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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
115/359

112、盗賊たちの後悔

今回は王都アルバラントへ向かう道中のお話。

「ケイ達もアルバラントに向かうなんて、俺達ツイてるな!」


翌日ケイ達は、王都アルバラントにいる王立図書館のバートに会いに行くことにした。それをガルシアに話すと、アルバラントに向かうなら一緒に行こうと言われたが断る理由もないため了承する。


「そういえば、最近アルバラントの近郊で盗賊による事件が多発しているようなんです」

「まぁ、恐いですね」


ムスタファが口に出すと、タレナが物騒ですねと怪訝な表情を浮かべる。


異世界ダジュールにも不貞の輩は一定数存在する。

ある者は盗みを働き、ある者は他人に暴行。そして、ある者は殺人を犯すなど。

生を受けている以上大なり小なり避けては通れない。


この世界では一度でも犯罪を犯すと一部を除き、町に入ることが出来なくなる。

地球のように刑務所などの機関が存在せず、然るべき対応後に処罰・厳罰を執り行う。


一部を除きと言ったが、それは村や集落を意味している。


彼らは居場所を守るために自衛をしているが、元々冒険者だった者が犯罪に手を染めた場合太刀打ちは難しい。そこで対策として、各国の兵が定期的に村や集落の周辺を見て回っている。そのおかげで犯罪はだいぶ減ったが、それでも一定数いるのは事実である。



アーベンを出発して半分ほど歩いた頃、ケイ達の後ろからつけて来ている気配がした。さりげなく後方を確認すると、少し離れた場所に三つの影が見えるのを確認出来た。


「ケイどうした?」

「後ろから誰かつけてきている。数は近いの三人、距離をとってまた三人」

「今、話題になっている盗賊か?」

「たぶんな」


アダムに耳打ちで会話を交わした後、サーチとマップで状況を確認する。


マップには前方に六人、後方に六人とケイ達を囲むように赤い点が点在している。

思っているより物騒だなと思い、前方の三つの点はケイ達と距離が近く、あと50メートル程で接触をするだろうと睨む。


案の定、いかにもと行った風貌の男たちが前からやって来る姿が見えた。


「ちょっと待ちな!」

「俺達、ちょっと困っててね~」

「食い物と有り金、全部置いて行ったら助けてやらんこともない。早く出しな!」


男たちはケイ達が何も言わないことに怯えているのだろうと解釈し、真ん中の男がナイフを取り出しケイ達に突きつける。当然ムスタファは顔を青くさせ、ガルシアが怪訝な表情を浮かべる。二人の護衛はムスタファとガルシアを守ろうと剣に手をかけ、臨戦態勢をとっている。


そんな彼らとは対照的に、ケイは若干顔を引きつらせている。


まさか普通に現れ、The・ド定番の対応をされるとは思わなかったのだ。

いきなり現れ斬りかかり、物をよこせと奥地の先住民のような行動を想像していたのだが、まさかのテレビや映画で見る展開丸々だとは内心ガッカリした。


「あのさ、モタモタしないで物取りならいきなり襲いかかる斬りかかるとかした方がいいんじゃねぇの?それにやり方が普通すぎてこっちがビビると思った?全然駄目!なってない!!」


怯えるどころか、自分たちのやり方がなってないと全てにダメ出しの説教をするケイに、ナイフを突きつけた男が憤慨し突っ込んでくる。

ケイはナイフを持つ男の手をはたき落としてから、顔面めがけて右ストレートをかました。当然、直撃を受けた男はその衝撃で二~三メートル後方に吹っ飛ぶ。



「ヘタクソ!!やり直し!!!!」



ケイのこの発言に、盗賊との戦闘に火蓋が切られた。


最初の三人組の残り二人を右側の男を蹴り飛ばし、左側の男の胸ぐらを掴み引き寄せてから頭突きを喰らわせる。


前方の残り三人が同時に飛び出してくると、アダムが翻しながら剣の柄で的確に急所を捉えると同時に雷の(カルマ)が発動し、盗賊三人の動きが鈍る。

それに追い打ちをかけるようにアダムが姿勢を低くした瞬間、レイブンの大剣が宙を切り、風神の征伐の恩恵が形成した風圧で怯んだ三人が吹っ飛ぶ。


後方からは六人が同時に飛び出してくる。

弓などの遠距離を得意とする女盗賊の二人が、ケイ達に向かって弓を射る構えを取ろうとする。


シンシアがそれを阻止するため矢を射ると確率30%の破壊の光線が発動し、瞬時に紫の光線が形成され女盗賊達目がけて飛んでくる。破壊の光線は制御しきれなかったのか軌道がズレ、弓を構えている女盗賊たちの間をすり抜け、はるか後方の地面に着弾。同時に爆風と爆音が辺りに響き渡る。

それを見た女盗賊の二人は、あまりの威力にその場で腰を抜かしてしまった。


シンシアと同時にアレグロが火属性と風属性の混合魔法を発動させ、残りの四人の内二人の盗賊の服に引火した。とっさに服についた火を払うように転げ回るが、なにぶん普通の火ではないためなかなか消えない。


アレグロの魔法を躱した残りの二人がガルシア達に迫ってくる。


スピードのある盗賊なのかあっという間に距離を縮めてくる。

もちろん護衛の二人は剣を抜き戦闘に備えたが、タレナがその間に素早く入ると同時に槍で二人をなぎ払った後、石突(地面に接する部分)で急所を狙った。



「盗賊まとめて【バインド】」



ケイ達に返り討ちされた挙げ句、ボコボコになった盗賊達は拘束魔法であっという間にお縄についた。状況の説明しているが、ここまでかかった時間はものの数分しか経っていない。


