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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
145/359

140、家の購入を考える

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回のお話は、ケイがとうとう家を買います!

マライダからアーベンに戻って来て数日経った昼下がりのことである。

その日ケイは、宿屋のベッドの上で横になりながらスマホで元・日本人達にマライダで知り得た情報を共有していた。


初めはメールや通話のみだったが、最近スマホを魔改造しチャットのようにリアルタイムで会話が出来るようにしておいた。


ガイナールとフォーレは途中で公務に入ったため退出してしまったが、ログ自体は残る仕様になっているため、後ほど確認するとのこと。

ヴィンチェはアルバラントから馬車でダナンへ戻り、逆にベルセはアルバラントに移動している。タッチの差だなと茶化すと、本当にタイミングが悪かったと二人共残念そうな文面を送る。ナットは親の手伝いのためガイナールとフォーレが退出した後でチャットインをしている。ルフ島では、最近奈落の下にある地下遺跡を捜索を開始したそうだ。

以前ケイ達が遭遇した黒い騎士の屍も専門家による調査がなされ、詳しい事はまだ調査中だが、どうやら死体に寄生していた可能性があると示唆している。

ナットからはその辺に関してわかり次第また連絡するということで話を締めた。



「ケイ様~~~!」


チャットから退出したと同時に、外からアレグロの呼ぶ声が聞こえた。

ケイのいる部屋は窓を開けるとちょうど宿屋の裏手に面しており、空き地が一望できる。何事かとベッドから起き上がり外の様子を見るため窓から身を乗り出すと、下でアレグロからヘルプの声が聞こえた。


「アレグロ!どうした!?」

「ブルノワと少佐にシンシアとアダムが巻き込まれちゃったみたいなの!」


どういうことなのかと首を傾げるケイにアレグロが空き地の隅を指す。

その示す先を見ると、はしゃぎ回っているブルノワと少佐に地面に座って困った表情を浮かべるアダムと怒るに怒れないシンシアの姿があった。



「・・・で?なんでお前らまでそんなことになってるんだ?」


裏手にある空き地に来たケイが彼らを見た第一声がそれである。


あきれ顔のケイに、面目ないという表情のアダムと私だって好きでやってる訳じゃないといった表情のシンシアがいるがなぜか二人共泥まみれである。対してブルノワと少佐は、昨夜降った雨の影響で空き地の隅が水溜まりになっているため、それが楽しいのかビチャビチャと遊んでいる。


「私は危ないところがあったからブルノワと少佐を掴まえようとして、避けられた挙げ句に水溜まりに突っ込んだのよ!」

「俺はシンシアを助けようとして手を伸ばしたら、ブルノワと少佐が後ろから突っ込んできてそのまま水溜まりに・・・」


どうやら二人が泥まみれになったのは、ブルノワと少佐のせいらしい。


未だに泥まみれになりながら水溜まりで遊んでいるブルノワと少佐の首根っこを掴み、二人の前に立たせ迷惑をかけたことを懇々と言って聞かせた。

ケイのあまりの剣幕にブルノワと少佐は本当に反省しているのか(こうべ)を垂れていたため、さすがのアダムとシンシアも自分たちは大丈夫だからと窘めたが、ケイはただ怒っているわけではなく、その行動によってどのような結果になるのかを考えさせる説明だと述べる。



「ただいま戻りました」

「あれ?みんなどうしたんだい?」


彼らを【クリーン】で綺麗にし半べそをかいているブルノワを抱え宿屋に戻ると、同じタイミングで外出していたレイブンとタレナが戻って来た。みんなの様子が違うと聞かれたため、さっきあった事を話すと二人は遊びたい盛りだから持て余してるんじゃないかと述べる。


確かにアーベンには子供達が遊べるような広場的なものがあまりない。


町中を見てみると子供達は町の至る所で走り回り、港には桟橋から飛び込みを行っている子供の姿もある。ダジュールには地球のように公園という概念があまりないようで、シンシア曰く王族・貴族は家の敷地内に庭があるため、誘拐される可能性もあるが故に、単独で敷地外にでることはほとんどしないそうだ。

