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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
156/359

151、錬金術ギルドのマスター来襲

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。そして大遅刻申し訳ありません!

今回のお話は、マーリンがやって来る回になります。

ルトがラフィーナを助けてから数日が経った。


その日屋敷にいたケイは、昼食後に自室で昼寝をしていた。

ブルノワと少佐はレイブンにつれられて、先日庭に植えた花の様子を見に外に出ている。どうやら芽が出るまでの間が待ち遠しいようで、毎日熱心に観察や世話などをしているようだ。他のメンバーも出かけている人もいれば、屋敷で何か作業をしていたりと各々違った過ごし方をしている。


そんななか、自室の扉からノックの音が聞こえた。

その音に気づき目を覚ましたケイが返事をすると、開いた扉の隙間からタレナが様子を伺うように顔を出す。


「ケイさん、お休み中のところ申し訳ありません」

「あ~どうした?」


ケイが背伸びをしてから上体を起こすと、タレナから来客を告げられる。


どうやらその人物はルトに用があったようだが、そのルトは昼食後に園芸品の材料が足りないとかで出かけてしまったのだ。


タレナからローゼンに頼んで応接室に案内をして貰っているようだが、どうすればいいかと尋ねられる。ケイは自分が代わりに行くので、ルトが戻ったら来るようにとタレナに頼んだ。



「あれ?あんたはたしか・・・」


応接室に来たケイが来客の姿を見て声を上げた。


その人物は見覚えのある白髪の初老の男性だった。

たしか以前バザーの時にポーション類を購入し、商人ギルドのハワードから錬金術ギルドのギルドマスターだと聞いたことを記憶している。男性の方もまさか屋敷にケイがいるとは思っていなかった様子で、驚きの表情でこちらを見ている。


「ルトに用があって来たって聞いているけど?」

「はい。先日ギルドに所属しているラフィーナがお世話になりまして、ご挨拶とご報告に伺いました。申し遅れました、私は錬金術ギルドのギルドマスターを務めておりますマーリンと申します」


マーリンと名乗った男性にルトは外出しているため戻るまで待つことになると伝えると、それでも構わないと返ってくる。


詳しい話を聞いてみると先日ラフィーナの昇級試験があったようで、同期からの課題の妨害を目撃したルトは彼女の手伝いをしていたらしい。

ちなみに彼女に嫌がらせをしていた同期の少女達の処遇は、ギルドのルールに則り一ヶ月の謹慎を言い渡し、ラフィーナには後日改めて昇級試験のやり直しが決定したとのこと。そういえば数日前に、ブルノワと少佐の散歩を兼ねた買い物に出かけて戻りが遅かったことがあった。所用で錬金術ギルドにいたラフィーナに会っていたということは聞いていたが、まさか課題に間に合うように手伝いをしていたとは思わなかった。


マーリンによると、その時ギルドに所属してみないかと話を持ちかけたが屋敷の使用人で奴隷の身分のため一存では決められないと断られたそうだ。

ケイ自身ルトに錬金術のきっかけを与えた形だったため、てっきりそのうち所属するものとばかり思っていたが、彼の中では了解を得ねば決めかねるとケイの体裁を考えての行動だったのだろう。


その辺は事後報告でもいいから伝えてくれれば把握するし止めはしないのだが、今まで細かい話はあまりしなかったためケイにも反省する点はある。


「こちらを見て頂きたい」


マーリンの懐から透明感のある緑色の液体が入ったビンが取り出され、テーブルに置かれる。ケイが手に取り鑑定をかけると中級回復薬と表示される。


今回ラフィーナが提出するはずだった課題を再度ルトの指導の下に作製されたもので、その時たまたまギルドにいたマーリンは工房でルトとラフィーナのやりとりを見かけ、初めから終わりまでその作業を見学していたという。

基本的にラフィーナが作業をしルトが工程やアドバイス、付き添っていたブルノワと少佐が作業補佐をしていたそうで、中級回復薬のあまりの完成度の高さに目を見張ったそうだ。


ルトはまだまだ改善の余地はあると言っていたらしいが、鑑定結果から見て品質Aと熟練の職人のような印象は受ける。まぁケイ自身錬金術についてあまり知らないため何が正解かはわからないが、少なくとも一般に売られている回復薬よりは品質が良いことは理解できる。


「私は、ルト君のような才能のある若者に勉強の場を与えたいと思っています」

「だけど、ルトは一度断った」

「はい。彼は使用人で奴隷の身分だからと申していました。冒険者のケイさんにお世話になっているが故に体裁を考えてのことだと理解しております」

「別に俺はそんなことは気にしないし、本人がやりたきゃやってもいいんじゃないかと思ってる。まぁそれを本人が了承するかは別の話だが」


現在ルトは独学で錬金術を学んでいる。


錬金術だけではなく、他の分野も懸命に学んでいるようで全ては錬金術のために知識を深めていると言っていた。


きっかけは、以前錬金術に関してケイが科学とか理科みたいだなと言い、ルトが興味を持ったようで尋ねたことがあった。その仕組みを簡単に説明したところ、餌に食らいつく鯉の群のように迫ってきたため、創造魔法で科学や理科に関する参考書を創れないかと考えた時に偶然完成してしまった。それをルトに渡すとだいぶ喜んでいたようで暇があれば読み耽っていたことを思い出す。



