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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
134/359

129、同郷の三人

皆さんこんばんは。

いつもご高覧くださりありがとうございます。

さて今回は、元・日本人たちによる楽しい集いの話になります。

ガイナールとフォーレのことも少し出てきます。

城に招待され王宮魔術師と対決し、時渡りの話に元・日本人のガイナールとフォーレ。目まぐるしい一日は、ダイニングルームにて王家専属シェフによる質のいい素材が使われている料理が並んでいることで、一段落に近づいてくる気がした。


精神的には豪華料理のフルコースを完食したぐらいの満足感と疲労感があるが、目の前に並べられている料理はどれもケイが好きな薄めの味になっている。同じ日本人ということなのか、ガイナールの気遣いでシェフに味の調整をするように言っていたのだろう。全体的に和食のようなあっさりした肉料理や魚料理が並び、それに合わせたかのように個人の好みを考慮して酒の種類がいくつかある。


元々酒を好まないケイとシンシアは度数の低めな果汁酒に口をつけたが、アレグロとタレナはフリージア産のワインをアダムとレイブンは度数がだいぶ高めな酒を口につける。


特にアダムとレイブンは、同じ酒好きだが味の好みが分かれている。


アダムは口当たりのまろやかな酒を好むようで、今飲んでいる酒も度数的には中ぐらいの強さらしい。一番はイグロという酒で、ある期間でしか手に入らないが口に含んだ瞬間にまろやかさが広がり、違和感なくすんなりと身体に染み渡る感覚があるそうだ。


一方レイブンは辛口を好むようで、いくら飲んでもあまり変わらないことからザルだと判明する。特に一番の好みはマライダ産のテリオという酒が好きらしい。この酒は市場にも回っており比較的入手しやすいそうで、以前何かの時に少しだけ飲ませて貰ったが、ケイには辛すぎて飲み込むことすら難しかった。


アダム曰く、自分も酒に強い方だがレイブンと比べると弱い部類になるらしい。

そんな話を聞いたケイは、二人の新たな一面に触れた気がした。



夕食が済んだ後、ケイ達はそのまま城に泊まることになった。


ガイナールからせっかく来てくれたのだからと、客室まで用意させていると話す。

用意周到だなと思いながらも、案内された客室は街が一望できる三階の南側にあたるフロアだった。


「やっぱりそうか・・・」


ケイはベッドに横になりながら、ヴィンチェ達とスマホで連絡を取り合っていた。

以前疑問に思っていたことをすっかり聞き忘れていたこともあり、三人にその辺のことをお願いしていたのだ。


もちろんそれは、以前エケンデリコスから聞いた文化遺産保護法のことである。


文化遺産保護法は、文化遺産を保護するための条約でアルバラントが一括でとりまとめをしている。書類の見直しを百年に一度行っているが、ベルセとナットから指定されている水晶の森があるスアン渓谷とルフ島のヴノ山に関しては、バナハの試練の塔と同じ時期から契約更新を見送っていることが伝えられる。

当時アルバラントと交わした契約書面には、条件として歴史関係の資料を破棄と記されていたようで、その契約書の写真も一緒に添付されていた。


当初エケンデリコスは、アルバラントが歴史についての隠蔽を行っているのではと勘ぐっている事を思い出す。そうなると、バレた時に国同士のいざこざひいては国際問題まで発展するのは目に見えている。


ヴィンチェからは、前に話にあったフリージアとウェストリアを繋ぐカロナック大橋についての説明が記されていた。


橋を管理している聖都ウェストリアに聞いてみたところ、建築を専門としている職人から橋の中心部分の修復は、元々別の道に繋がっていたと記されていた文献が残っていたそうだ。残念ながら古い文献のため、詳細を読み解くにはすぐとはいかないそうだ。しかし文献を調査する人物から、バナハに建っていた試練の塔と材質が似ていることが最近の調査でわかったそうだ。


