんとも神頼み感が否めない。


しかし神の力を持ったケイが、ある意味で討伐を担ったことで神頼みが成就したということになる。



食事を終えた四人は、ギルドに向かうために宿屋から出た。


朝早くにも関わらず、市場で準備する人や仕事場に向かう人で行き交っていた。

「にいちゃん!昨日のクラーケンうまかったぜ!」

「イイモンみつけたら教えてくれよな!」

「今度は俺たちも連れてってくれ!」

何人かにそう声を掛けられる。

ケイの行ったわがままが、結果として他人を幸せにするかたちになる。


ギルドに着いた時も、何人かの冒険者に同じようなことを言われる。

「エクラの皆さん、おはようございます!」

受付にいたミーアが挨拶をした。

「クラーケンのこと聞きました!本当に討伐されるとは思いませんでした」

「ケイの気まぐれだ」

「本当よ。一時はどうなることかと思ったけど」

「俺たちもこうなるとは思わなかったけど」

三人が各々感想を返す。

「クラーケンって食べたいじゃん。結果イカ味だったけど」

その時点で発想が斜め上のケイに、三人はあきれ顔で首を振った。


「よぉお前ら!遅かったな?」

四人が二階の部屋に通されると、オルガが声を掛ける。

「遅かったな?じゃねぇよ!飯ぐらい食わせろよ!」

「だから時間をやったんだろ?」

「用があるならお前から来いよ!」

「今回はそうもいかん」

普段なら自分から行くのだろうか?

