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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
127/359

122、エルゼリス学園

ケイ達が訪れたのは魔法で有名なエルゼリス学園。

そこで出会った意外な協力者と犯人との遭遇?

エルゼリス学園は、魔法専門学校である。


今から三百年ほど前、魔王討伐に貢献した大賢者エルゼリスが大陸中を放浪した後に、この地で学校を開校した事から始まる。主に魔法の素質がある者の才を伸ばすために全ての私財を投げ打ち、後生に魔法の重要性と危険性、そして互いに手を取り合うことを説き、心身共に人としての基本的な道徳心を養うことにも力を入れている。


しかし一般生徒に呪術をかける人間が学園内にいるとは、世の中は物騒だなと感じる。シンシア曰く、上に上がるためには時には卑怯な手を使う輩も存在すると口に出す。それを聞いて、以前バナハで見たエミリアの時の事を思い出した。



「なにかお困りですか?」



ケイ達の後ろから声が聞こえてきた。

振り返ると、襟と袖口に金の刺繍が入った紺のブレザーを着た学生とおぼしき二人の青年が立っている。


一人は金髪と青い目に中性的な顔立ちと絵に描いたような優等生的な印象を醸し出す青年と、もう一人は銀髪と青い目に左目の下に泣きぼくろがある顔立ちの整った青年だった。


二人ともケイより身長が高く、一瞬どこかで見たことがあるようなと感じはした。


「おまえら、ここの学生か?」

「はい。そうですけど?」


ケイ達を警戒している様子で金髪の青年が答え、人通りを懸念して誤解を生まないように自分たちは冒険者で、とある依頼の件で学園を訪れたと述べた。

その際、コニー・メンティスについて尋ねてみると、偶然にも二人は同じクラスだと返ってきた。


彼のことで学園の偉い人かコニーの担任に会いたいと聞いてみると、銀髪の子がまだ職員室に担任がいると思うので相談してみるから待っててほしいといい、学園の中に走り去っていった。一方残された金髪の青年は、一瞬こちらをみたかと思うと何かを思い出したかのように声を上げてからケイ達に尋ねてきた。


「あの、もしかして以前母を訪ねてきた冒険者の方々ですよね?」

「母?」

「僕の母はアルバラントの領主をしています」


そこでケイ達がはたと気づき、もしやと青年に問い返す。


「え゛?お前もしかしてマイヤーの息子か?」

「はい。フレデリック・レイル・クレイオルと申します」


フレデリック・レイル・クレイオル

領主(代行)を勤めているマイヤーの息子。

現在はエルゼリス学園の二年生で、文武両道で特に女子からの人気が高い。


彼は、以前ケイ達がマイヤーといたところを見かけたので覚えていたと言った。


驚いたことに彼の口から先ほど一緒にいた銀髪の青年は、ベルセの次兄でルイーズ・ワイトだということを語られる。現在二人はエルゼリス学園の二年生で、自分の興味のある分野を熱心に勉強をしていると話してくれた。


ルイーズ・ワイト

フリージア公爵家の次兄でベルセの兄。

現在はエルゼリス学園の二年生でフレデリックのクラスメイトであり、よき友人をしている。ちなみに学年首席。


世界は広いようで意外と狭いんだなと心底痛感した。



「フレデリック!先生を呼んできたよ!」


十分ほど経った後、建物の方からルイーズと学校関係者とおぼしき赤毛の男性がこちらにやって来る姿が見えた。連れられた男性はルイーズからある程度話を聞いていたのか、ケイ達の姿を見てから丁寧にお辞儀をした。


「大変お待たせしました。コニー・メンティスについて訪ねにきたのはあなた方ですか?」

「あぁ、そうだ。俺達はケイで、ここにいるのは俺の仲間だ」

「それはご丁寧に。私は彼の担任を務めています、マーク・ケベートと申します」


マーク・ケベート

フレデリック・ルイーズ・コニーの担任で担当教科は魔術倫理学。

物腰が柔らかく分かりやすい授業を行うため、男女共に人気とのこと。


ケイは自分たちの事を伝え、マークにとある依頼でコニー・メンティスが関わっているようなので話を聞いて貰いたいと伝えた。それを聞いたマークは、なにか心当たりのあるような表情を浮かべ、ここでは何ですからと来客用の応接室へとケイ達を案内した。



