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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
116/359

113、召集拒否と魔王の話

面倒くさい話と魔王の話。

どんな展開が待ち受けるか!?


「すぐではなく、明日のことでして・・・」

「断る!」

「ですから・・・」

「い・や・だ!頑固拒否!!」


王都アルバラントのレストランにて、小一時間ほどこの問答が続いている。


その原因はケイと鎧を着た二人の兵士である。

その日の夜、ガルシア達と別れたケイ達が夕食を取ろうと近くの飲食店に来店した時のこと。着席してすぐに二人の兵士が現れ、ケイ達の姿を見るなり国王の召集命令が出ていますと告げたのである。


もちろんケイはなぜこちらから来ないといけないのかと尋ね、拒否の態度を示す。

二人の兵士は、王のご命令でして・・・と声を続けるが、王族貴族の類いは面倒臭くてかなわんと聞く耳を持たず。兵士二人が仲間の五人に説得してくれと言わんばかりの表情を送っているが、一度決めたらテコでも動かないことを知っているため、難しいなと困った表情をする。


召集の理由は、レッドボアやクラーケン関連の話を聞きたいということらしい。


最近では、Aランクの昇格話や貴族の指名依頼がひっきりなしに来ており、ケイ自身うんざりしていた。貴族の指名依頼では、頼み方が全部上からの物言いで癪に障り、その一切を断っている。過去に数回本人直々にやって来たが、物の頼み方がなってないと貴族一行に土下座させ、挙げ句の果てには教育的指導と称して正座を小一時間ほどさせている。


ちなみにこの一時間の正座は、瑞科家特有の指導の一環である。


特に姉がやんちゃばかりしていたので、両親からその指導を受けている姉を間近で見て育った。次男で末っ子のケイは今までにされたことがないが、姉曰く暫く立てないほど痺れているとのこと。圧迫されて血が通っていない状態が続けばそれもそうだよなと子供ながらに思ったこともあった。


そんな訳で相手が国王であろうが何であろうが、本人が来ないプラス上からの物言いに異を唱えている。


「文句があるならそっちから来いと伝えておけ」

「え?あ、いやぁ・・・」


狼狽える兵士に、来れるものなら来てみろと啖呵を切る。


そうは言っても国王や貴族は平民より上の立場にあたるため、呼ぶことはあれど自身から来ることはほぼない。それをケイはわかっており、あえて挑発するようないい方をしてみせる。まぁ自分事を棚に上げている部分は否めないが。


兵士の二人はケイ完全に拒否をしていることを十分に理解し、渋々とその場をあとにした。


「ケイ、本当にいいのか?」

「問題ない。気になるなら向こうから来るだろう?まぁ来れれば、の話だけど」


ケイはアダムの言葉にそう返すと、レストランのメニュー板に目を通した。



「報告は以上となります・・・」


ケイ達の相手をした兵士の二人が、正面に座っている男性に報告を行う。


三十代ぐらいであろうその男性は、端正な顔立ちと清潔感のある切りそろえられた金髪に深みのある青い瞳で彼らの報告を聞き頷く。


「報告ありがとう」

「あの、本当にお連れしなくてもよかったのでしょうか?」

「無理して連れてくることはないよ」


兵士の一人が、笑みを浮かべている男性に発言をする。

男性は想定内だから問題ないと返す。王族・貴族の召集に拒否の姿勢をする者を初めて聞く。基本、召集には絶対権を持つはずなのだが、彼らには相手が嫌だといったら無理して連れてこなくてもいいこと予め伝えている。

絶対権があろうがなかろうが、悪いことをしている訳でもないのに強制連行は可笑しいと常々思っている男性は、相手の意向を汲んでの今後どうするべきかを思案した。



「ウォーレン」



報告を終えた兵達が退出すると、男性が側に仕えていた燕尾服姿の男を呼ぶ。


茶色の髪に切れ長の目をした、男性より少し年上の男が一礼をする。

こちらも端正な顔立ちをしているが、目の形のせいか少し冷たい印象に感じる。


「予定を空けたいから調整を頼む」

「パーティ・エクラに会いに行かれるのですか?」

「あぁ。僕は、直接この目で確かめてみたい」

「大臣に怒られますよ」


そう言われた男性はいつものことだと笑いかけ、知りませんよと男が返す。

男性は椅子から立ち上がると、窓から見える夜景の街並みに目を向けた。


今年に入り突如現れたパーティ・エクラ。


彼らの噂は、多方面からよく耳にしている。

しかもパーティには、マライダの元・国王の護衛やダナンの公爵令嬢、Bランクの冒険者らが在籍いるというとても珍しい編成である。


もっとも男性が注目しているのは、中心的人物であるケイという男である。


彼はCランクでありながらも、単独でレッドボアやクラーケンを倒した実力者。

その反面、貴族からの依頼は一切受けず、Aランクの話も断っているだいぶ変わった人物である。


理由を聞いてみると単に面倒くさいから、らしい。


過去に城下街で兵士ともめ事が起ったらしく、それに関して領主のマイヤー・クレイオルから抗議文が送られてきた。その時は可愛がっている人物なのだろうなという印象しかなかったが、後の報告で彼女が執着するのも無理はないと理解した。

