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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
137/359

132、ケイと従魔

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回の話は、孵化した魔物を従魔にするお話です。

なお、登場人物の項目を更新しました。

「卵から人って生まれるのか?」


金色のヴェーブがかった髪をした少女を目の当たりにしたケイが疑問を浮かべる。


人ってほ乳類だよななどと考えるが、紛れもなく目の前の少女とおぼしき幼子は獣魔の卵から生まれている。そして傍らには寄り添うように何かの動物と思われる黒い物体が存在している。


どうやら二体(頭?)共眠っているようで、身体を上下させているところが見えた。


「ケイ、女の子の方は背中に羽根の様なものがついているよ」

「ん?あ、ほんとだ」


レイブンが示した箇所を見ると、横向きに眠っている少女の背中には小さいながらも白い羽根が生えている。一瞬天使かと思ったが、頭の上に輪っかがないところをみると違うようだ。


そんなことを考えていると、黒い動物がモゾモゾと動き出す。眠りから覚めたようで、一瞬体を振るわせた後に起き上がる素振りを見せる。


「おまえ結構毛が柔らかいんだな」


黒い動物に触れると子犬のような毛並みの柔らかさを感じ、実家で飼っていた黒柴を思い出す。体を抱き寄せて持ち上げてみると、はじめに赤と青と黄のグラデーションがかった鮮やかな色の手足が目についた。毛並みの多い尻尾は根元から半分が黒で、そこから毛先に向かってグラデーションのように青黄赤の順番で色がついている。


「おまえオスか~」


体の下に目を移すと性別がオスだと判明する。

どうやら大人しい動物のようで、手足を触っても嫌がる素振りを見せない。


「ケ、ケイ?」


後ろにいるシンシアに声をかけられ振り向いた。


すると、彼女をはじめ他の四人も何故か口をパクパクとさせながら、何かを言わんとする表情を見せる。ケイがなんだと返すと続けてシンシアが「あ、頭をみて」と言ってくる。心なしか顔色が青いのは気のせいだろうかと不審に思いながらも、何気なく黒い動物の方に顔を向けた。


「・・・・・・はぁ?」


さすがのケイも、この光景には驚きの声を上げるしかなかった。


体一つに頭部が三つ、目と耳はそれぞれに二つずつついており、まるで顔は犬そのもの。それらはケイの方を興味深そうなまなざしで見つめている。その異様な光景に一瞬ケイが硬直すると、なぜかそれらはケイの顔を一斉に舐め始めた。


「ち、ちょ!おま!す、ストップ!ストップ!!」


ケイの制止にそれらは一斉に動きを止めると、案の定三つ分の頭部に舐められたケイの顔はヨダレまみれと悲惨な状態になる。見かねたタレナがタオルを手渡し、一度動物を地面に置いてから顔を拭いた。


「なんだこりゃ!?珍獣か!??」

「体がひとつに頭が三つ?見たことがない魔物だけど、これはなんだろうか?」


さすがのレイブンも見たこともない魔物に首を傾げる。

その間にも犬のような黒い動物はお座り状態のまま、まだかまだかと舌を出しながら指示を待っている。こうみると見た目がちょっと変わった犬そのものである。


一見おとぎ話に出てくるケルベロスを想像してみたが、それに近いのだろうと考えたケイが試しにその動物に鑑定をかけてみることにした。



サーベラス 名前:(未設定)

年齢 0才

性別 オス

スキル かみつき ひっかき

黒の咆哮  闇属性魔法を含んだ咆哮。恐怖と混乱を対象者全てに与える。

クロマノマ 闇属性魔法の一つで、中心から半径1.5~2kmを消失させる。

隔離排除  対象者または対象物を完全遮断・隔離したのちに破壊する。


地獄の番犬ケルベロスの亜種と呼ばれており、闇属性以外にも複数の属性を扱うことができ、能力値は現段階では未知数である。

闇属性以外の対応する属性は以下の通り。

頭(正面)・火属性魔法全般 頭(右)・雷属性魔法全般 頭(左)・水属性魔法全般



この鑑定結果にはさすがのケイも、生まれつき凶悪なスキルしかないんだけどと顔を引きつらせる。


しかも面白いことに三つの頭部はそれぞれ別々の人格があるようで、左の青色の垂れ目っぽい頭部は起きたばかりなのか、まだ少し眠そうな表情をしており、真ん中の赤い目をした頭部は指示を待っているのか一心にケイを見つめている。そして右の黄色いつり目寄りの頭部は、好奇心旺盛なのか地面に生えている草の匂いを嗅いだ後にかじろうとしたため、ケイが手で制止させるがその手すらも舐め回す。


「お前達、俺の言葉がわかるなら返事をしろ」

『バウ!』『ワウ!』『ガウ!』(はい!)


