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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
139/359

134、ブルノワと少佐

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、ブルノワと少佐(サウガ、ショーン、ヴァール)の謎に迫ってみようと思います。

臨時講師(笑)として、あの人が久々の登場します。

従魔登録が済んだケイ達が宿屋に戻ってきたのは、それから三時間後の事だった。


初めての経験づくしだったのか知らない間にケイにしがみついたまま眠ってしまった様子で、ブルノワとヴァールは同じように寝ながら首をガクガクとさせ、サウガは鼻ちょうちんでもでそうな勢いでいびきをかき始めている。唯一、ショーンだけは起きていたようでケイの状態に大丈夫なのかと心配のまなざしを送る。


戻って早々、マリーに話をする前に部屋で従魔を寝かせてやりたいと伝えると、肩車をしている完全熟睡のブルノワと同じく抱きかかえられている就寝中の少佐を見て、先に寝かせた方がいいみたいだねと彼女が苦笑いを浮かべる。


大変だろうからとレイブンとタレナが従魔達を引き受け、部屋の鍵をレイブンに手渡すと、二人はなるべく音を立てないようにと二階に上がっていった。


「マリー、宿屋における従魔ってどうなってるんだ?」

「中型以上だと裏手に専用の獣舎があるけど、見たところあの子達はまだ子供だし部屋を汚さなければ一緒の部屋でも構わないよ」


部屋の広さの関係で、中型以上は裏手にある獣舎に入れるきまりになっている。

そういえば、空き地の端の方にそれらしきものを見かけたことがある。

値段も宿代に従魔一体あたりに一日300ダリが上乗せされるのだが、ケイの獣魔の場合、少佐はどうなるのかと考える。

ご存じの通り、外見的に一頭に見えるのだが、正確には頭が三つあるため三頭と数えられるためかなりややこしい。しかも、ブルノワを含めたら二日分の宿代が一日分とかなりお高くなってしまう。別にお金に困っているということではないが、ダメ元でマリーに事情を説明すると、獣魔の卵が孵化してから今までの行動を見てきたため、ケイ達がギルドに行っている間に夫のドルマンと話し合った結果、いつも利用してくれるということで一日600ダリと二頭分の料金で構わないということで話が収まった。ありがたいお言葉に従魔分の料金を二人に手渡す。


マリーとドルマンさまさまである。



夕食まで少し時間があるため、一度部屋に戻り荷物やらなんやらを整理した後でふとあることを思いつきアレグロのところに足を運んだ。


「アレグロ、ちょっと頼みたいことがある」


彼女がいる部屋の扉を叩くと顔を出したアレグロが何事かと聞いてきたため、ケイは使い魔でこれをある人に渡すことはできるかと尋ねる。アレグロが受け取ったものは雑貨屋などで売っている一般の手紙だった。羊皮紙を一般市民でも使いやすく改良した物で個人宛に送る時に重宝される。そしてケイがその人物の名を口にすると、手紙の内容をある程度察したのか任せておいてと快く承諾した。



「こいつら見事に好みがバラけたな」


いつも通り夕食時に仲間達とテーブルを囲んで食事を取る。

ブルノワはケイの膝に座り、少佐はケイの足元で個別にお皿に盛り付けられた料理を堪能している。しかし面白いことに全員好みが違うのだ。


まずブルノワは野菜を中心として食している。魚と果物はある程度食べるのだが、肉はあまり好まないのか鶏肉を少しだけ口にしただけである。

理由を聞いてみると、牛は硬くて顎が疲れるし、豚は脂身が嫌いなのか美味しくないとその場で吐き出す。予めサイコロ程度に切り分けたが、もういらないと鳥以外には目もくれなくなってしまった。はっきりいって共食いなのだが、本人は気にしないようだ。


次にサウガ、ショーン、ヴァールの三頭も好みが分かれる。


サウガは魚全般が好きらしく、特に青ものが好きで生まれたばかりなのに年季の入った落ち着いた大人の風格が出ている気がしなくもない。逆に肉は苦手なようで、牛以外には興味がないのか鼻先で皿の端に寄せている姿が見られる。


ショーンは果物全般が好きらしい。

果物を食べた後に野菜を少し口にしたが、すぐに食べることをやめてしまった。

具合でも悪いのかと聞くと、他の二頭と違って食べ物に敏感なのか自分が食べると体が重くなるようで、少量しか口にしなくても大丈夫だと意思をみせる。

ケイは少し気にはなっていたが、すでに相談する相手に文を送ったのでその時に相談してみるかと思いに至る。


ヴァールは見た目のまま、肉全般が大好きなのが一目瞭然だった。

好き嫌いは特にないようで、魚や野菜や果物など他の料理もまんべんなく食すが、やはり基本は肉!ということらしい。三頭の中では一番やんちゃなのでそういった部分もあるのだろう。


