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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
14/359

12、ギルドマスターと昇級と二人組

今回はギルドマスターとのお話。

翌日の昼下がりにケイとアダムは、シンシアとレイブンを連れて冒険者ギルドに行くことにした。


「ケイさん!アダムさん!」

受付にいたミーアが四人を出迎える。

「よかった。シンシアさんもレイブンさんも一緒だったんですね!」

「遅くなってすまない。状況を説明したいんだが・・・」

安堵の表情のミーアにアダムが口を挟む。

レッドボアをケイが倒したため、素材を売る前にで話をしておく必要があるとアダムは考えた。

「それでしたらギルドマスターがお待ちしてます」

「ギルドマスターが?」

「なんでもケイさんと話をしたいとか」

ミーアが目線をケイの方に向けたが、当の本人はあまり気が乗らない様子だった。

「仕方ない。ほら行くぞ」

アダムの一声で四人はミーアの案内で、二階のギルドマスターの部屋に向かった。



部屋に案内されると青い髪に髭を生やした中年の男が座っていた。

「お前がケイか。おれはオルガ、冒険者ギルドのギルドマスターをしてる」

オルガは四人に座るように合図をした。

「さっそく結論から言おう。ケイ、お前を俺の権限で『Cランク』の冒険者にすることにした」

「・・・はぁ?」

ケイにとっては寝耳に水である。


「なに?どういうこと?」

「まず、コカトリスだ。お前がアレを討伐したことは、他の奴らの証言とコカトリスの死体で証明できた」

「討伐なんてできるんじゃねぇの?」

「あれはCランクの強さだ」

ケイは知らずに討伐してしまったが、コカトリスはランクCのなかでも上位に当たる強さになる。

その理由として、エバ山の地形の悪さとコカトリスの素早さ・スキルの強さにも関係する。


ダジュールのスキルレベルは10段階まであり、

1~3が初級、4~6中級、7~9が上級、10が測定不能となる。

大体が強くても4~6の中級までで、上級はドラゴンと同レベルの威力となる。

10に関しては確認されていない。


「そのままEランクにしたままだと、俺の目に問題あると思われかねない」

「だからランクを上げた、と?」

「あぁ」

魔物を単独で討伐したと言うことは、少なからず実力があるということだ。

実力があるにも関わらずランクを上げないでおくと、他の冒険者がランクを上げることに躊躇してしまう可能性がある。

オルガはそれだけは避けたい一心で、今回ケイの実力を見据え昇格が決定したのである。


「それと、お前らがモスクの森に行った後にレッドボアの目撃情報も出た。遭遇せず戻ってきてくれてよかったよ」

「えっ!?倒しちゃったけど?」

安堵するオルガに爆弾発言をするケイ。


間を置いてオルガが叫ぶ。


「た、倒したって!レッドボアをか!?」

動揺の衝撃で、テーブルに置いてある紅茶入りのカップが零れた。

「えっ!ダメ!?」

「いやいや!冗談だろう!?」

何がダメなのと声を大にするケイと、輪を掛けて聞き返すオルガ。

見かねたアダムが大まかに説明をする。


「とにかく落ち着いてください」

側で聞いていたミーアがオルガを落ち着かせる。

「あぁすまない。で、証拠は?」

「これ」

ケイがアイテムボックスからレッドボアの腕をちらつかせた。

「お前、アイテムボックス持ちかよ・・・」


唖然とするオルガ。

いろいろと処理が追いつかないようだ。

今まで隣で聴いていたシンシアとレイブンも、同様の表情でそれを見ていた。


「なんにせよ昇格は決定だ。後でミーアに更新の手続きをして貰え。あと、レッドボアはうちで買い取るからブランドに渡せ。いいな?」



オルガの話が終わり、四人は一階の受付に戻ってきた。


「ケイさん、ギルドカードの提示をお願いします」

カードを提示すると、ミーアから更新に少し時間がかかると言われた。

「アダム、ブランドのところに行くけどどうする?」

「俺も行こう。二人は?」

アダムはシンシアとレイブンに尋ねる。

「もちろん行くわ。前に取った素材を売らなくちゃ!」

「俺も行こう」


カードの更新されるまでの間、ブランドのところに足を運んだ。


「ブランド!素材買い取って!」

○○君遊ぼ!ぐらいの感じで話しかけるケイに、裏に来いと笑うブランド。

シンシアとレイブンは、素材の量はそんなにないため、買い取りカウンターの前で手続きをしていた。


いつもの様にレッドボアを出すと、注意深くブランドが観察をする。

「これはレッドボアか・・・外傷が全くないぞ。どうやった?」

「拘束して転がして、上からどーん!」

その説明ではわかりかねるため、アダムが補足をする。

「コカトリスの時もそうだったが、ケイのやり方は異質だな」

「そぉ?」

「その一撃は尋常じゃない。その証拠に首が完全に折れておる」

亜種ともなると、全体の能力値は通常時の約二倍ほどの強さなるが、あの一撃でこの状態である。

本気になった場合は末恐ろしい状態になる可能性がある。


「素材はいつもの通り全部売るか?」

「肉だけくれ。ステーキにして食べたい」

欲望に忠実のケイ。

「肉の買い取り分をせんから、その分価格は落ちるぞ」

「別に構わない」

通常の冒険者なら、金銭的な関係で躊躇するものだが、ケイはそんなことはお構いなしにブランドに告げた。

「しかし羨ましい奴だ。ワシも是非食べてみたいもんじゃ」

「じゃあその分食うか?」

冗談交じりのブランドにケイが返す。

「・・・いいのか?」

「その分買い取るなら」

二人が顔を見合わせる。

