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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
110/359

107、装備新調 

大変お待たせしました!(待ってないって!?)

男性陣、武器と装備を新しく替えるの回。

「テジオラ、さすがにこれは無理だよ」


藍色の髪をした犬の青年が、困った表情を浮かべてカウンターの上にあるそれらを見つめている。



翌日の昼下がり、ケイ達は町で偶然会ったテジオラに武器の修理をしたいんだがと相談を持ちかけた。


先日の黒い騎士との遭遇でアダムとレイブンの武器が壊れてしまったため、職人を紹介してくれと言ったところドーマという青年を紹介してくれた。

ドーマはゼムとノーリンの年の離れた兄で、父親と町の鍛冶ギルドに所属している職人である。二十五才という若さでありながらも他の職人に引けを取らない腕前で、地元の冒険者以外からの依頼も少なくない。


テジオラに案内され、ケイ達が東地区の職人街の一角に建っている鍛冶ギルドに足を運ぶと、ちょうど客が来ていたようでドーマとおぼしき青年があれやこれやと対応をしている姿が見えた。


しばらくして客が帰ると、テジオラが声をかけ互いに言葉を交わす。

ドーマはアダムとレイブンに武器を見せてくれと言い、カウンターに置くように言われた二人がそれぞれ武器を置いた。


そしてそれを見たドーマが、絶句をしたのち冒頭の発言をする。


「ドーマ、なんとかならないか?」

「なんとかって言われても、刃こぼれや多少の損傷なら何とかなるけど、ここまで酷いとなると一から作り替えるしかないよ」


職人のドーマから見ても二人の武器の損傷は酷いものだった。


ただ刀身が折れただけならわからなくもないが、さらに折れた部分から溶けてしまっている箇所があるため、一度全て溶かしてから作り替えなければならないのだ。

そうなると物によっては二~三日かかってしまうのだが、そのなかでもレイブンの武器は特注で、クレイモアと呼ばれる両手持ちの長剣と呼ばれる武器を使用している。


一般の両手剣は全長が大体1m程で、刀身の幅が広いことが特徴である。


これは獲物を切るというより叩きつぶす様に切るといった使い方が普通で、刀身自体の厚みも相当あるため、一時的な防御ができるようにわざとそのような構造が取られている。しかしその分剣自体の重さもあり機動力が落ちるため、どちらかというと剣の重さを利用していかに相手を短時間で押さえ込めるか、という力業のような戦い方になりがちになってしまう。


レイブンの武器は全長180cmほどある両手持ちの剣で、刀身は少し短く、幅は一般の両手剣の三分の一程で、柄の方が長く重さも4kgほど割と軽量に作られている。これはレイブンの長身を生かした立ち回り方で、相手の急所を突いては切り裂くという戦法をとっており、どちらかと言えば長物の武器の立ち回りによく似ている。たまに槍を使用しているタレナの戦い方を学んでいるようで、道中の会話によくそのような話を耳にする。


アダムは、一般的な両刃の片手剣であるロング・ソードを使用している。

元々盾を使っていた関係で少し短いショートソードを使用していたのだが、距離感が掴めず、先輩冒険者から「いつまで経っても戦い方が下手くそだ」と言われたことにより盾を使うことを止め、少し長めのロング・ソード一本でここまで上がってきた。剣に至っては同じ種類の片手剣でも扱いやすさは個々によって違うため、アダムは改良に改良を重ねたロング・ソードをずっと愛用していた。


故に、今回の破損ではレイブンよりも落胆している。



「防具っていってもいろいろあるんだな」


一方ケイと女性陣三人は、ギルドの棚に並べられている防具を眺めていた。


ダジュールに来て以来ずっと革の装備を使用していたが、黒い騎士との戦闘で原型を留めない状態になったため、この際新たに一式購入することを検討していた。

とはいえ戦闘の際には魔法と体術が中心なので、重量のある装備は除外する。


「そういやシンシア達はだいぶ軽装だよな?」

「私は弓を使っているから防具があると弓が引けないのよ」

「ちなみに私は魔法専門だから、詠唱の邪魔になる防具は着けられないの。ローブも魔法の威力を維持するために特別に作られている物よ!」

「タレナは?」

「私は槍を使っていますので、動きが阻害されるものは控えています。全体的に軽装に近いと言われていますが、身体の重要な部分はマライダの鍛冶師に特別に作製して貰いました」


