表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
159/359

154、ベルセ達の来訪

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、ベルセ達が屋敷に来るお話になります。

ベルセ達が屋敷に来たのはその翌日の昼を過ぎてからだった。


今回はベルセとオスカーの他にアルペテリアとギルバート、そしてベルセの侍女であるポーラが同行している。もちろんベルセとギルバートの従魔であるペスとペティもそれぞれ大人しく鞄の中に入っている。


ケイがギルバートがいない間ワイト家の食事はどうするんだ?と尋ねると、彼には弟子が二人おり、自身が留守の間は彼らが担当していると述べる。

元々孤児だった弟子の二人はこの間成人を迎えたそうで、他のシェフより物覚えが良く密かに認めている様子だった。ギルバート曰く、本人達の前で言うと調子にのるからあえて言わないでおくと言いながらも、今回の長期不在に関しては、彼らにとって一つの成長のきっかけになるだろうと笑いながら答える。


なんだかんだで弟子思いの男である。



ベルセ達を応接室に通すと、まずはそれぞれの近状報告要は世間話から入る。


その時、訪問したベルセからお土産を受け取ったのだが、なぜか珍しい表情でアダムから日本では当たり前なのかと尋ねられる。

ケイもベルセも元・日本人のごく普通の振る舞いなのだが、そもそも訪問先に手土産を渡す風習はダジュールにはない。それ以前に王族や貴族では、贈り物に毒を仕込んだりするそうで、あえて受け取らないことで自衛を行っている。

世界が変われば風習も変わるといったところだろう。


ベルセから受け取った手土産は、フリージアで人気のクッキーだという。


山間や湖の近くでしか自生しない薬草で作られており、面白いことにかじる度に味が変化があるようで、地元の子供の間では○○味が出たら勝ち負けで判断する遊びが流行っている。ちなみにこのクッキーは食育にも貢献しているようで、多才な味を楽しみ学べることからフリージアでは好き嫌いをする人があまりいないそうだ。



「フリージアにはいつ戻るんだ?」

「明日には馬車で出発します」

「結構急だな」

「ケイさんには本当ならもっと早くお目にかかりたかったのですが、予定をずらせなかったので・・・」


ベルセは学校が長期休暇を利用してこちらに訪れたのだが、フリージアまで馬車で八~九日はかかるため、意外とスケジュールが詰まっている。しかも学校の宿題が多く、まだいくつか終わっていないものもあるとげんなりしている様子だった。

まぁ外見上15才に対し精神年齢が二十代後半なので、違った意味で疲労しているのだろう。


それと今回はエケンデリコスも同行していたのだが、ガイナールの用で別行動をとっているのだそうだ。彼の方でも過去の遺産を巡り調べた知識を元に、いろいろと話し合いと調査を行っているそうで、わかり次第こっちにもアクションをすると言っていたらしい。


「さっそく本題なのですが、実は皆さんに見て貰いたいものがあるんです」

「見て貰いたいものって?」

「こちらです」


ベルセが鞄からあるモノを取り出すと、テーブルの上に置いた見覚えのあるそれを見たケイは一瞬眉をひそめた。


彼女が取り出したのは、ケイやガイナール、ナットが持っているモノと同じ結界を解く鍵の一つだった。彼女が取り出したカギも青い宝石のがあしらわれ、縁の全体には銀色で細かい細工が施されている。しかもよく見ると、細工の中には月を象った箇所も見られる。


「以前、女神像があった岬に調査に赴いた時に見つけました」

「最初に俺が見つけてベルセに渡したんだ」

「女神像のどの辺にあったんだ?」

「女神像が立っている位置からすぐの崖の近くに落ちてたんだ」


オスカーによると、ベルセの父が調査隊を現地に派遣した際に同行したそうで、その時偶然崖に引っかかるように落ちていたのを見つけたのだそうだ。

彼はベルセから五つの鍵を聞いていたそうで、それを彼女に渡したところケイ達が捜している鍵のひとつではないかと結論づけたのだ。


「鑑定の結果ですが【月の鍵】というもので、月の女神・アステリの加護を受けているものになるようです」

「ということは、四つ目か・・・」


以前ケイ達が行った際には崖の方までは行っていないため、今回の事はオスカーの偶然功績が大きい。しかし鍵を集めたところでそれをどこで使うのかは一切不明。フォーレ経由でガイナールはマライダに伝わる【フィスィ・デア】に関係があるのではと話すが、それが結界の何を示すのかはこれも調査中である。


「それとガイナールさんから『文化遺産保護法』の契約書に偽装の痕跡があると聞きました」

「それについてはどのぐらい調査が進んでいるか聞いてるか?」

「当時、担当していたキューリオ家が関係している事は既に調査済みだそうです。ただ・・・」

「偽装以外も行っていた、ってことだろう?」


ケイの発言に一同が驚きの表情でこちらを向く。


数日前にフォーレが尋ねにやって来てその話を聞いたと説明をする。

ベルセ達もその話を聞いていたようで、それがとある廃村理由と関係があるのではと考え、現在はフリージアとエストアの共同調査を開始しているという。


「ケイ!話が飛躍してるぞ!?」

「飛躍はしてない。その村だった場所は、予言者・アニドレムが関わっているとされ、すでにガイナール達がその書類を見つけて調査を開始している」



「もしかして・・・その村は俺の生まれ育った村のことなのか?」



アダムの言葉にケイが説明をすると、何かを察したのかレイブンが口を開いた。


彼には残酷な事実なのだが、十二年前にレイブンが住んでいた村に魔物をけしかけたキューリオ家の証拠の書類は既に間違いなく確定であるということ。そのキューリオ家も取り潰しをされ、生きる証人がいない状態ではあるが、書類自体はガイナールの手にありその事実確認を進めていること。