逆にアダムとレイブンは遊び場はもっぱら山や森が多く、よく魔物に遭遇してやられかけたということが何度もあったそうだ。


さすがにその遊び方もどうかと思うが、宿屋の空き地は本来遊び場というより物置に使われていたようで全体的に狭く、遊びたい盛り有りのブルノワと少佐を見てケイはそろそろそういったことも考えなきゃと思いに至った。



翌日ケイ達は、とある人物に会うためにアルバラントへ向かった。


アルバラントに到着してすぐに、東の商業地区の一角に建っている商人ギルドへ赴く。全体的にレンガ調の壁に白枠の窓がいくつも配置され、屋根にはパステルイエローの様な主張の強い色があしらわれている二階建ての建物である。


ギルド内は吹き抜けの天井に丸型のステンドグラスが見え、ダークオークで統一されたカウンターやテーブルなどの家具が配置され品の良さを伺わせる。

また昼時を過ぎているにも関わらずたくさんの人で賑わっていたので、近くにいる人に聞いてみるといつもこんな感じたと返ってくる。


大陸で一番を誇る商人ギルドだけあって、内部は結構広い印象を持った。


「ギルドマスターのハワードに取り次いでほしい」


受付カウンターに座っていた気の弱そうな男性職員に声をかけると、一瞬驚きの表情で返される。相談したいことがあって来たと述べると、職務中のため話は通しておきますが会えるかわかりませんと返されたので、パーティ・エクラのケイが来たと伝えてほしいといい、男性職員は不審な表情でそれを了承し二階へと上がっていた。


ほどなくして男性職員が戻ってくると、信じられないといった表情でケイ達を二階の応接室へと案内した。


その途中で男性職員からギルドマスターは基本取り次ぎには応じない主義で、話を通した途端に筆を置き、意気揚々と準備を始めたようだと聞かされた。

秘書のヴィアンネも普段なら絶対にみせないようなあきれ顔でハワードを静観していたので、自分は長い間働いているがあんな二人の表情を初めて見ましたと狐につままれたような表情をしていたので、どんだけ期待していたのだろうかとケイ達は苦笑いを浮かべた。



職員に通された応接室で待っていると、部屋の外から慌てたような荒い足音が聞こえてきた。そして扉を開ける前に慌てた拍子にどこかにぶつけたような音がした後にゆっくりと開かれる。


「みなさん、ようこそお越しくださいました!」


大の大人がプレゼントを楽しみにしていた子供の様な笑みを浮かべて、ハワードがケイ達それぞれに握手をかわすと、最後にブルノワと少佐を撫でて可愛がる。

その間後ろに控えていた秘書のヴィアンネは、何かを言いたそうに呆れた表情をハワードに向けているが彼は一切気づかない。


ようやく満足したのかハワードがゆっくりとソファーに腰を下ろすと、用意された紅茶に口をつけた。


「やはり来てくれると思ってましたよ!」

「忙しいのに悪いな」

「いえ、バザーの件もありましたし問題ありません!むしろ私たちを頼ってくださるということは大変光栄なことです」


職務中にも関わらず笑顔で迎えてくれたハワード達に相談したいことがあると述べた後で、ケイはとあることを二人に伝える。


「結論から言うと家がほしい。要望は部屋数が多い二階建てに風呂かシャワーがついてて広めの庭がある家だ。場所はアルバラントかアーベンを中心に活動しているからその辺りで空いてれば買い取りたい。予算は白金貨一枚で」