女性陣三人は、基本的に軽装に近い装備を着用している。


中距離武器の槍を使用するタレナでさえ大きな動きが中心になってしまうため、胸当てや脛あてなど部分的に着用してはいるが、戦闘の際に制限される全体を覆うものは好まないようだ。


そう考えると、アダムとレイブンもタレナの考えに近いのだろう。


二人も胸当てなど重要な箇所は押さえて着用しているが、どちらかと言えば大きな動きながらも的確に相手を仕留める技術を持ち合わせているため、ガートをするより見切りやカウンターの戦法を得意としている節がある。


そうこうしているうちにアダムとレイブンの話が一段落したのか、試し用の武器を手に裏手にある空き地で試し切りをすることになったようだ。二人とも以前使用していた武器と同じタイプを手に取ったようだ。

ケイには専門的なことはわからないため、見学のためにシンシア達と一緒にその後についていくことにした。



裏手にある小さいながらも空き地がある。


そこで本格的に使用する武器を決めるため、いくつか武器を振るってはドーマと確認の会話を交わしている。


二人が豪快に剣を振ると、風を切る音がはっきりと聞き取れる。


「さすが二人とも凄いわね」

「接近戦を経験しているだけあって迫力が違うわ」


シンシアとアレグロが目を見張っている。


レイブンは両手剣を豪快に振るい、武器の全長が長いため間合いは広めの印象がある。しかし、ひとたび戦闘になるとなぜかそれほど感じない。やはり経験の差というものだろう。

アダムは片手剣で、候補が二つほどあるため交互に振るってはドーマと相談している様子だった。彼自身、間合いは均一だがテンポを変えて攻撃をする辺り、レイブンほどではないが接近戦の経験が物を言うのだろう。


「ケイは装備決まったのか?」


先ほどまでアダムとレイブンに付き添っていたテジオラが、ケイ達の様子を訪ねに来た。ケイは正直ピンと来ないと答えると、だろうねと言った表情をする。

ケイはアレサの寵愛のおかげで攻撃を受けてもダメージが通らないため、装備類はなくてもいいのだが、見た目の問題でいつまでも革と言う訳にはいかないだろうと仲間達からも言われていた。


「なんとなくこれと言うモノがないんだよな」

「まぁ、ここは武器専門職が多い場所だから、魔法メインとなると専門外なんだろうね」


アダムとレイブンに目を向けると、ベースとなる武器が決まったのか最終的な調整の大詰めを迎えていた。テジオラによると、修理不可能になった二人の武器は一旦全て溶解してベースとなる剣の調整にあてがわれるそうだ。半オーダーメイドということなのだろう。



ケイは、何の気なしに空き地の隅に積み重なっている木箱に注目した。


「あれは?」

「あぁ。あれは破棄や修理不可能の武器や防具が積まれているんだ。あれらを溶解や分解をして修理や調整の部分を補う用に使われるみたいだ」


テジオラの言葉に木箱の中を覗くと、折れた剣や修復できないほどボロボロになった防具が幾度にも積まれている。


ケイが手を入れていくつか取り出すと、割れた石のような物が二つと穴の開いた黒い軽装服が見つかる。


「この石は【雷光石】と【風光石】ね」

「なんだそれ?」

「【雷光石】は雷を扱う魔物が希に落とす魔石で【風光石】は風属性の魔物が落とす魔石と、どちらも希少物と言われています。主にマジックアイテムに使用される魔石になります」


ケイの後ろからアレグロとタレナが覗き見る。

二人によると、手に取った二つの石は割れて効力を失っている魔石だという。


「魔石って割れたら使えないんじゃねぇのか?」

「たしか、細かく砕いて錬金術の材料になるとかって聞いたことがあるわ」

「えっ?これが?」


ケイは一見使いどころがないように見えるものでも、使える人からみればこれらは宝庫なのだろうなと感じた。

手に取った割れた魔石と穴の開いた軽装に注目していると、目の前に半透明の枠がふと現れる。読んでみると、以下の内容が表示されている。



『エンチャンターの能力で修繕・変更可能』



そういえばケイはエンチャンターの称号を持っているのだが、こんな表示は初めて見る。戦闘でレベルが上がればスキルが増えることもあるため、恐らくその類いなのだろうと納得する。