もう一つ、少佐は互いの取り分を巡って争うなどという行動を一切見せない。


従魔であっても元は魔物である。

生存競争が厳しい野生では取り合うなどは当たり前、弱肉強食がものをいう世界である。大食感のヴァールでさえ食べ終わってもショーンの分を取らずにおかわりと催促をする。


「少佐は互いに食べ物を取り合ったりしないのね?」


ケイの左隣に座っていたアレグロが、不思議そうに少佐の様子を眺めていた。

その言葉に向かいに座っていたアダムとレイブンとタレナも少し椅子から立ち上がり少佐の様子を眺めている。


「特別なことは教えてないんだけどな」


少佐は覚えが早いのか、一度言ったことはきちんと守るようだ。

トイレも犬用のトイレを創造し、部屋の片隅に置いてからここでするようにと教えるとすぐに覚えた。他にはお手・おかわり・お座り・伏せ・待て・ゴロンなど、犬がする芸当をとりあえず教えてみたがそれもあっという間覚えてしまった。


そう考えると、サーベラスは元から頭がいいのだろう。



「ケイ様、返事が来たわよ!」


翌日の朝、とある人物に手紙を出した件に進展があった。

朝食をとっているケイ達の元に、返事の手紙を手にアレグロが二階から下りてくるとそれをケイに手渡した。


「あいつ、今アルバラントにいるんだ~」

「じゃあ彼には会えるってこと?」

「あぁ。今日の昼過ぎにこっちに来るみたいだ」


ケイはアレグロ経由で了解の手紙を送る手配をした。

そんなやりとりを不思議そうに見ていた四人は、誰とコンタクトを取っているのかと尋ねてきた。


「二人共、誰に手紙を送っているんだ?」

「ダニエルに従魔のことについて聞いてみようと思ってな。あいつちょうどアルバラントに用があったみたいで、こっちには昼過ぎに来るって書いてあった」


ケイが連絡をとった人物は、バナハにいる調教師のダニエル・ケンバーだった。


魔物を専門に扱う彼ならば獣魔の卵関連のことを知っているのではと考え、簡単な事情を添えて送ったところ実際に話を聞こうという運びになった。

本来であればこちらから出向こうと思っていたが、調査の一環でアルバラントに赴いているため向こうからアーベンに向かうという旨が綴られている。



「みなさん、お久しぶりです」


その日の正午を過ぎた頃、ダニエルがグリフォンに跨がった状態で飛行してくるところが見えた。連れているグリフォンは訓練中のようで実地訓練もかねての行動のため、よく躾ているのか彼の前では一切の無駄な動きがない。


「忙しいのに悪いな」

「いえ。以前皆さんにもお世話になったのでそのお礼だと思ってください」


到着してすぐということでダニエルを落ち着かせるため、一同は宿屋に向かうことにした。


宿屋の裏手の空き地にグリフォンが腰を下ろす。

ブルノワと少佐は、初めて見る生物に興味心身の様子で匂いを嗅いだり触ったりしている。触られたグリフォンは気にもしていないのか、常に周りを警戒する様子を見せている。ダニエルによると、どんな状況でも自分より弱い者を外敵から守るために行う行動のようだ。


その様子を少し離れたところでケイ達が見守っている。


マリーに頼んでテラス用のテーブルと椅子を用意して貰い、タレナとアレグロが人数分の紅茶を運び、各々に紅茶を入れて手渡す。


「ダニエルの噂は最近聞いてる、いろいろと忙しいみたいだな」

「おかげさまであの後からグリフォン達も言うことを聞いてくれるようになりまして、調査で訪れたデンリール山にいる野生のグリフォンとワイバーンの抗争も治まりました」


あの後ダニエルは『魔獣調教師』として忙しい毎日を送っている。


グリフォン隊のグリフォンを指導している一方、以前から力を入れている野外活動も順調のようで、最近では長年の悩みであったデンリール山のグリフォンとワイバーンの抗争も治めることに成功したのだそうだ。

しかも野生のグリフォンとワイバーンは、なぜかダニエルの指示に従っているという規格外な能力を発揮し、周辺の地域巡回の役に立っているらしい。


「手紙にあったのはあの子達ですか?」


グリフォンと戯れているブルノワと少佐に目線を移す。

ケイは獣魔の卵の入手経緯から説明し現在の状況をダニエルに伝えると、彼は希少種族のためか一挙一動を確認するように眺めている。


「で、獣魔の卵について知っていたら教えてほしいんだけど?」

「やっぱり気になりますよね。そもそも獣魔の卵はただの卵じゃないんです」

「ん?どういうこと?」

「獣魔の卵は、一般的に孵化させるための必要魔力量が異常に多い卵ということで伝えられていますが、本当は過去に人体実験を行った際に残された【キメラの卵】ではないかと考えられています」