とにかく、それだけ実力も魅力も兼ね揃えているという事である。


男性は、夜景を前にまだ見ぬ冒険者達に強い思いを馳せた。



翌日、ケイ達は魔王のことについて聞くため王立図書館のバートの元に向かった。


朝の早い時間帯で図書館の開館直後の事もあり、バートとはすぐに会うことができた。彼に事情を説明すると、応接室に通された。


「歴史の謎に魔王が関わっている・・・ということですか?」

「俺達はそう睨んでいる」


ソファーに腰を下ろし、ケイ達の話を聞いたバートが区切りのいいところで口を挟む。もちろん確証はないが、聖馬サントマが言っていた塔を壊したのは魔王だという証言を切り捨てることはしない。500年前の世界戦争も関連資料が軒並み消失・排除されているため、少しでも可能性があるならとバートに助言を乞う。


「そうですね・・・それでしたら、すこし待って貰えますか?」


バートが応接室をあとにし、数分後に二冊の本を手に戻ってくる。

どうやら魔王関連の書籍のようで、他にもいろいろと関連書籍はあるがどれも似たり寄ったりの内容のため、この二冊が比較的わかりやすい部類ではないかということらしい。


ケイが一冊を手に中を確認する。


魔王の誕生と死という題がついている本は、魔王誕生から討伐されるまでの歴史が綴られていた。


300年前に魔王が誕生し世界を恐怖に陥れたが、人間を中心に連合軍を結成。

数万人の死者を出しながらもなんとか討伐に成功した彼らは、これを機に過去の過ちを正すべく互いに手を取り合う道を選んだという内容だった。


「魔王討伐に数万の死者って、被害的にはどうなんだ?」

「国ごとの損害はそれほど出なかったようですが、討伐場所となった軍事国バナハでは、約15000人ほどの人達がなくなったそうです」

「ん?魔王はバナハで討たれたってことか?」

「文献ではそのような記述になっています」


バナハといえば、以前試練の塔があった国である。

詳しく聞いてみると、塔の上から魔王が降りてきたところを総攻撃されて討たれたらしい。そこで魔王が討たれたとなると、塔の関連性が濃くなってくる。


ケイはひとつの仮説を立て、ひとつ踏み込んだ質問をしてみる。


「ちなみに、魔王って何処で誕生したんだ?」

「正確な位置はわかりませんが、エルフの森付近に誕生したと言われています」


その言葉にケイ達が互いに顔を見合わせる。



ケイが立てた仮説は《魔王はアスル・カディーム人の王ではないか》ということ。



エルフの森の地下にあった空の棺は、アスル・カディーム人の王の棺でなんらかの状況で魔王となり、当時まだ各地にあった塔を破壊。

最終的には、バナハの試練の塔の最上部に上り、腕輪と文献をヒガンテに託した。


あとは文献の通りである。


「過去の過ちって、500年前の世界戦争のことか?」

「ここには記されていませんが、おそらくは・・・」

「おそらくってなんだか歯切れが悪いわね~」


バートの返事にシンシアが疑問を投げかけると、彼の口からある事実が語られる。


「正確なことはまだ謎に包まれた状態ですからね。そういえば、魔王誕生も世界大戦も予言していた人物がいたようですよ」

「予言した人物?」

「えぇ。一部では【時渡り】ではないか?と考えられているそうです」


一般の歴史書には語られていないのだが、魔王誕生を予言した人物が存在していたらしい。しかもその人物は500年前の世界大戦も予言していたようで、一部の歴史家などからその人物は【時渡り】ではないかと噂されている。


「時渡りに関する文献はないのか?」

「時渡り自体はあまり多くはわかっていません。そういえば、アルバラントの王族で代々伝えられている文献があるとかないとか。もっとも、前・国王が不要と判断して全て破棄してしまったようで、残っている可能性は低いかと」


タイミングが悪かった。


ケイは、一瞬頭の中でその思いをよぎらせた。

もし昨夜の出来事と今が逆であれば召集の話を受けたが、すでに後の祭りである。

仕方がないので、時渡り関連はまた機会ができたら考えようと思い直した。



ケイは、エストアで一時的に復元させた塔で見た黒い騎士は、アスル・カディーム人の王の魔王の姿ではないかと考える。


アスル・カディーム人の王が魔王であるならば、その間に何があったのか?1500年前の人物が時を得て魔王として復活したのには何か理由があったのでは、と。

しかし同時に、アスル・カディーム人の王であり父でもある人物について本当の事を知れば、娘であるアレグロとタレナが傷つくのではと内心ケイは考える。

そのことを素直に二人に伝えたところ、もしかしたら自分たちの記憶がないことと関係があるかもしれないと返ってくる。現にアレグロはほんの一部ではあるが思い出した部分がある。しかしタレナは依然として記憶が戻らない。


事実を知る覚悟は出来ていると口を揃える二人に、ケイはそうかと返し二人のことを見守ることにした。



召集拒否ってあまり聞かないですよね?

まぁダジュールの話ですから他所は他所です。

次回の更新は12月23日(月)です。

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