とりあえず壊れて使えない物もエンチャントできるかどうか、まずは穴の開いた軽装で試してみることにした。


「【エンチャント 修繕・変更】」


淡く光った次の瞬間、穴の開いた軽装服は落ち着いた色合いの裾が少し長い黒いジャケットに替わっていた。一見普通の服に見えなくもないが、ケイが鑑定をかけるとあまりの結果に声を詰まらせる。



ラウフの軽装 精霊の加護を宿しているジャケット


防御力:1000

スキル 自己修復 破壊不可

精霊の導き 全ての攻撃を吸収して、任意で反射・発動させることができる。



ケイがエンチャントした壊れた軽装服は、精霊の力を宿した服に替わっている。

ラウフは古代のエルフ語で精霊を意味しており、恐らく以前の持ち主はエルフ族にゆかりのある人なのだろうと勝手に想像してみる。

さすがのケイもこれには驚きの色を隠せず、テジオラがどうした?と問うとちょっと~と言葉を濁す。シンシア達はいつものことだと状況を察したものの、事情を知らないテジオラは首を傾げるばかりだった。


そんなケイ達の横でギルド職員の男性が、壊れたアダムとレイブンの武器を木箱に入れようとしていた。直すこともできず結局破棄をすることになったのだろう。

ケイはそうだとひらめき、男性に待ってほしいと制止した。


「なぁ!その壊れたヤツ俺にくれ!」


もちろん職員の男性は怪訝な表情を浮かべている。よほど物好きか変わり者でなければこんな行動は取らないため、渋々とそれらをケイに譲ってくれた。


「ケイ、それどうするの?」

「俺の考えが正しいなら、エンチャントで直せるんじゃないかと思ったんだ」

「さすがケイ様ね!」

「とはいっても、俺もやったことがないからとりあえず一つずつ試してみよう」


そう言ってケイは、二つの壊れた武器にエンチャントを施した。


「【エンチャント 修繕・変更】」


二つ分の光が輝いた後、その結果を見てケイ達は唖然とした。


「これって失敗・・・か?」

「さぁ~ もしかしたら、武器のエンチャントはできないということなのか?」


テジオラがケイに語りかけると、ケイはさっぱりわからないという表情で独り言を呟く。その隣で、壊れた武器を持ってきた職員は顔を青くさせている。


困惑しているケイ達の目線の先には、小さな二つの袋が鎮座していたのだ。


どういうことなのか鑑定してみると、どうやら壊れた武器は【片手剣の素】と【両手剣の素】という合成素材という結果になっている。


さすがのケイも、これには顔を引きつらせる。


「なんか思っていたのと違うな~」

「というより、剣じゃないんだけど?」


ジト目でケイをみるシンシアに何も言えないケイは、これを二人・・・特にアダムに見せれば卒倒するのではないかと冷や汗を掻く。アダムは人一倍武器の扱いには気をつけていたので、末路がこれとわかった時にはどうなるのか想像がつかない。

落ち込むかもしれないし泣くかもしれない、はたまた殴られるかもしれないといろいろと考えたが結局相手のことはわからないため一旦端に置くことにする。


結果をみんなに伝えたところ、アレグロが状況を打開する案を口にする。


「合成素材になったって事は、何かと組み合わせるってことじゃない?」

「合成・・・そうか!」


ケイは、先ほど木箱の中から見つけた壊れた魔石に着目をした。


そして、先ほどと同じようにエンチャントを施すと【再生された雷光石】と【再生された風光石】という合成素材にに替わる。再生された魔石はそれぞれ雷と風の力を宿した魔石へとなり、ケイはこれらを使って合成させようと考える。


「お前達、何をしてるんだ?」


一通りドーマとの話し合いがすんだのか、アダムとレイブンが戻ってくる。

後ろに控えているドーマの手には、今後握られるであろうアダムとレイブンの武器が抱えられている。


「お前らもういいのか?」

「あぁ、武器の調整は追々ってところかな。本当は前の武器のようなモノがよかったんだが調整が難しいらしく、また模索するしかないようだ」


前の武器の愛着がまだあるのか、アダムは少し寂しそうな表情を見せる。


ケイは、ドーマに試したいことがあるから手に持っている二つの武器を貸してほしいと頼んだ。当然ドーマは困惑の表情を浮かべているが、アダムとレイブンはケイの性格からしてまた何か企んでいるなと感じ取った。