マークに案内された来客用の応接室は、正門がある南側の建物内の一階にある。


さすが有名学校とだけあって建物内は隅々まで掃除や手入れが行き届いている印象を持つ。また通された応接室は、有名画家が描いたであろう絵画やアンティーク調の調度品が配置され、どれも品の良さを感じる。


ケイ達は彼に即され、高級感漂う革張りのソファーに腰を下ろした。


実はフレデリックとルイーズも、コニーの件に関連があるとして同席することになった。彼らも相当心配していたようでケイ達の話に耳を傾ける。


「それで、コニー・メンティスについてどのような用件でしょうか?」

「実は教会の依頼で地下墓地を調べていたんだが、ここの生徒が術にかかった姿で発見されたんだ」


ケイはマーク達に、闇魔法の呪術である魂移しにコニー・メンティスがかかっていたことを前置きとしてこれまでの経緯を説明した。

その際に術者の魔力を辿ったところこの学園に辿り着き、困っていたところをフレデリックとルイーズに声をかけて貰ったと補足する。どういった状況でこういうことになったのかはわからないが、術者は学園の中の誰かであることは間違いないと答える。


その説明にマークを始め、フレデリックとルイーズもまさかといった表情をしたことは想定済みだった。


「では、あなた方はコニー君を助けるために?」

「あぁ。だが、学園の誰かが術をかけたとなると俺達は部外者だから下手に動けばコニーが危なくなるのは明白だ」

「マーク先生!?」

「でもあと二日しかないのに・・・どうすれば」


フレデリックが頭を抱え、ルイーズがマークに尋ねる。彼らの言葉の意味に疑問を浮かべると、マークはそれを察したようでその説明をしてくれた。


「実は二日後にクラス対抗の魔術大会がありまして、うちのクラスからはフレデリック君にルイーズ君、それとコニー君が参加する予定だったんです」


どうやらクラスの代表が学園の魔術大会に参加する催し物があるようで、コニーを含めた三人が参加する予定だったと話す。しかし五日前にコニーが図書館で倒れて以来意識が戻らない状況で、彼らのクラスは大会を辞退するかあるいは代理を立てるかと選択を決めかねていたようだった。


しかもその大会は、コニーにとって大事なイベントの一つらしい。


詳しく尋ねたところ、現在学園には全校生徒440名ほどが在籍しているが、440名のうち360名が基本と呼ばれる三年次制の総合学部で、残りの80名が専門学部と呼ばれる二年次制のカリキュラムを受講している。

特に二年次制である専門学部は狭き門と呼ばれ、この学部に上がるためにはこれまでの成績に加え、二年時までの総合成績で判断されることから、学年の上位二十人までしか受験資格の権利を与えられないそうだ。


コニーは成績ではフレデリックやルイーズ程ではないが、学年で五位以内に入っている成績優秀者であり、今回の大会の成績次第では専門学部への推薦権を手にできるかどうかにかかっているらしい。ちなみに専門学部の推薦権は上位五名しか枠がないようで、そんな大事な時に妨害されたとなると本人もいろいろとショックを受けているのかもしれないと勝手に想像する。


「しかし、妨害のために呪術を使った者が学園内にいるとなると、私の一存では決められない部分もあります。至急学園長に相談をしますので、申し訳ありませんが明日まで待って頂くことはできますか?」

「なに言ってんだ!?生徒の命がかかってるんだぞ?」

「それは重々承知しています。幸い学園には呪術に精通している教員もおりますので、早急に対応を行うように手配致します!」


マークはそう述べたが、少なくともケイは別の意味で危機感を持っていた。


実は魂移しというものは七日間しか効果が続かない呪術で、それを過ぎれば魂が消滅してしまうという危険性が存在している。術者はそれを熟知していると思っているので、それを逆手にとり脅しをしている可能性もある。もちろん相手の対応によっては、本来のやり方を無視して術を破棄すればコニーの魂は消滅してしまう。


どちらにしろ、今すぐに行動を起こさなければ大惨事になるのは予見できる。

口ではマークの説明に了承しながらも、ケイ達は自分たちで行動を起こさなければと考えた。



応接室を出たマークは、このまま学園長に報告に行くと言ってケイ達と別れた。


マークと会う前に、マップとサーチで呪術者の魔力を追えるよう設定いるので、ケイはそれを確認するためにマップを起動させる。マップとサーチはケイしか見えないので、予めフレデリックとルイーズにはその事を伝えており、了解を得てから使用する。