ケイの言葉に三つの頭がこちらを向いて吠える。

サーベラスはこちらの言葉がわかるようで、それぞれから鳴き声が同時に聞こえてくる。ケイは話を聞く体勢をとるようにとお座りを命じると、サーベラスはサッと芝生の上で座る姿勢を取る。


「ケイの言葉がわかるのね」

「敵意はないようですし、従魔契約などが可能かも知れません」


シンシアが興味深そうに眺めると、隣にいたタレナからこう提案される。


魔物の中には主として認めた人物についていく行動もするようで、従魔契約をすれば正式にケイのものになるようだ。やり方はどうしたらいいのかと聞くと名前をつければいいということなので、少し考えてから左からサウガ、ショーン、ヴァールと名付けた。


【サーベラスのサウガ、ショーン、ヴァールが従魔に加わりました】


従魔契約が完了したため鑑定結果に表示される。

どうやら体は一つでも三頭共違った人格を持っているため一頭ずつカウントされるようだ。そうなると、遠くにいた場合に呼びたい時はどうなるんだろうと考える。


ケイが「総称で呼ぶのってありか?」とボソッと呟くと、さすがの五人もそれはちょっと・・・と困った表情を浮かべる。続けてケイが「総称で呼ぶなら【少佐】とか?」と冗談交じりに言うと、それを聞いていた三頭はそれもいい!というような様子で鳴き声で返す。


どこから【少佐】という言葉が出てきたのかとアダムが聞くと、正面、右、左の一文字ずつ取ったと一言。


少佐の体を撫でまくると、気持ちがいいのかお腹を見せるように仰向けになりもっととねだる姿を見て、五人は当人たちがいいのならと半ばあきれ顔で納得することにした。



そうこうしているうちに孵化したもう一頭の少女の姿をした魔物も目を覚ましたようだ。


むくりと起き上がり、寝ぼけ眼でケイと少佐の方を見つめる。

ケイが起きたのかと尋ねると、まだ意識がはっきりしていないのかゆっくりとアダム、シンシア、アレグロ、タレナ、レイブンの順番で顔を見回してから目線がケイの方に戻る。



シリューナ 名前:(未設定)

年齢 0才

性別 メス

スキル

海竜(かいりん)のワルツ 踊るように竜巻と津波が対象者を襲う。

大宴海(だいえんかい) 辺り一面を猛烈な津波が襲い全てを流す。

狂華乱舞 狂ったように水と風の魔法が入り乱れ、対象者を全て切り裂く。


セイレーンの亜種と呼ばれている魔物。

見た目は人間の子供と変わらないが、成長するに従い人間の女性のような外見になる。魔法は主に水属性と風属性を全般に扱い、属性としては混合属性の海が該当。

なお成長に応じて威力も高まる可能性がある。



こちらも能力的にはだいぶ凶悪である。


しかし鑑定に出ていた混合属性とはなんのことだろうと首を傾げる。

ダジュールの属性は基本的に火・水・風・土・光・闇の六属性で、光の上位である聖属性や風の派生属性である雷も存在することは知っているが、混合魔法ではなく属性が混じったものだと推測はできる。


「アレグロ、混合属性って聞いたことあるか?」

「混合属性?えぇ。たしか二属性以上を扱う人の中には、生まれつき属性が混ざった状態で保持している人がいるみたい」


過去には火と水で炎氷(えんひょう)という属性を持っている人物もいたようで、二属性以上を保持している人は全体の四割、そこから混合属性持ちは割合的にかなり低くなる。そのため、魔物で混合属性持ちはかなり珍しいようだ。


そんな会話の張本人は、胡座をかいているケイの足の間にちゃっかり座っている。

一緒に生まれてきた少佐が珍しいようで、小さな両手でわしゃわしゃと体を撫でている。


「こうしてみると、ケイ様ってパパみたいね」

「パパって、俺、結婚してねぇんだけど?」

「あら?いいじゃないの!似合ってるわよ?」


その様子にアレグロとシンシアが「親子みたいね」と口を揃える。

二人の様子に勘弁してくれとケイが困った表情を見せると、先ほどまで少佐を撫でていたシリューナがケイの方を見つめていることに気づく。


「どうした?」

『パ~パ?』

「おまえ喋るのか?」


どうやらシリューナは人語を話すようで、小首を傾げる姿はさながら一般の子供と変わらない。唯一、背中の鳥のような白っぽい羽根があるかないかの違いだけである。次にケイを見つめたシリューナは、周りにいた仲間の五人に目線を映した。


タレナからみんなの名前を教えてもらうと、覚えがいいようですぐにおにいちゃんおねえちゃんと懐いた。総称で呼んでいる少佐にもそれぞれの名前を教え、この子達もパパの家族よと教える。ケイとしてはちょっと恥ずかしい感じがした。


『パパ~わたしもおなまえがほし~の』


シリューナはケイの手を取り、つたない言葉でそう口にした。

そういえば名前をつけてなかったと思い考えた末、シリューナをブルノワと名付けることにした。


【シリューナのブルノワが従魔になりました】


鑑定結果を確認し、まずは一安心と息をつく。


ちなみにブルノワの名前の由来は、以前友人の一人がメスの猫を飼っていたことから名前を拝借した。異性の場合の名付けは結構重要であるため、その辺のセンスにはあまり自信がない。ケイは心の中でいまや会えなくなった友人に感謝の気持ちを送った。



「一段落ついたから、冒険者ギルドで従魔登録をしておいた方がいい」


ブルノワと少佐を抱えたケイにアダムからそう提案された。

どうやら一般の魔物と従魔を区別するために、ギルドで登録する必要性があるようだ。獣魔の卵についてはあまりよくわかっていないが、すでに孵化したことからまずは今後のことを考える必要性が出てくる。


ケイはブルノワと少佐を連れて、仲間達と共に従魔登録のためギルドに足を運ぶことにした。しかしこの一件がギルド内に混乱を招こうとは知るよしもなかった。

シリューナのブルノワとサーベラスのサウガ、ショーン、ヴァールが仲間になりました。

登場までだいぶ時間がかかりましたが、なんとか登場させることが出来ました。

皆さんよろしくお願いします。


次回の更新は2月10日(月)です。

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