ケイが頷くと、顔を青くさせたレイブンは何をどう言っていいのかわからず、ただ黙ったまま考え込んでしまった。ベルセ達も、まさかその廃村がレイブンの故郷とは知らずに配慮がなかったと謝罪する。


「いや、気にしないでくれ。あの村周辺はフリージアとエストアの魔物もよく出るし、いずれはああなる可能性も覚悟はしていたんだ。でもまさか人為的に起こされたとは・・・」


レイブンはよほどショックだったのか言葉につまり、口を噤んでしまった。


彼には悪いが、たとえ隠し続けてもバレるのは想定できる。だからこそ早い段階で事の事実を伝えることにより、ショックを受けてもらおうというある意味でケイの気遣いも多少なりとも入っている。


「でも、なんでキューリオ家はその当時になってそんなことをしたのかしら?」

「ガイナールさんは、百年ほど前からブラマンテ家と共同で業務に当たっていたようで、おそらく後に歴史隠蔽の関係を探られないようにしたのではと考えているようです」


そうなると、当時から歴史を調べている人物が存在していたことになる。

シンシアの疑問にベルセがこう答え、続けてこんなことも口にした。


「それと当時歴史を調べていた歴史家が次々とアルバラント城を解雇されていた件ですが、それもキューリオ家が関わっていたのではとも言ってました」

「歴史を調べられては困るから、前・国王にあることないこと言って首を切らせたんだろうな」

「はい。ガイナールさんも同じ事を言ってました。その中にはエケンデリコスも含まれていたようです」


アルバラントが虚偽の隠蔽をしたのではという話は、ここから来ていることを示している。まぁ半分当たり半分ハズレといったところだろう。


エケンデリコスが歴史を調べていたがこれ以上はまずいとキューリオ家が危機感を持ち、国王に直訴し強引に辞めさせたのはある程度想定はしていた。実際に押収された証拠の書類は見ていないが、そこまで証拠が残っていると言うことは長期間偽装に関わっていたのが露見するのは時間の問題だろう。


「レイブン。ショックを受けているところ悪いが、村になにか言い伝えかなにかはあったりしないか?」

「えっ?あ・・・さぁ~。俺も十五年しか居なかったからそれ以前のことはちょっとわからないな。あ!でも、ダニーなら何か知ってるんじゃないかな?」

「ダニーってヴィンチェの仲間の?」

「あぁ。当時彼の家は村長の隣にあったから、何か聞いているのかも」


レイブンの返事にケイはポケットからスマホを取り出すと、通話をスピーカーにしてからヴィンチェにかけた。



『もしもし?』



数コール後にヴィンチェが出たので、軽い挨拶を交わしベルセ達が来ていることを伝えてから状況を彼に説明した。彼にダニーの所在を聞いてみると、丁度昼食を取っていたようですぐ側に居ることが伝えられると聞きたいことがあるから代わってくれと返す。ヴィンチェから肯定の返事と共に、電話口でダニーとちょっとした会話交わしている様子で、相手ももスピーカー設定にしているのか料理屋の店員の声や他の客などの周りの音が聞こえてきている。


『あ、あー代わったぞ?』

「ダニーか?」

『あ、あぁ。ケイ、でいいんだよな?』


ダニーからスマホでの会話というものを見たことはあっても体験した事がないようで、戸惑いの声が聞こえてくる。ケイはこういうものだと説明をしてから、十二年前まで住んでいた村について尋ねた。


『住んでた村の話か?』

「あぁ。なにかいい伝えのようなものは聞いたことがないか?」

『と、いわれてもな~ あ!そういや、俺が子供の時“村の奥にある家には踏み入れてはいけない”って言われてたな~』

「何それ?空き家か廃家なのか?」

『詳しい事は知らねぇが、一度だけ行ったことがあるがただの物置だったぞ?』


彼の話では、幼い頃からその廃家に行ってはダメだと散々言われていたらしく、十代の前半に友達と冗談半分で窓から覗いてみたが何もなかったと言っていた。

しかし、その家もいつの間にか解体されたのかなくなり更地になり、大人達に聞いたが知らないと答えた人が大半で、中には「知らなくていい!」と恐ろしい剣幕で怒鳴られたことがあったそうだ。彼もその空き家を気にしていたが、いつの間にか忘れてしまったそうでケイに聞かれて思い出したそうだ。


ダニーからレイブンの伯母であるメリンダにも聞いてみると言われ、ヴィンチェ達も他に何かわかったら連絡をするということで通話を閉じた。


「ダニーさんがおっしゃっていた空き家は、予言者・アニドレムと何か関係があったのでしょうか?」

「予言者の拠点と仮定して各地を放浪していたってことなんだろうな」

「でも話を聞く限り、村の人はその家にいい印象を持っていないようでしたね」


タレナとアダムが考え込む。確かに予言者の拠点にしてはあまりいい感じではなかった。そうなると、理由はまた別にあるのではとケイは考え、アニドレムも歴史に関与しているのではとふとそんなことを思いついたのであった。


ベルセから結界を解く鍵を見せられ残りはあと一つ。


また予言者・アニドレムに関連した村がレイブンの生まれ育った村であることにみんなが驚いたが、ケイはダニーの話から村の人達の印象はあまりよくなく別の理由があるのではと推測をする。


次回の更新は4月3日(金)です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