今から五百年前、当時のバナハは世界大戦に向けて魔物による人体実験が行われていたようだ。


地下に巨大な実験施設を設け、軍の運用のために魔物の卵を使いより強い魔物を生み出すことで強固な軍にしようとしたのだろう。

聞くところによると、数少ない当時の文献には獣魔の卵と特徴が似ている部分があるようで、世界大戦後は平和協定結ぶ条件として地下の施設を破棄するという流れになり、いつしか獣魔の卵の存在自体が忘れ去られた。


時は少し進んでその二百年後の魔王誕生の時代、魔王討伐軍がバナハで魔王を討った後、周辺の調査を行った際に地下の実験施設の跡地から獣魔の卵が発見された。

当初は魔王の生まれ変わりなのではないかと危惧していたが、大賢者エルゼリスが自身の魔力を使い卵の存在危機の有無を調べたところ、必要魔力が多いだけでほとんど手をつけられていないことを確認し、のちにエルゼリス学園に監視として安置されたそうだ。


「じゃあ、ブルノワと少佐は兵器のために造られた存在ってことか?」

「可能性は捨てきれませんが、ケイさん達の話と文献を照らし合わせると類似している部分もあるというだけなので、あくまでもかもしれないというだけです」


しかし、実験で造られた卵を報酬として冒険者に渡すものなのかと首を傾げる。

その部分はダニエルも過去の話なので、そのことを知らない人の方がほとんどなのではということ。


「そういや、魔物の卵って孵化させるのに魔力がいるのか?」

「獣魔の卵とは違い、普通の卵はそんなに魔力を必要としません。そもそも卵の殻から空気中の魔素を体内に取り込み自然に孵化をさせるやり方が一般的です。まれにその機能が十分でない個体もいますが、その場合のみわずかに魔力を流すだけで自然に孵化に進みます」


獣魔の卵は元は魔物の卵であっても実験によりイコールではなくなっているので、別物と考えた方がいいとダニエルが語る。そうなると、人体実験のために魔物の卵を変化させようとするその技術は当時は高かったのだろう。ケイは遠い昔に存在していた技術に少し興味を抱いていた。


「じゃあ、一個の獣魔の卵から違う二種族の子供が産まれるものなの?」

「それに関しましては、文献にはそのような記述がありませんでしたし確証はありませんが、もしかしたらその時にはすでにそういった技術が完成されつつあったのかもしれません。過去の文献にはケルベロスを誕生させた記述がありましたので、我々の知らない魔物も形成されていたことも否定はできません」


ダニエルがシンシアの問いに答えると、ケイ達はまさかと互いの顔を見合わせた。


「それともう一つ、可能性としてあげられることがあります」

「なんだ?」

「あくまでも推測ですが、ケイさんの魔力にも関係していると考えています」

「はぁ?俺の??」


ダニエルは頷いてから、大量の魔力を注いだことにより獣魔の卵の中身が変化したのではと話す。


魔物の中には特定の条件で進化するものもいるそうで、獣魔の卵も同じ原理で元はセイレーンとケルベロスが形成されていたと仮定すると、ケイの魔力が注がれたことにより変化したのではと推測。そうなると、エルゼリス学園のトップはそれを見越して報奨としてこの卵を送ったのだろうかと考えてみるが「まさかな」とケイが頭を振り考えを取り消した。


「それと俺からもう一つ聞きたいことがあるんだが、サウガとショーンとヴァールは体が一つなんだけど、食事の時に食べる量が個々に違っていたんだ。これってなにか関係があるのか?」

「あぁ、サーベラスのことですね。恐らく体格的な問題かと、魔物は他の動物と違って捕食したものを魔力に変換する性質があります。それにサーベラスは生まれて数日しか経っていないので、まだうまく消化からの魔力変換ができるようにはなっていないだけかと。さきほどケイさんがおっしゃったように、個々に人格も備わっているようなのでそれも関係してくるのではないのでしょうか」


どうやら赤ん坊のため消化能力に違いが出ているようで、病気や体調不良ではなく成長につれてちゃんと消化できるようになるそうだ。



先ほどまで騒がしかったブルノワと少佐の方を見ると、遊び疲れたのかグリフォンに寄りかかり眠っている姿が見えた。グリフォンは相変わらず周囲を警戒しているが、起こさないようにと注意を向けている部分が見られる。


生まれてから二日しか経っていないので無理はない。

ケイはダニエルに断りを入れてからそっとブルノワと少佐に近づき、子守をしてくれたグリフォンに礼をいってから、彼らを起こさないように抱きかかえ寝かせるために一度部屋に連れていった。

ダニエルの話にケイ達は新しい発見をします。

あくまでも仮定ですが、ブルノワと少佐はそんな理由で造られたのかもしれません。

今はケイの従魔ですけどね。


次回の更新は2月14日(金)です。

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