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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
106/359

103、ナットの行方

ルフ島の郷土料理に舌鼓を打っているケイ達にテジオラが訪ねにやってくる。

その日の晩、ケイ達は宿で食事をとろうとしていたところだった。


一日目は屋台である程度食べてしまったためあまり味わえなかったが、ルフ島の郷土料理も作っていると宿屋の亭主から聞いたため、夕食はそれを注文してみることにしたのだ。


「はい。おまちどうさん!」


郷土料理をお任せでとケイが注文した後、猿の獣人の亭主が料理を運んでくる。

テーブルに並べられた様々な料理は、どれも見たことのないものばかりだが食欲をそそられる匂いが漂う。


「おっちゃん、これがルフ島の郷土料理なのか?」

「あぁ、そうだよ。今日は『アゲラダのオンゴ和え』に『ヒルンドーの野菜巻き』それと『カマル』を用意したぞ!」

「どれも聞いたことない料理ばかりね」


一見肉料理ばかりなので、アレグロを含む女性陣はちょっとと敬遠しがちの様子だったが、船乗りの様な風貌の亭主は自信があるのか歯をむき出しにして笑ってみせる。


亭主の話によると、これらはルフ島の一般的な郷土料理になるのだそうだ。


まず『アゲラダのオンゴ和え』は牛とキノコのソース和えのことで、アゲラダは、ルフ島にしか生息していない赤茶色で斑模様の牛のことで、特別な餌を使用して飼育しているそうで、他の牛より断然味が濃厚で肉厚だがさっぱりしている。

オンゴはキノコの一種で、本来は毒々しい赤色をしているそうなのだが、火を通すと鮮やかな色合いに変わるらしく、味も他の素材とはつかず離れずといった食感と味の印象がある。そしてソースには、ヴェリココという日本で言うところの杏に近いものを使用しているそうで、酸味の利いた味わいも楽しめた。


『ヒルンドーの野菜巻き』は鳥の野菜巻きのことで、ヒルンドーという小型の鳥を捌いて野菜で巻いて蒸した簡単な料理。鶏肉はささみに近い食感で、野菜はサイの葉を使用しており、ほうれん草によく似た味をしている。味付けは塩を少しつけて食べるのが通らしい。


そして『カマル』はルフ島でしか造られていない酒のことである。

ムンの実とカクトスというサボテンに似た植物を発酵して蒸留したもので、作り方は焼酎やウイスキーと作り方は似ていた。

ケイと女性陣はあまりの臭いのキツさに飲むことを断念をしたが、酒好きで強いアダムとレイブンでもだいぶキツかったらしい。ケイが臭いを嗅がせてもらうと、酒の独特な臭いが鼻孔に充満したので若干涙目になった。

密かに鑑定すると、アルコール度数は40%とだいぶ高い。どちらかと言えばウォッカやテキーラに近い部類なのだろう。



しばらく郷土料理を堪能しているケイ達の元に、テジオラがやって来た。


「テジオラじゃん!一緒に飯どうだ?」

「ケイ達か!すまない今はそれどころじゃないんだ」


テジオラは何か慌てた様子で、常に誰かを探している素振りを見せている様子が窺える。


「誰を探してるんだ?」

「ナットだよ。知らないか?」

「いいや。俺たちはずっと宿にいたし、食事もここでとっているから」

「何かあったんですか?」

「実はピウスさんから、ナットがまだ帰って来てないって連絡があって探している途中なんだ」


どうやらナットはケイ達と別れた後にどこかに向かったようで、夜になっても戻って来ない彼を心配して、父親のピウスがテジオラの元に訪ねにやって来たそうだ。

しかもナットの友人で、テジオラの後輩にあたるバナッシェという豹の獣人の青年もまだ戻っていないらしく、彼の家族からも何処に行ったか知ってるかと尋ねにテジオラの家まで来たそうだ。


「そういや昼間のあの後で、受付の奴からゼムがナットを探しているって聞いた後に別れたからゼムに聞いてみたらいいんじゃないか?」

「ゼムが!?」

「バニューボがスル大森林の前に居て、それを伝えにナットのところに来たみたいだがら何か知ってるんじゃないか?」

「そうか!それならゼムに聞いてみることにするよ。教えてくれてありがとう!」


テジオラはケイ達に礼をしてから、急いで宿屋を後にした。


「ナットさん達は見つかるでしょうか?」

「さぁな。だけど、ふらっとどこかに行くような奴でもないしな」

「ケイ、俺たちも様子を見に行った方がいいんじゃないか?」

「そうだな。後で冒険者ギルドの方に行ってみるか」


アダムの提案に肯定し、ケイ達は残っている食事に手をつけてからギルドに向かうことにした。



ケイ達が食事を終え冒険者ギルドについた時には、テジオラとナットの父であるピウス、そして犬の獣人のゼムの姿があった。


「テジオラ!」

「ケイ!ちょうどよかった!」

「ケイ兄ちゃんとアダム兄ちゃんだ!」


ゼムはガレット村の騒動以降、少し大きくなった様子で体つきも少しずつだが大人の男性になりかけている。感動の再会をしたいのはやまやまだが、テジオラの険しい表情にケイが問いかける。