ケイは、受け取ったアダムとレイブンの新しい武器となる二つと、合成素材の魔石と剣の素をそれぞれにエンチャントを施す。


アダムの方には、新しい片手剣と片手剣の素と再生された雷光石。

レイブンの方には、新しい両手剣と両手剣の素と再生された風光石。


「【エンチャント 合成】」


素材の影響からか、一瞬だけ辺り一面を覆い尽くすように発光する。


「あ、出来てるじゃん!」


合成はうまくいったようで、ケイが地面に置かれた二つの物を拾い上げる。


一つは身幅が広い片手剣。

全長90cmのその剣は柄の部分が金細工で装飾され、雷光石の影響からか全体的に雷を帯びている。全体的には品の良い印象を持っている。


鑑定してみると以下のような内容になった。



雷光のアラネス


攻撃力 2000

スキル 自己修復 破壊不可

破壊の一撃 30%の確率で対象者を破壊、10%で葬る

雷撃の(カルマ) 敵意を向ける対象者に雷の鉄槌を落とす 追加:麻痺

鏡の防壁 全ての遠距離攻撃&魔法を倍にして跳ね返す。


パッシブスキル 雷光の連闘=雷の加護を受けることができる



もう一つは、全長が180cmの両手剣。

全体的に緑がかった銀色に輝き、風光石の影響で風属性の恩恵を感じる。

クレイモアと違い、防御面からリカッソ(刃根元)は少し長めの形状をしている。

こちらは武器を持たないケイでも軽く扱える印象がある。


鑑定は以下の通り。


ラファーガ


攻撃力 3500

スキル 自己修復 破壊不可

一閃 30%の確率で対象者を葬る。

剣技の極 戦闘中に武器を使い続けると切れ味が増し、一時的に能力が上がる。

斬撃 全ての遠距離攻撃&魔法を無効にする。


パッシブスキル 風神の征伐=風属性の恩恵を受けることができる



「いや、凶悪すぎるだろ・・・」


ケイが独り言を口にしたのち、アダムとレイブンにそれぞれ手渡す。

説明を聞いた二人は目を丸くし、試し切りをしてみろと催促すると空き地で確認してみることにした。


「これはいいな!軽いぞ」

「凄いな!前の剣と感触は全く変わらないぞ!!」


二人は子供の様な笑顔で剣を振りながら感触を確かめている。

それを凄いとみるかホラーとみるかは個々によるが、先ほどより剣の振りが速く動作が機敏になっているのは誰の目から見てもあきらかである。

二人の気持ちの問題もあるが、武器の恩恵も少なからずあるのだろうと感じとる。


しかしここで、実はみんなには言っていなかったことがひとつある。


アダムとレイブンの武器にはもう一つ、アクティブスキルが存在する。

それは【輪唱】というもので、アダムとレイブンが同対象者を同時に攻撃した場合に100%の確率で破壊・葬るというモノである。


何故それを言わなかったのかというと、ケイ自身がピンときていなかったからだ。

それに戦闘の際、アダムとレイブンは互いがかち合わないようにわざとテンポをズラして攻撃を仕掛けているので、同時に攻撃をすることが今までになかったのだ。


そんな状況を軽んじていたケイが突然「あっ!」と声を上げる。


アダムとレイブンが、空き地の隅にある練習用の木製の人形めがけて同時に攻撃をしかけたのだ。実はケイ達の知らないところで、二人はこの際新しい武器で連携と同時攻撃を考えみようと話していたのだ。


二人はケイの状況を知らないまま武器を人形めがけて振り下ろす。


辺り一面に轟音と突風と落雷が同時に発生し、輪唱の威力は凄まじく、空き地に置いてある全てのモノが吹き飛んだ。



その後、冒険者ギルドからオブスが魔物の襲来と勘違いをして兵を連れて鍛冶ギルドを訪れ、それを説明すると別の意味で雷を落とされたケイ達なのである。

フラグは立った時点で成立する(byケイ)

次回の更新は、12月9日(月)です。

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