一呼吸でハワードに伝えると、目を丸くした二人を他所に隣で聞いていたシンシアがため息をついてからこう述べる。


「ケイ、王都は物価が他よりも高いからさすがに無理じゃない?第一、ダナンだって安くて70万くらいするのよ?そんなのある「ありますよ!」あるの!?」


被せるように答えたハワードにシンシアが驚愕の表情を向ける。


通常アルバラントは他の都市や街より何割か高い。

建物だけでなく食品や日用品も他より一~二割ほど値が高いようで、やはり大陸の中心というだけあって質のいいモノが多く入るため高くなってしまうそうだ。

しかしハワードはその条件に当てはまる物件があるといい、ヴィアンネから資料を受け取るとここはどうかとケイ達の方にその資料を提示した。


「その条件だと一件だけ該当するね。アルバラントの上流地区と住宅地区の境にある屋敷だよ。築年数は三十年程度で二階建ての庭付きで、一階にキッチンと二十人が一度に座れるテーブルと椅子付きのダイニングルームに応接室とフリールーム。二階は個室が12部屋あるよ。もちろん各階に一つずつトイレとシャワー付きのお風呂完備で価格は80万ダリでどうですか?」


こちらを伺うように提示してきたハワードに随分安いんだなとケイが口を開く。


参考までにアルバラントの物価を聞いてみたところ、上流地区は安くても120万ほどで住宅地区の方は全て借家となる。


しかしこの屋敷は上流地区寄りの境に建っているにも関わらず、商業地区に行くにもわりと便がよく、大通りから一本入ったところだというのに安いということは家を買った経験のないケイでもわかる。


「大通りから一本外れただけなのにこんなに安いってなんでだ?」

「実際に行ってもらうとわかるんだけど、屋敷の前にある道路は一般の道路と違って少し狭いんだ。他の道路は馬車がすれ違えるほどの広さなんだけど、ここだけは馬車が通れないから人気がないんだ」


どうやら以前購入した貴族の夫婦が屋敷前の道幅に不便を抱き、数回しか使っていないにも関わらず家具もろとも売りに出したそうだ。馬車は貴族の足であるため、道幅が狭いとなると人を呼ぶ時に不便を感じるらしい。


正直ケイ達冒険者はあまり関係ないのだが、即決する前に一度見てみようと言うことで二人の案内でその屋敷に向かうことになった。



『わーい!おにわひろーい!!』

『バウ!』『ワウ!』『ガウ!』


レンガ調の囲いが続く道を歩き、目的の屋敷に足を踏み入れると景色が一変する。


海外の庭園のような広い庭にレンガで表現されたカントリー調の屋敷を前に、まるで海外の大豪邸のような金持ちになったような気分に浸れる。

庭の方は手入れをしていないため雑草が生えていたが、そのなかを元気いっぱいにブルノワと少佐が駆け回る。庭の端には蛇口付きの水道がついており、水を出すことができるらしい。近くに花壇があるのでそれようについているのではと考える。


「一階は正面がダイニングルームに右が応接室、左がフリールームになってて、二階は東と西にそれぞれ六部屋ずつに分かれているよ。来客用のゲストルームとしても使えるから幅が広がるんじゃないかな?家具は前の住人が置いて行ったままだから不要なら売るなり新しく購入したりはお好みで。必要があれば私たちに言ってくれたら手配をするから」


一通り屋敷内を回ってみた後、他の五人も概ね好感触だったためケイはその場でこの屋敷の購入を決意した。ハワードからは、今後足りない物も出てくるかもしれないから、その時は商業地区の家具専門店か商人ギルド御用達の店を紹介するから言ってくれと伝えられる。


その後手続きを終え、ハワードから屋敷の鍵を受け取ったケイ達は二人を見送ってから各々部屋割りを決めたりあっという間にその日が過ぎていった。



後日アーベンに戻り、家が決まったからと宿を引き払うことを女将のマリーに伝えるとドルマンと一緒に寂しくなるねと言葉を送られた。思えば。ダジュールに来てから一番お世話になっている宿屋だけあって少し寂しい気もしたが、ちょくちょく遊びに来るよと伝えておいた。

ちなみにアダムの借家は引き払おうと思ったが、家には以前ケイが創造したこたつが置かれているため、また使うこともあるからとそのままにしておいた。



後日、屋敷のエントランスの一角にアダムの借家のリビングと直結出来るように転送ゲートを繋いだところ、家主であるアダムが頭を抱えたのは別の話である。

アルバラントに拠点を移したケイ達は心機一転新たな生活を始めます。

もちろん今後もアーベンも利用します!忘れないで!


次回の更新は2月28日(金)夜です。

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