「よかろう。その分を買取額の中に入れておく。また夕方来てくれ」


受付の方に戻ると、シンシアとレイブンが待っていた。

「やっと来たわね。話があるの、時間を頂戴」

ケイとアダムは、互いに顔を見合わせた。



四人はギルドから数メートル離れた店にやってきた。

そこは昼はレストラン、夜は酒場になる店である。

アーベンには、店らしい店があまりないため、食事兼酒場の店などが一般的になる。


会話を聴かれないよう、わざと奥の四人がけの席に移る。

ケイとアダム、向かいにシンシアとレイブンが座る。


「話ってなんだ?」


注文した飲み物や料理が運び終えてから、アダムが話を切り出した。

「私たちをパーティに加えてほしいの」

「理由はなんだ?」

「普通の生活がしたいから!」

シンシアは真剣な顔で話しをしはじめた。


「私はシンシア・ケフトノーズ。商業都市ダナンの領主、オレンド・ケフトノーズの娘よ」

「えっ?じゃあレイブンは?」

「俺はもともと冒険者だ。シンシアの父親から腕を買われて、彼女の護衛をしている」

アダムの問いにレイブンが答える。

「なんで領主の娘が冒険者やってんだ?」

ケイの疑問はもっともである。

危険が付きまとう職業にも関わらず、自ら足を踏み入れたシンシア。


「私は自分の力で生きていきたい。だからあえて冒険者になったの!」

正直、普通の生活=冒険者とは少し違う気もするが、彼女はそこまで追い詰められていたということなのだろう。


「領主の娘だからおしとやかにしろ!領主の娘だから愛想を振りまけ!領主の娘だから相手を見つけて早く結婚しろ!パパは私を人形かなにかだと勘違いしているの!」


彼女には5才上の兄がいる。

家を継ぐのは兄になるため、彼女自身はいずれ嫁ぐことになる。

それが苦痛でたまらなかった。

「まだ16よ!自由もない!なにもしないで生きていくなんてイヤ!」

「だから家を出たのか」

憤慨するシンシアにアダムが同調する。


「あと、あなた達に恩返ししてないし・・・」

シンシアはそう言うと照れくさそうにカップの紅茶を口にした。


「レイブンはどうするんだ?」

「俺はシンシアのしたいようにさせたい。だから彼女についていくだけだ」

レイブンにも思うところはあったらしく、彼女のしたいことを否定しなかった。


「ケイどうするんだ?」

「何が?」

運ばれてきた肉料理を食らうケイ。

「はぁ~だから二人をパーティに加えることだ」

アダムがケイの反応を伺う。


「・・・いいんじゃない?」

肉を飲み込んでからケイがそう答えた。


「意外だな」

「そぉ?」

「てっきり断ると思ってたよ」


「正直、人が増えようが、俺は俺のやりたいことをする。それだけだ」

ケイは果汁酒を口にした後そう答えた。

「じゃあ、決まりね」

「ケイ、アダム、よろしく頼む」



食事を終えた四人は店から出た後、再度ギルドへ向かった。


「じゃあブランドのとこに行ってくる」

「俺はその間に二人のパーティ登録をしてくるよ」

ケイとアダム達はそれぞれ分かれた。


「ブランド!出来てるか?」

「おう!できてるぞ!」

ケイがブランドのところに向かうと、カウンターの上に報酬袋と肉の入った袋が置かれる。

「報酬は35.000。そのうちの5.000は俺の買い取り分だ」

「うれしそうだな~」

「まさかレッドボアの肉が食えるなんて思わなかったからな。かみさんと仲良く食べることにするよ」

よほどうれしかったのか、ブランドはにかっと笑った。


「それはそうと、別途魔石の料金も追加報酬にプラスされる予定だ」

「魔石?」

魔石とは魔物の源になる石のことで、大型の魔物になればなるほど大きく高品質な石になる。


「あぁ。レッドボアの魔石はここじゃ買い取れねぇから、来週アルバラントで行われるオークションに出すことになった」

ブランドによると、レッドボアから30cm大の赤い魔石が取れたが、品質が非常によく値がつきづらいため、オークションにだすことになったそうだ。

「あの品質だと最低でも30万以上はするだろうな」

「そんなにか!?」

「普通は魔道具の材料になったりするんだが、王室や貴族の威厳保持のためにわざと手元に置いておくこともあるらしい」

上流階級のことはよくわからないが、所持をすることが一種のステータスということになるのだろうとケイは思った。

「まぁ、とにかくその分は決まったら連絡する」



ブランドと別れたケイは、受付にいるアダム達の元向かった。

「アダム終わったか?・・・てかどうした?」

「あ、ケイさん。お二人の登録は済んだのですが、パーティ名が設定されていなかったようなので・・・」

三人が悩んでいるところに、ミーアが話しかけた。

アダムとのパーティ登録の際、名前を未定にしていたため、それを今決めようとしていたのだ。


「何がいいのかしら?【シンシアと愉快な仲間達】?」

「アーディ(平凡)?」

「ラオブ(略奪)か?」

シンシア、レイブン、アダムの順にそれぞれ案を出す。

「お前ら考えてそれかよ!レイブンは置いとくとして、シンシアのは却下!アダムは物騒すぎる!」

「じゃあケイはなにがいいのよ!?」

案を一蹴するケイにシンシアが問う。


「【エクラ】」


エクラは【輝き】を意味する。


「まぁ!素敵ですね!」

ミーアが賛同した。

「ケイにしてはまともだな」

「アダム、お前ぶっとばすぞ!?」


こうして、シンシアとレイブンの加入とパーティ名が決定された。

シンシアとレイブンがパーティメンバーになりました。

また犠牲者が・・・(アダム談)


次回は4月16日(火)に投稿します。

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