「ナット達はいたか?」

「いや。しかもまずいことになった」

「なにがあった?」

「どうやらナット達はバニューボに乗って、スル大森林に向かったようなんだ」


ゼムの話しによると、たまたま外にノーリンとグッツェといたところ、空からバニューボ達が飛んできてゼム達に何かを伝えに来た様子を見せたが、言葉がわからない三人はそのことをナットに伝えにギルドにやって来たそうだ。

その後スル大森林前でナットとバナッシェと合流したゼム達は、ナットがバニューボ達に何かを話した後、二人を乗せて飛んでいったと証言したのだ。


「ナット達はどっちの方向に行ったんだ?」

「兄ちゃん達はそのまま南の方に飛んで行ったよ」

「範囲が広すぎるな。それに日没をだいぶ過ぎてるから、探しに行くのは難しい」

「そ、そんな!テジオラ君なんとかならないのか?」


ピウスが息子の安否を気遣いテジオラに懇願するような声を上げるなか、ギルドの扉を激しく開く音がした。


「テジオラ兄ちゃん!」

「ノーリン!グッツェ!」


ギルドに駆け込んだのはゼムの妹のノーリンと友人のグッツェだった。

二人は慌てた様子で駆け込んできたため、息も絶え絶えにこう話し出した。


「二人共どうした!?」

「スル大森林の方から、バニューボ達がやって来たの!」

「だいぶ混乱しているようだったから、父さん達が落ち着かせています!」


どうやらバニューボ達が町に来ているようで、三人の両親達が混乱しているバニューボをなんとか落ち着かせようと対応していると話した。

テジオラは今行くと言ってからゼム達を先に行かせると、ケイ達に協力を依頼してきた。


「ケイ、アダム、すまないが手伝ってくれないか?」

「そういうと思ったぜ。もしかしたらナット達と一緒に行ったバニューボ達かもしれない。俺は動物の言葉がわかるからとりあえず話しがしたい。案内してくれ」

「え?あ、あぁわかった・・・しかしケイは本当に謎だな」


ケイの幅広い能力にテジオラが顔を引きずらせながらもとりあえずそのことは置いて、ケイ達とピウスをバニューボの元に案内した。



「テジオラ兄ちゃーん!こっちだよ!早く!早く!」


スル大森林前に向かうと、ケイ達を見つけたゼムが呼び声を上げた。


四羽のバニューボ達がせわしなく動き回っている姿が見えた。それをゼム達の両親がなんとか宥めようと、あの手この手で落ち着かせようとしているが完全に振り回されているようにしか見えない。


「テジオラ兄ちゃん!バニューボ達をどうしたらいい?」

「と言っても、俺には言っていることがわからないぞ?」


ゼムの問いにテジオラが困った表情を浮かべると、ケイが出番だと言わんばかりに混乱しているバニューボの元に歩み寄った。


『あ!ナットと一緒に居た人間達だ!』


ケイが近寄るとその内の一羽がこちらに気づき、ばたつかせていた羽根を収める。

どうやら昨日ナットと会ったうちの一羽のようで、何かを訴えようとこちらに瞳を向けている。


「お前は昨日会ったバニューボの一羽か?」

『うん。そうだよ!』

「何があった?」

『ナットを乗せた仲間が大森林に落ちたんだ!』

「大森林に落ちた?」


ケイの言葉にテジオラとピウスの表情が険しくなる。


バニューボ達が言うには、昼間に上空を飛んでいたら大森林の一部から黒い煙の様なものが見えたため、火事かなにかだと思い慌てて町に居るナットに助けを呼びに行ったそうだ。

しかしそこに向かっている途中で、急に大森林から上空へ伸びるように黒い煙が襲いかかって来たため慌てて翻したが、彼らが気づいた時にはナットを乗せたバニューボの姿がなく、しばらく辺りを探したが見つからず助けを呼びに飛んで来たのだと言う。


それをみんなに伝えると、テジオラとピウスが明らかに動揺する素振りを見せる。


「大森林に落ちたとなると本格的にまずいな」

「これからどうするの?」

「とりあえずこれから探しに行くぞ!」

「探しに行くってー」


「ケイ、それなら俺も連れて行ってくれ!」


シンシアとの会話にテジオラが割って入るようにケイに願う。

居ても立っても居られないと言った様子で、表情には焦りの色が窺える。

それを見たケイは、バニューボ達に自分達とテジオラが探しに行くから乗せてくれと頼むと四羽とも快く承諾してくれた。


「ナットもバナッシェも俺にとっては弟みたいなモンだからさ、俺一人で待っていられねぇよ」

「わかってるよ。こいつらには探しに行くから乗せてくれと言ったらいいっていったからこれからすぐに出るぞ!」

「俺ならいつでも大丈夫だ!」


それを聞いたケイは仲間達と二人ずつバニューボに跨がり、テジオラも残りの一羽に跨がるとピウスに言付けを頼んだ。


「ピウスさん申し訳ないが、親父とバナッシェの家族にこのことを伝えてほしい」

「あぁ、わかったよ。長には僕から伝えておく。皆さん、二人のことをどうかよろしくお願いします」

「兄ちゃん達!気をつけてな!!」


ピウスが頭を下げると同時にケイ達を乗せたバニューボが助走をつけて走り出し、ゼム達の声を背に大きく空に羽ばたき出した。



ケイ達は消えたナット達を探しに夜の大森林に繰り出すことになった。

消えたナット達は一体どこにいったのでしょうか?


次回の更新は11月29日(金)です。

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