なおこれを見たガルシア達は、唖然とした表情なのは言うまでもない。



「・・・で、これどうすんの?」

「普通なら、衛兵に渡せばあとは向こうがなんとかしてくれる」

「あとは彼らを売った時のお金が入るわ。賠償金ってやつね」

「じゃあここだと、アルバラントの兵に渡せばいいってことだな」


レイブンとアレグロから説明を受け、納得した後素直に頷く。


基本、罪を犯した罪人はよほどのことがない限り、奴隷商に送られる。

ダジュールにも奴隷制はあり、なんらかの事情で送られた普通の奴隷もいれば犯罪を犯した犯罪奴隷というもの達がいる。


特に犯罪奴隷は、鉱山労働や治験の実験対象などの過酷な環境に送られることもある。その過酷な環境下のため、二年後の生存率は10%以下と言われており、我々はその彼らの犠牲の上で生活している。


「そうだ!どうせ奴隷として送られるんだったら、要求を叶えてやろうぜ?」

「何を言ってるの?」

「俺なりの気遣いだよ」


怪訝なシンシアにケイが返すと、やはり意味がわからず一同が傾げる。

それを予見してか鞄から乾パンと水を取り出すと、彼らにこう言い加える。


「ほら、金は出せねぇから食事でもやろうってワケ」


ケイが満面の笑みで「優しいだろう?」と盗賊達に向けると、向けられた方はなぜか蛇に睨まれた蛙のような様子に変わる。


まず、最初に話しかけた男の前にしゃがみ込むと、容器から乾パンを一つ取り出し男の口に入れる。有無を言わさない行動に半ば半泣き状態の男が堅めの乾パンを必死に租借する。それが終わるともう一つ口に押し込むように入れてやる。

それを三回繰り返した後、首を振って否定の意思を示すがケイの遠慮するなよという表情と共に、今度は水をつけ少しふやけた乾パンを押し込み、それを三回行う。


黙々と行う作業に一種の恐怖を覚えるが、アレグロがケイ様手伝う?となぜか言ってきたのでよしやろうと一缶手渡す。


アレグロは、拘束された女盗賊に向かって笑顔で乾パンを口元に向ける。


女盗賊が拒否の素振りを見せたため、「ケイ様の好意を無駄にする気なの?」とこちらも否定を認めない態度を示す。その表情に女盗賊は渋々同意をし、乾パンを涙ながら食べ始める。


その後なぜかタレナも参加し、異様な乾パンの食事会が行われる。


暫く経ち、一人平均八枚程度を食べさせた乾パンはもれなく完食となる。

ケイが「もうなくなった」と寂しそうな表情をして終わりを告げると、永遠と食べさせられた盗賊達が安堵の表情をする。


「・・・で、納得したの?」


静観していたシンシアが三人に声をかける。


ケイは仕上げがあると言ってから、創造でとある物を創り出した。


創り出したのは油性ペン。

アレグロが興味深そうに聞いてきたので、これは手や服につくとなかなか落ちないインクだと説明すると、それを何処に使うのと聞いてきたので実演してみせる。


「これを使っておでこや顔に好きな言葉を書くんだ。俺なら・・・これかな」


始めに絡んだ男の額に『肉』と書き記し、それを見たガルシアが吹き出す。

その横でシンシアがどういうことなのか尋ねると、日本では試合をしてくれた相手に感謝の気持ちを込めて顔に書き示すと説明した。


それはケイの完全なる嘘なのだが、今度はそれを信じたアレグロが、面白そうと受け取った油性ペンで女盗賊の顔に『馬面』と書いてみせる。

それに続くようにタレナが『謝りませんでした』ともう一人の女盗賊の頬に書く。


これだけやれば、盗賊達のプライド諸々を木っ端微塵に打ち砕いている状態になるのだが、追求の手を緩めないケイはもれなく残りの全員にそれぞれ違った言葉を書き送る。


『主食は乾パンです』『産まれてきてごめんなさい』『人間失格』等など。


見るも耐えない言葉の数々に書き記された盗賊達は、ほぼ全員が涙腺崩壊状態でこれ以上は止めてくれと目で訴える。ケイはそれを感涙と受け取り「やってよかったぜ!」と言う表情で返す。まぁ、全てわかってやったことなのだが。



ケイ達が王都アルバラントに到着したのは、日没の少し前だった。


門番を勤める若い衛兵に事情を説明して貰い、十二人の盗賊達を引き渡す。


その際に、その時の状況などの簡単な調書をとられる。

調書を取っている間、隣の部屋では恐怖と安堵の盗賊達が声を上げて泣いている。

対応していた別の衛兵が、その声と尋常じゃない様子に引きつった顔でケイ達の話に耳を傾けていた。


調書が終わったケイ達は、賠償金が出来たらギルドの方に渡しておくと兵から言われ了承した。



ケイ達が去った後、そのまま捕らえられた盗賊達の尋問が行われた。


調べによると、彼らは口々に「悪魔がいた!」とか「地獄を見た!」とか「奴隷でもなんでもいいから早くあいつらと距離を取りたい!!」などと言ってたとか言わなかったとか。



なお盗賊たちには「相手が悪かった」という慰めの言葉を贈ることにする。


死ぬかとおもった(by盗賊一同)

皆さんもケンカを売っては駄目ですよ。


次回の更新は12月20日(金)です。

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