ギルドマスターが仕事をほっといて出歩く姿が想像できるが、のちに彼自身が地獄をみることになると考えざるおえない。


「ところでそちらは?」

レイブンが視線をオルガの隣に移す。

そこには、四十代ぐらいの白髪の男性が座っていた。

燕尾服を着ていることから、おそらくどこかに雇われているのであろう。


「パーティ『エクラ』の皆様、お初にお目にかかります。私はクレイオル様の執事をしておりますヴォルトと申します」

男性はソファーから立ち上がり一礼をした。

「クレイオル様って領主か!?」

「領主?」

「ケイ、あんた知らないの?中央大陸の領主よ!?」

ケイはいまいち理解できなかった。

「もしかして用件ってこれ?」

「あぁ」

「クレイオル様がクラーケンの話を伺いたいとのことでして・・・」

オルガが呼んでいた理由がわかり、ケイは頭を抱えた。

アダムの推測が当たったかたちになったのだ。

「はぁ、わかったわかった。行けばいいんだろう?」

ようやく観念したのかケイが返事をした。

ヴォルトは船を動かしていたダットにも話を聞きたいと言ったが、昨日のクラーケン祭の後に船を出航させたためここには居ないことを告げる。

「とりあえず行ってみるか」

渋々だが、ヴォルトの案内で領主の元に赴くことにした。



ギルドの前に一台の馬車が止まっており、ケイ達はそれに乗り込む。

馬車はアルバラントに向けて出発をした。

「クラーケンの件は以前から問題になっていたのか?」

「はい。三年ほど前からどこからともなく現れ、一定期間過ごしたのちまた沖に帰って行く行動が見られておりました」

「討伐隊を結成したのも?」

「過去に何度かございましたが、結果は振るわず」

今朝、アダムとレイブンが話していたことと同じである。

そう考えると、大型魔物の討伐はいかに難しいかがわかる。

「クレイオル様?っていうのは何で知ったんだ?」

「昨日遅くにギルドの方から、クラーケンの魔石をオークションに掛けたいとご連絡を受けましたので、確認のために私が伺いました」

どうやらギルドのようだ。

クラーケンの魔石も状態が非常に良かったため、値がつけられず結局オークション行きになったのである。

今回は両眼が魔石のため、高額が予想されている。

「しかし、レッドボアの魔石の提供者と同じ方だとは思いませんでした」

「そぉ?」

「レッドボアも希少価値が高く、討伐難易度が高いため滅多にお目にかかれませんので」

「そっか~」

興味がなさそうに返事を返すと、ケイは馬車の窓から外の景色を眺めた。


アルバラントに着いた時はお昼をだいぶ過ぎてからだった。

馬車は北の上流地区の一画で停車した。。

「こちらがクレイオル様のお屋敷でございます」

門から見えるバラの庭園と、青い屋根が印象的な白い屋敷が建っている。

「すっげぇ庭!これ全部バラ?」

「はい。クレイオル様はバラがお好きなため、庭師が丹精込めて育てたものばかりでございます」

庭には赤やピンク、黄などさまざまなバラが咲いていた。

庭園を通り玄関から中に入ると、また別の意味で圧巻だった。

二階建ての造りは、エントランス部分が吹き抜けになっており、開放的な雰囲気になっている。

飾っている絵画も派手にならず、あくまでもアクセントとして存在している。

「金持ちってゴテゴテしたものが好きなイメージがあったけど違うんだなぁ」

「全員がそうなわけないじゃない!」

領主の娘でもあるシンシアがケイに返す。

要は人それぞれである。


四人ははヴォルトに案内され、一階の応接間に通された。

「クレイオル様をお呼びして参ります。しばしお待ちを」

一礼をしてヴォルトが部屋から出る。

「・・・暇」

「領主様の屋敷で何を言ってるの!?もうちょっと緊張感を持ちなさいよ!」

「はぁ~シンシアの言うとおりだ。お前は少し考えた方がいい」

「何を?」

「今この現状を、だ!」

「考えてる。暇!眠い!遊びたい!」

「子供じゃないんだからしっかりしてよ!」

「三人とも少し落ち着こう」

ケイのわがままにアダムとシンシアがつっこみ、レイブンが宥める。お約束である。


程なくしてノックの音と同時に扉が開く。

「皆様、お待たせ致しました」

ヴォルトが扉を開け、屋敷の主が入ってきた。


「皆様初めまして。私がマイヤー・クレイオルと申します」


金色に青い目の女性が挨拶をする。

彼女が中央大陸の領主:マイヤー・クレイオルである。


四人が自己紹介をした後、ケイが素朴な疑問を口にした。

「領主って女性なんだ」

「意外でした?」

ソファーに腰を掛けたマイヤーが尋ねる。

「年いったジジイだと思った」

「ケイ!言葉遣いをなんとかしなさいよ!」

横からシンシアが肘で小突く。

「お気になさらず。私はあくまでも『領主代行』の身分ですから」

「領主代行?」

「二年ほど前に夫を病で亡くしまして、本来であれば息子のフレデリックが跡を継ぐのですが、まだ学生のため代行というかたちをとております」

マイヤーが出された紅茶に口をつける。

「あんた苦労してるんだな」

本来であれば不敬罪にあたる行為も、マイヤーは気にするそぶりをみせなかった。

ケイに興味を持っているためか、それとも他の理由があるのか現段階では不明である。


「クラーケンの討伐されたことのお話をお聞かせ願いませんか?」

マイヤーの問いにアダムが掻い摘まんで説明をする。

船を創り船を動かし、クラーケンを仕留める。

これだけのことだが、マイヤーとヴォルトは驚きの表情を隠すことができなかった。

ケイが作成した魔道船は、オーバーテクノロジーと言っても過言ではないほどの性能だったからだ。

「できれば船を間近で見てみたかったのですが、仕方ありませんね」

ダットが船を出航させていたため、マイヤーは少し残念そうな表情をした。

「クラーケンを食べるという発想もありませんでした」

「クラーケンってイカじゃん?本当にイカなのか食べてみようかと」

「ケイさんはとても変わった方なんですね」

マイヤーが微笑んだ。

「でも、挑戦することはいいことだと思います」

まさかの賛同である。

領主なら咎めるべきところだが、マイヤーはケイに好意的な態度を示した。

「結構好意てきだな?」

「事後を注意しても意味はありません。それにできたことに賞賛はすれど批判などはいたしません」

それがどういうことなのかはわかりかねた。


「そういえば、魔石ってオークションに出すって聞いたけど、いつやんの?」

「明日の正午に商業地区の一角で執り行われます」

「それって俺たちでも観れる?」

「一般には公開されておりませんが、皆様は出展者にあたりますので可能かと」

マイヤーがヴォルトに確認する。

「今回は特別に席を設けておりますので、よろしければ観に行かれてはいかがかと」

まるで図ったかのようなタイミングである。

「やった!オークション楽しみだなぁ」

「あんたねぇ~」

「まぁまぁ~」

「本当に申し訳ありません」

ケイは領主の前にこの行動である。

アダムが頭を下げるとマイヤーが微笑んだ。

「本日はこちらにお泊まりいただくことにしましょう。ヴォルト、皆様を部屋までご案内して」

「承知致しました」



ヴォルトがケイ達を連れ応接間から出ると、マイヤーが息を吐いた。

「ケイさんは実に面白い方ですわ。私が『見えない』のも頷けます」

マイヤーが紅茶を一口つけると独りごちた。


次回は領主様とオークション見学回です。

さてどうなることやら。

次回は4月23日(月)に更新します。

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