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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
141/359

136、小さな冒険者

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回のお話は、ブルノワと少佐による小さな冒険者のお話です。

「ところで、この子達はケイの従魔なのか?」


翌朝、キャラバンで提供されている朝食を取っている途中でルラキが疑問の表情でケイに尋ねてきた。


もちろんいつも通りケイの膝の上はブルノワが、足元には料理を咀嚼している少佐の姿がある。数日前にエルゼリス学園の報酬で貰った獣魔の卵が孵化したと答えると、まさかといった表情をブルノワと少佐に向けている。

従魔の卵の事は噂で知っていたようで、あれが孵化するとは夢にも思わなかったと口にする。まぁ、必要魔力量が尋常じゃないのでそう思われても仕方がない。



そんな会話を交わしながら朝食をとった後、ケイ達はエメラルド鉱石を探すため、さっそくその足でキャラバンから北にあるマデーラの洞窟に足を運んだ。


マデーラ洞窟は、岩山にぽっかりと口を開けているような一般的なものだった。


この洞窟は山の麓に位置しており、ここから少し東に向かえばバナハを繋ぐ渓谷が存在する。そんな場所にあるにも関わらず意外と人気や人通りもあるそうで、ルラキの話では洞窟内に天然の湖が存在し観光の穴場でもあると語る。また宝石が採掘されることから、採掘師が売買するためにキャラバンも存在するということも相まっているようだ。

洞窟にはもちろん魔物が存在するが、スライムやコウモリ系のバットといった初心者でも対応出来るような魔物だということから、こちらからアクションを起こさなければ害はないらしい。


洞窟に入る前にブルノワと少佐には、中に入ったら大人しくすることと魔物には近づかないことを約束させてから中へと入る。


「洞窟って複雑な構造をしているものかと思ったが、そうでもないんだな」

「マデーラの洞窟は自然にできた場所だから、奥にある湖まで基本一本道だから迷うことはないと思う」


洞窟の奥まではおよそ200mほどで、途中で何人かの採掘師やここでしか生えていない茸や素材を取りに来ている人とすれ違う。たまに観光で訪れる人もいるそうなのだが中の様子を見る限り今日はいないようだ。


「スゲぇな!」


奥地に到着をすると、コバルトグリーンのような湖と長い年月を経て形成された天井が高い場所へと辿り着く。湖は大体20m程の広さに深さは大体10m程あるが、残念ながら魚などの生物はいない。ブルノワと少佐が興味深そうに湖の反射で映る自分の顔を覗き見ているところをケイが危ないからと小脇に抱え、安全なところに降ろしてやる。


「ルラキ、エメラルド鉱石ってこれのことかい?」


レイブンが岩肌の一角を指さした。

よく見ると壁の中から鉱石のような緑色のついた部分が見える。

ルラキからこの辺の土は軟らかいので、小さい鉱石はツルハシよりスコップで掘れば傷つかなくて済むと教えられた。彼から予め用意したであろうスコップで鉱石の周りを少し掘ると、ボロッと鉱石が壁から落ちる。

また、ここではエメラルド以外にもルビーやサファイアやダイヤなどの鉱石も発掘できるため、採掘師はキャラバンに鉱石を売って生計などを立てているそうだ。



「ところでケイさん」

「どうした、タレナ?」

「先ほどからブルノワと少佐の姿が見えないのですが・・・?」


少し経った後、タレナがケイにこんなことを尋ねた。


先ほど湖を見ようとしていたため落ちたら危ないと場所を移したのだが、退屈そうにしていたのでブルノワにケイが創造した水色のポシェットを肩から下げさせ、エメラルド鉱石を彼らに見せながら同じ物を取ってきてほしいと話すと頷く素振りを見せ、スコップを片手に土を掘っているところまでは見ている。ケイはてっきりその辺で休んでいるんじゃないかと岩陰を覗いてみるが、どこを見ても姿が見当たらない。