「ケイ、この後どうするの?」

「とりあえず術者を探すしかないな」

「で、その術者はどこにいるの?」

「あらかじめマップ上で設定しているからすぐに見つかる」


マップで位置を確認すると、どうやら探している人物はすぐ近くにいるようで、ケイ達がいる地点から西側からやって来るようだった。



「あら?フレデリック君!ルイーズ君!こんなところで何をしているの?」



ケイ達が声のする方を向くと、二人の少女がこちらにやって来るところが見えた。


左にいる少女は、肩口でふんわりとさせた胡桃色の髪に紫色の瞳、顔立ちはまだあどけない表情が残っている。右側の少女は背丈がケイぐらいあり、黄色が混じった赤みを帯びた茅色をした長い髪をなびかせている。顔立ちから少女というより女性に近い。


「ユエリアにケティ先輩!」


フレデリックとルイーズが二人に礼をすると、ケティと呼ばれた右側の少女がに二人に言及をする。


「二人共、ここで何をしているの?下校時刻はとっくに過ぎているのよ?」

「申し訳ありません、ケティ先輩。マーク先生の用事で校内に残っていました」

「それで隣の彼らは?部外者の校内の立ち入りは禁じているはずだけど?」


右側の少女がケイ達を一目してからフレデリックに問い続け、言葉の端々が若干キツい印象を持つ。


「彼らは母が雇った護衛です。コニーの件で心配していたようなので・・・もちろんマーク先生には了承を得ています」


もちろん真っ赤な嘘である。


しかしフレデリックはさも本当の事であるように右側の少女に説明をし、これ以上の言及を許さないように言い切った。ケティと呼ばれた少女は、早く帰るようにと二人に即し、ケイ達の横を通り正門の方に向かっていった。


「フレデリック君、ルイーズ君、お姉ちゃんが本当にごめんね!」

「ユエリア、君が謝ることはないよ。ケティ先輩もコニーのことで心配はしているようだし」


ユエリアと呼ばれた少女が二人にお辞儀をした。

どうやら二人の少女は姉妹だったようで、姉のフォローを妹が行うという一般的な姉妹の様子が見てとれる。


「そういえば、コニー君はどう?」

「彼の家に尋ねたら、まだ意識は戻っていないって」

「そう・・・コニー君、今回の大会に力を入れていたようだから、早く治るといいんだけど・・・」


心配そうに話す少女にフレデリックとルイーズが感謝の気持ちを送る。



「ユエリア!なにをしてるの!?」

「はーい!今行きまーす!・・・それじゃ二人ともまた明日!」


遠くで先ほどの少女が呼んでいる。

ユエリアという少女は二人に挨拶を交わすと、先に向かった少女の元へ向かった。



「あの二人は?」

「彼らはバークラ家の男爵令嬢で、姉のケティ・バークラと妹のユエリア・バークラです。ケティ先輩は三年生で生徒会長を務めています。妹のユエリアは同じ学年でD組に在籍しています」

「それにユエリアとコニーは、今回の大会で後一枠しかない魔導専門学科の推薦を巡って競っています」



ユエリア・バークラ

バークラ家の男爵令嬢でケティの妹。

フレデリック達とは同学年で、コニーと魔導専門学科の推薦を巡っている。


ケティ・バークラ

バークラ家の男爵令嬢でユエリアの姉。

フレデリック達の一つ上の三年生で生徒会長を務めている。



フレデリックとルイーズの話によると、妹のユエリアとコニーは二年次制の専門学部の推薦権を巡って互いに切磋琢磨しているそうだ。

ユエリアに関しては、既に魔導専門学科の推薦認定を受けているケティを頼り、ケティもまた、同じ学科に歩みたいユエリアの心情を汲んで支援をしており、各学年の上位二十名までしか進むことが出来ない学部に、生徒同士の熱い闘志を感じた。



しかしケイは、なぜか正門の方に歩いて行くバークラ姉妹を姿が見えなくなるまで見つめていたのだった。

マイヤーの息子とベルセの次兄の正式登場です。

ちなみに二人とも以前に少し出てました。覚えてますかね?


次回の更新は1月17日(金)です。

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