材質の部分は既にケイの鑑定でわかっているため、目新しい情報ではなさそうだ。


ケイも自身でわかったことを三人に伝えたところ、やはりガイナールとフォーレのことにはとても驚いた様子が見られた。ヴィンチェからそうなると、自分たちの事も話しておくべきではと送られる。ケイは相手がどう行動するかわからないため、今は隠しておくべきではないかと返したところ、彼は以前からガイナールの方から接触を希望しているらしいと伝えられる。


ベルセも今は学校が休みに入っているので、近いうちに次兄のルイーズを訪ねてアルバラントに向かう予定で、ガイナール達との食事会もその時に行われるらしく、それなら自分の事を伝えてもいいと言ってきた。


二人とも後で会えるのだから今出なくてもいいのにと思ったが、味方は多いにこしたことはないということなのだろう。ナットも二人の意見に同意しているようで、自分はそういう機会がないため、もし何かあった時はこちらもできる限り手伝いますと返ってくる。


ガイナールのあの人柄から考えると、人を貶める行動はしないだろうと推測する。


自分たちにそんなことをしても国の評判を落とすだけなので、五年も費やしたことが水の泡になるような行動は彼にとってもデメリットになる。ヴィンチェはそれを見越してそういったのかはわからないが、協力を得るためにはそう言った秘密の部分も打ち明けるべきなのかとケイは考える。どちらにしろ文化遺産保護法や三人の事も含めて、ガイナールに話してみようと思った。


しかしタイミングが掴めず、どうするべきかとベッドの上でゴロゴロと転がる。



その時、客室の扉からノックが聞こえた。


ケイは誰なのかと身体を起こし扉を開けると、タイミングよく目的の人物がそこに立っていた。ガイナールとフォーレだった。執事のウォーレンはいないようで、二人だけでケイの部屋を訪ねに来たようだ。


「夜分遅くにすまない。君とじっくり話してみたいと思っていたんだ」

「同郷の仲、ちゅうわけで!」


フォーレの手には酒の入った瓶とグラスが三つ。

ケイは一瞬ハッとした顔をしたが、ガイナールから一般に流通されている果汁酒だと説明され、それに納得し、ここではなんだからと二人を中へ招いた。


客室のソファーに二人が座り、ベッドの端にケイが腰を下ろすとフォーレが持参した果汁酒をグラスに注いでからそれぞれに手渡す。


「夕食の時に果汁酒以外の酒を断っていたようだから、もしかしたら酒自体があまり好きじゃないのかなと思っていたんだけど、これは大丈夫かい?」

「これは大丈夫。実はこっちに来る前はまだ成人前だったし、もともと酒が苦手な体質らしいから強い酒は遠慮している。というか、よくわかったな」

「ふふっ、長年の経験だよ」


洞察力に優れているようで、相手の反応や状況を察して対応していることが理解できる。まぁ、上に立つ人間ならそのぐらいは当然なのだろうが前の職も含めてということなのだろう。


「ところでガイナールとフォーレは、元から知り合いなのか?」

「実際にフォーレと出会ったのは十八の時だよ」

「俺が親父の跡を継ぐ前やな」


ガイナールとフォーレが出会ったのは、学園卒業後のパーティーでのことだった。


当時ブラマンテの跡取りとして、フォーレの父がガイナールに息子を紹介したことから交流が始まる。年も近く話も合うため、時折二人で会ってはいろいろなことを話し合っていたそうだ。その時に時折フォーレの口調が違う事を気づいていたそうで思い切って尋ねたところ、互いに元・日本人だということが判明したらしい。