「なぁ、だれかブルノワと少佐がどっか行ったか知らねぇか?」


近くで作業をしていた他の仲間に声をかけるが、全員が首を横に振る。

ルラキもケイ達の行動に気づいたのか作業の手を止め、ブルノワと少佐を探そうと洞窟内を探して回ることにした。



『ここどこぉ~?パパ~?』


不安そうな表情でブルノワが辺りを見回しながらこう呟いた。

傍らには少佐が寄り添うように立っており、辺りに危険がないかと警戒している。


実はケイに言われてエメラルド鉱石を探していたのだが、途中で疲れたのか丁度いい高さの岩場に腰をかけた瞬間に何かの拍子で後ろにひっくり返ったのだ。

その時、側にいた少佐が慌てて支えに入ろうと服を噛んだが、ブルノワの重さに耐えられずに岩場の後ろにあった小さな穴に揃って落ちてしまった。


位置的には地下にあたるのだが、そんなことを知るよしもない彼らは暗闇の中にぽつんと佇んでいる。


『パ、パパ~・・・』


見慣れぬ土地にいいしれぬ不安に襲われたブルノワは、目に涙を浮かべながらどうしようと口ずさみ、少佐が心配するなとそれを舐めて拭う。


ケイ達のところに戻るにもそこには一本道しかなく、見上げると先ほどの穴が頭上の高いところに開いているのが見える。高さ的にも幼い体格が相まって登ることが出来ず、本能的に上から落ちたのは理解したがここに留まっても意味がないと悟ると、上に上がるための道を探すために少佐と一緒に道なりに進むことにした。


光がない暗闇の中を彼らは道に沿って歩いて行く。

普通ならたいまつがなければ進むことが出来ないが、彼らには唯一の救いである魔物特有の暗視があるため、昼間のようにまわりの景色が見えている。



道の先には広い空間が広がっていた。


見たこともない巨大な石像や何かが入っていたとおぼしき箱のような物が存在している。初めて見る光景にブルノワと少佐は互いに顔を見合わせ首を傾げた。


まず彼らが向かったのは五つの巨大な石像だった。


小柄な彼らでは、足元から目線を上に向けても何かの顔の一部とおぼしき鼻の穴の形を模したものまでしか見えない。昼間のようにそれらは見えているのだが、いかんせん幼い彼らには理解ができない。石像はブルノワの目には同じようにしか見えないのか、興味がなくなったようで少佐に連れられて次の場所へ向かう。


次に二人が興味を持ったのは、何かが入っているような重厚な長い箱だった。


形状から察すると棺の様なもので、それがその場に三つある。

棺はどれもが開いているようで、蓋が傍らに落ちたり棺からずれた形で存在している。ブルノワはその中身を見ようと棺に手をかけるが、ショーンがそれは駄目だと制する。ショーンの行動に素直に応じたブルノワは、少佐に引かれるようにその場を後にした。


『・・・?』


上に続く道を探すため彼らが辺りを歩いていると、急にブルノワが立ち止まった。


どうやら左側の奥の方に何かがあるようで足を止めたようだ。

ブルノワが目を凝らしてそちらに注目すると、何かがいるようでそれに気づかれないようにゆっくりとした足取りでそちらに歩み寄ろうとする。少佐は危険だと思いつつも同じように興味を持ったのか、傍らに寄り添うように警戒しながら同じように近づく。


彼らが近づくと見たこともない金属の塊のようなものが鎮座していた。


本能的に眠っているのか動いていないと判断できるが、ブルノワはその辺にあった小石を手に取るとそれに向かってポンと投げた。

小石は空を舞い金属のそれに当たると、金属音が発する独特の高音が辺りに響き渡る。しかし金属のそれは、生体反応がないのか動く素振りを見せることはない。

ブルノワは目線を上に向けると、金属のそれの上にもう一つだいぶ小さめな金属の塊のようなものが見えた。小さな金属の塊には、生物の目をした黒い双眼がブルノワと少佐を見下ろしている。それはあくまでも気のせいなのだが、暗闇という特殊な環境なのか彼らの恐怖を煽る形となっている。


ブルノワは一瞬身を振るわせた後で少佐を連れて来た道を戻って行った。


『しょーさ、まって!』


来た道を戻ったブルノワが突然何かに気づいて声を上げた。


彼女がそちらに駆け出した先は、土がついている岩肌の壁だった。

よく見ると緑色の鉱石の様なものが見える。ブルノワはケイから「エメラルド鉱石を見つけるんだ」という言葉と同時に鉱石を見せられたことを覚えていた。

幸いにも周りには柔らかい土しかなく、ブルノワが手に持っているスコップで少しだけ掘るとボロッと数個地面に転がり落ちた。


『パパにあげるのぉ~』


ブルノワは土がついた鉱石を拾い上げ、手で軽く払って落としてからケイから貰った水色のポシェットに転がり落ちた分を収めた。しかし上に続く道が見つからず、突然恐怖と不安が襲ってくる。このままパパやみんなに会えないのではないかと、泣きそうな目に力を入れて涙を出さないようにする。