その時、応接室の扉がノックされ開かれる。


ちょうどルトが戻って来たようで、タレナの話を聞いたのか慌てた様子でやって来る。マーリンに対しては、大変お待たせしましたとまるでサラリーマンのようにペコペコと頭を下げていたので、とりあえず落ち着くように諭してからケイの隣に腰を下ろさせた。


ルトにはマーリンから話は聞いたと前置きをしてから、今日はこの前の経過報告で来たそうだと説明をした。


マーリンは懐から小さな木箱を取り出してから、ルトの前に置き礼を述べた。

どうやら先日の件で非常に役に立ったと感謝していた様子で、進展した出来事を彼に話した。その間ルトは真剣にマーリンの言葉に耳を傾け、ラフィーナの課題仕切り直しとマヤ達の謹慎の言葉を聞き安堵の表情を浮かべた。


それからルトが受け取った木箱の蓋を開けると、赤いブローチが入っていた。


以前ケイがローゼン、パーシア、ルトに自分の身を守るためという意味を込めて映像と音声を録音することのできるブローチ型の装置を創造して贈ったものである。


それを見たケイがあぁ~と納得の表情をし、ルトが証拠のためにマーリンに一時的に渡していたと述べる。もちろんマーリンは見たこともない魔道具だったため、最初は驚いたと話す。ルトからこれはケイから送られたものだと述べると、ここまで性能の高い魔道具は初めて見ると返ってくる。


実はこの魔道具には欠点がある。


使用した魔石の関係で記録したものを保持する件数が十件しか出来ないのだ。

そして十件を超えると古いものから自動的に消去されるため、ケイとしては希少魔石が手には入ったら交換しようと考えている。それなら初めから創造魔法で性能のいいものを創ればいいじゃないかという話になるが、あまりやり過ぎるとオーバーテクノロジーになってしまう可能性がある。

製作するにあたりガイナールに相談したところ、地球で使用されているものを創造するのは簡単だが、それが意図した使われ方をされた場合何が起こるかわからないと述べ、それなら魔石を応用した魔道具を生成したらどうかと返ってくる。


ケイはガイナールの話も一理あると考え、彼の案を採用し魔石を利用した魔道具を作製したのである。



話は戻るが、マーリンはルトに錬金術の腕を見込んで加入を進めていた。


一度は断ったルトだが、ケイの素人目線から見ても完成度は高いだろうなとは思ってはいた。正直ギルドマスターに言われている時点で誇ってもいいと思うのだが、ルトはもともとポジティブ思考の人間ではないので自信がないと口にする。


彼は庭師の仕事の合間に錬金術の作業も行っているため、今までに園芸用の肥料やケイが考案する料理の調味料の案を錬金術を使って再現をしている。まぁ料理に関してはパーシアに一任しているため、彼女が思う調味料を再現しているだけなのだが、これが意外とケイ達にも好評で身内だけで使う分には問題ないとガンガン採用している。


マーリンに説得をされているルトは困惑の色を浮かべた。


ギルドマスターである彼から見てもルトの錬金術としての腕はたしかなようで、本職の中でも通用するだろう。しかしルトは庭師であり一般人である。ケイに才能を見いだされた形にはなったが、その後のことはルトの努力の賜といってもよい。


「ルト、やってみりゃいいじゃん」


ケイの言葉に驚きの表情を浮かべる。

一般の主従関係は知らないが奴隷といえども人は人であり、ケイは今までに彼らがやりたいようにやらせ、それら一切を止めるということはしなかった。もちろんそれが危険を伴うようなことであれば口は出すが、一般的な事を一般的にやらせるだけなら放置である。ルトもそのことを理解しているようで、あくまでも本職は庭師であり、それをよりよくさせるためには多方面からの学びも必要だと今までの経験で感じていたため、考えた末にマーリンの話に合意する運びとなった。



そのあとで、マーリンはルトは普段錬金をどこで行っているかと尋ねた。


ケイはルトが錬金の作業できるように一階の西側にある工房に案内をした。

現段階では錬金のみを扱うだけの部屋のため、広さに対して道具や材料諸々はだいぶ少なく見える。マーリンが使用人のために工房を作るとは珍しいと口にしたところを見ると、一般的にはそんなことはあまりなされないと察する。例えされても意外とおざなりだったりすることもあるようで、本格的に屋敷に専用の工房を作ることは希だという。


ルトはマーリンに、今後錬金術を応用して本職である庭師の仕事を効率よく行えるよう画期的な調合品や薬品などを説明してみせた。


その中には、以前ケイが口にした『雑草をなくすための薬品』を錬金術で再現した青い薬品もある。恐らく除草剤のことだろうが、錬金に使用する素材がゴブリンの革だったりスライムの外殻、ボアの牙と爪と唾液という摩訶不思議過ぎる物ばかりで、一応説明はされたがよくわからないまま今に至る。


錬金術のことになるとルトとマーリンの間に専門的な用語が飛び交うようになり、ケイは自分の出番は終わったと判断し作業場をあとにした。



のちに錬金術ギルドに所属することになったルトだが、初日に披露した手順や手法に他の錬金術師達から喝采が上がった。その何人かは弟子になりたいとこれまたワケのわからないことになったため、ルトがそれに対して頭を悩ませたのは別の話である。

ついに錬金術ギルドに所属することになったルト。

今後の活躍を祈りつつ、ケイは暖かい目で見守るのであった。


次回の更新は3月27日(金)夜です。

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