フォーレは公の場ではなるべく関西の方言が出ないように努力していたようだが、ガイナールから自分といる時だけは戻しても構わないと言ったそうだ。

もちろん最初は断っていたのだが、ガイナールから窮屈そうに見えたのか気にする必要はないと言い続けて今の状態に至ったそうだ。


「それにフォーレと出会えたのは、私が持っている予知というユニークスキルのおかげなんだ」


ガイナールが幼少の頃、子供に恵まれなかったブラマンテ家にスラム街に親に捨てられた子供がいる。その子を引き取って育てるといいと伝えた。事実フォーレの母は虚弱体質で子供を持つことが難しかったらしく、その話を信じたフォーレの父がスラム街にいた彼を保護して育てたそうだ。


後にフォーレと出会えたのは一種の運命だったのかもしれないと、ガイナールは笑みを浮かべた。もちろんその時はその子が元・日本人だったことは知らなかったわけで、偶然では片付けられない何かがあったのかもしれないと語る。


「しかし同郷の人間が三人もおるなんて意外やな」

「いや、まだあと三人いる」

「三人?」


疑問を浮かべたガイナールとフォーレにヴィンチェ達の事を説明した。


当然二人は驚きのあまりに声を失った。まさか他にも日本人がいるとは思わなかったのだろう。ケイを含めた四人の元・日本人の経緯を話すと、ガイナールは不測の事態で異世界に渡ったことに心を痛めていた。


しかも張本人は女神・アレサの部下で、ガイナール達はその存在を知らなかったとみると世に出なくてよかったのかもなと感じる。


「じゃあ、ケイは他の三人にあったことは?」

「全員には会っている。そういえばベルセは、近々あんたと会う予定だと言っていた。ヴィンチェもあんたからのアプローチがあったことも聞いている」

「そこまで知っているのか。ワイト家は近々交流会を行う予定で招待をしているんだ。ちょうど向こうの学校が長期休暇に入るみたいだからね。修復士のことは噂に聞いていて、君と同じようにひと目会ってみたいと思っていたんだよ」

「なら本人に聞いてみるか?」

「聞いてみる、って?」


ケイは鞄からスマホを取り出すと「これで!」と示した。


ガイナールはスマホを知っていたようで、手に入るのかと尋ねてきたので自分で創ったと答えたところ目を丸くして固まっている。一方フォーレはスマホを知らないようで、携帯電話は知っているかと聞くと「肩からさげる重いやつやろ?」と聞き返される。ケイはそんなのあったっけと首を傾げるが、ガイナールはあれかといった表情を浮かべ、若い頃に持っている人間がいたなと話す。

どうやらフォーレが前に生きていた時代は、携帯電話が小型化になるあたりになるらしい。この辺はジェネレーションギャップということだろう。


夜も遅いためメールでヴィンチェに「ガイナールがおまえに会いたいと言っているが都合がつく時はあるか?」と送ると、すぐに「今は所用でバナハに来ているからそこからアルバラントに向かえるがどうしたらいい」と返事がくる。

ケイはガイナールの指示で、城の門番に話をつけておくからアルバラントに寄った時に顔をみせてほしいと返信した。


「というか、直接やりとりしたいだろう?スマホやるから今度から連絡してみたらどうだ?」


ケイがガイナールとフォーレに創造魔法で創ったスマホを手渡すと、あっという間に創造してしまうので二人は唖然とした表情を浮かべる。そしてすぐに我に返り、受け取ったスマホを手にガイナールが操作を確かめる。元々仕事柄使うことが多かったガイナールはすぐに思い出したようで、電波がないけどどうやって動いているんだと聞かれたので、電波の変わりに空気中の魔素を吸収して動いていると返す。


フォーレは文明が進みすぎているせいか、使い方がわからないと困惑の表情を浮かべている。ガイナールから一から手取り足取り説明すると「おぉ!」とか「さすが最先端や!」などと、どこかの有名人がコメントしそうな声を上げる。


こうして元・日本人達の集いは深夜にまでおよんだ。

スマホのくだりは、肩からさげる電話が実際にあったようです。

ちなみに私は実物をみたことがありません。たぶん自分たちより上の人が知っているかも?


次回の更新は2月3日(月)です。


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