『バウ!』


そんなブルノワの耳にサウガの鳴き声が届く。

どうやら他にも道があるようで、少佐が顔を向けている姿が見える。

ブルノワは右手でポシェットの紐を握りしめ、左手にスコップを持ったままそちらに向かう。そしてわずかだが、風の通りを感じる事ができた。道の途中から上り坂が見えたため、ブルノワはケイに会えると期待を込めて少佐と上り坂を一生懸命上り始めた。



時を同じくしてケイ達はいなくなったブルノワと少佐を探すため、洞窟内をあちこちと探し回っていた。


「アレグロ!そっちはどうだ!?」

「ダメ見つからないわ!」


てっきり岩陰で寝ていると思って隅々まで探してみるが見当たらず、だれかに連れて行かれたのかと思ったがそもそも周りにはケイ達しかいない。


「ケイ、外にいる採掘師に聞いたが出て行く姿は見てないそうだ」


ルラキからは、洞窟の外で休憩をしていた採掘師達に聞いたが見ていないことを伝えられる。となると、ブルノワと少佐は洞窟の内部にいることは確定している。


「ケイ!ちょっと来て!」


左奥からシンシアの声が聞こえた。

そちらに向かってみると、採取した小ぶりのエメラルド鉱石が散乱している。


「これは、さっきブルノワが取っていたものじゃないかな?」


レイブンが鉱石を拾い上げてそう口にした。

彼はブルノワと少佐がいなくなる直前まで隣で鉱石を探していたのだ。

しかしそこから何処へ行ったのだろうか?一瞬湖に落ちたのかと思ったが、それなら誰かが気づくはずである。シンシアが岩場の後ろを指さしたので、そこを覗いてみると小さな穴が見える。子供一人ならゆうに通れる程の大きさだ。


「もしかしてここから落ちたんじゃ・・・」


アダムの言葉で、ここに腰をかけた時に何かの拍子で後ろにひっくり返りそのまま少佐と落ちていったのではと考える。

ケイはマップとサーチを使って、ブルノワと少佐の居場所を特定することにした。

サーチを使うと、案の定この真下から移動している反応をみせる。


「ルラキ、この洞窟は地下なんてあるのか?」

「地下?いや。そもそも聞いたことがない。でも仮に地下があるとしたら、調査隊を編成しないといけないな」


マライダでもこのようなことは今までなかったと話す。そうなると地下遺跡の様な場所がここにも残っている可能性がある。しかし、地下に続く道らしき道も存在していない。ケイはもしかしたら何か仕掛けのようなものがあるのではと考えた。



『ガウ!』



ケイ達の耳にヴァールの鳴き声が聞こえた。

右側から聞こえたのでその方向に振り向くと、少佐が尻尾を振ってこちらを見ている。次に岩の間からブルノワが懸命に通ろうとしている姿を見つける。

彼らは懸命に移動したのかブルノワの白いワンピースも酷く汚れ、少佐は頭に蜘蛛の巣に引っかかった跡がある。上から下まで土や埃まみれだ。


「ブルノワ!少佐!」


ブルノワはやっとの事で岩の間から通ると、ケイの声に反応してこちらを向いた。

ケイが屈んで両手を広げると、信じられないといった表情を浮かべる。

そしてそれが本物だと気がつき、持っていたスコップを地面に落としたと同時に駆け出した。



『パ、パパぁぁぁああああ!うわぁぁぁああああん!!!』



抱きついたブルノワは、緊張と不安から解放されたのか同時にこみ上げてきた涙を抑えることが出来ずに盛大に泣き声を上げ、ケイはブルノワが汚れていることなど関係なく思いっきり抱擁した。傍らには少佐が寄り添い、頭にかかっていた蜘蛛の巣を払ってやってから左手で盛大に頭を撫で回してやった。

ブルノワと少佐は無事にケイ達の元に戻ることが出来ました。

彼らが地下で見たものとは、一体なんだったのでしょうか?


次回の更新は2月19日(水)です。

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