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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
105/359

102、獣人族と魔族

今回は冒険者ギルドに行った先で出会う獣人族代表と魔族代表とのお話。

その後アダム達と合流したケイは、ナットから冒険者ギルドのギルドマスターから昨日のことで話を聞きたいと招集されていることを聞いた。


どうやら昨日の一件で光が町からでも見えていたらしく、その後倒れたケイを抱えて戻って来た姿が目撃されたことから事情を説明してほしいとのことだった。

ちなみにギルドマスターは、テジオラの父で獣人族の代表も務めているオブスという男だ。



ケイ達はナットと共に町の中心にある冒険者ギルドに赴くと、受付のカウンターに見覚えのある逆立てた赤い髪に狼の耳がついた男性が受付嬢と談笑している姿が見えた。


「テジオラ!」

「あ!ケイとアダムじゃないか!?」

「変わりなさそうだな」

「あぁ、あの時は世話になったな。こっちも相変わらずだよ」


テジオラは先ほど島に戻って来たようで、ギルドの受付嬢から伝言を聞いた後にケイ達がやって来たのでタイミングがよかったなと話す。

ケイは、あの後に加わったシンシア達をテジオラに紹介してから、ナットと一緒にギルドマスターに呼ばれたからやって来たと述べる。テジオラから昨日の光についてのことか?と聞かれたので、ケイは自分達に関係あるからなと答える。


「しかし、ナットも一緒だったなんてな」

「実は以前ゼム達を探しに行った時に、南の岬に一度行ったことがあったんです。ケイさん達が探している物がそこにあったので案内していました」

「あぁ。あの岬にある像みたいなところか」


ナットはケイ達が捜し物をしていたためその案内をしていたと説明すると、テジオラは島で見たことない現象に親父が気にかけていたようだと話し、南の岬にある女神像はテジオラも知っていたようで、以前調査隊が報告していたと聞いたことがあると述べる。


「テジオラも忙しいんだな」

「親父のお使いだよ。それに俺も依頼の報告があるから案内するよ」


ケイ達は、テジオラの勝手知ったるギルドの二階に案内された。



「親父ー、入るぞ!」

「テジオラか・・・入れ」


二階の一番奥の部屋がギルドマスターの執務室ということで、身内のテジオラは入る前に声をかけると中から渋い男性の声が聞こえた。

間を置かずにテジオラが扉を開けると、銀髪で狼の獣人族の男性が机に座り書類の作業をしているところだった。


「ん?テジオラ、そいつらは?」

「何言ってんだよ。親父が昨日のことで話しが聞きたいって行ってたじゃん?」

「あ?あぁ。そいつらか・・・まぁ座れ」


ケイ達が執務室のソファーに腰をかけると、その向かいにオブスが座る。


「親父、俺の話は後の方がいいか?」

「どうせ結果はわかっている」

「じゃあ後だな」

「そういえばお前達とは初めてだな。俺はオブス、冒険者ギルドのギルドマスター兼獣人族の代表を務めている」


オブス

南大陸の獣人族の長兼冒険者ギルドマスター。

日々の仕事に追われ人手が足りないこともあるため、息子のテジオラに協力してもらっている。強面だが実は甘い物が好きらしい。


さっそくオブスは、ケイ達に昨日の事について話しを切り出した。


「で、昨日の光の原因はお前達か?」

「あぁ。実は俺達はわけあって、女神像を探して各地を回っている」

「女神像?」


ケイが大陸中にある五つの女神像を探して各地を回っていることを話した。

その女神像は、ダジュールの歴史を知るひとつの手がかりとなっていることを説明してから今までのことをオブスに説明した。

ケイの話を黙って聞いていたオブスとテジオラが話が、一段落したところで困惑した表情で質問を投げかける。


「・・・で、お前達はその各地の遺跡や女神像を巡って歴史の謎を解明しようとしているってことか?」

「まぁ、そうだな。それとこの大陸にはもうひとつ目的があって来たんだ」

「目的?」


怪訝な表情のオブスに、ケイがヴィンチェから聞いたもう一つの目的を話す。


「あんたのところにある、エルフから預かっている文献を見せてくれ」

「なんだって?」


ケイは怪訝な表情から険しい表情に変わるオブスを気にすることもなく、ヴィンチェから聞いた話をそのまま伝えたので、テジオラが知り合いなのかと尋ねるとちょっと腐れ縁でねと返す。

オブスは、テジオラからヴィンチェ経由でケイに話が渡っていることに、少しムッとしながらも話を続けるように即した。


「俺が聞いた『一つを守るために三つを建て、生け贄を捧げた』という一節だが、あれはバナハにある試練の塔のこと示しているんだ」

「あの塔がか?どういうことだ?」

「あの塔はペカド・トレと言って、本来は四つあったようなんだ。しかも1500年より前に建てられた建造物である可能性がある」


ケイは今まで見聞きしてきた事を一部推測を交えつつ説明をした。

すると、今度はオブスが口を開く。


「そういえば言い伝えでルフ塔にもあったという話は聞いている。今はヴノ山の溶岩の中だと言われているが、それもそのペカド・トレの一つだということか?」

「俺たちはそう考えている」

「親父、そもそもなんでエルフ族と獣人族が内緒で契約をして、エルフ族から文献を預かってるんだ?」

「それに関しては、代々伝えられていることで正確な事はわからない」


実はオブスも代々伝えられていることだったようで、詳しいことはわからないと答える。過去に文献の専門家を招いて解読を試みようとしたが、言語があまりにも違いすぎたために解読に時間がかかり断念してしまったそうだ。



「面白い話をしているのね?私も混ぜてくれないかしら?」



ケイがオブスに頼んでいると、急に扉が開かれ一人の女性が現れた。

肌を見せるような黒い服装に、紫の髪の間から角が生えた妖艶な雰囲気を持っている。


「ベリル、取り込み中だ。後にしてくれ」

「あら?いいじゃない?レッドボアを素手で倒したり、クラーケンを退治したりできる人がいるって聞いて興味が湧かないわけないし」


オブスは彼女が現れると、面倒くさいと言わんばかりの表情で追い返そうとしているが、それをのらりくらりと躱すと女性はケイの前に顔を近づけ話しかけた。


「あなたがケイね?」

「アンタ誰だ?」

「私はベリル。魔族の代表兼商人ギルドのギルドマスターをしているの」


ベリル

南大陸の魔族の代表兼商人ギルドのギルドマスター。

新しいことや面白いことにすぐに飛びつきたがる性格で、職務を放って外に出てしまうことがある。ちなみにナットのアイディアをサポートしているのは彼女。


「で、なんで俺のことを知ってるんだ?」

「なんでって、あなた結構有名人よ?」


どうやら行商人が今までのケイ達の活躍を見ていたため、本人の知らない間に一気に噂が流れ有名になったらしい。しかも王都での騒動も行商人らに見られていたらしく、それを聞いたベリルが飲んでいた紅茶を吹き出すぐらい笑ったと語る。

その話を聞いたケイは困惑した表情を浮かべたが、彼女にしてみれば新しいモノを見つけたと言わんばかりに目を輝かせている。


「実は私も、前々からダジュールの歴史について疑問を持っていたのよ」

「俺たちは地下遺跡や塔を見てきているし今までの事を考えると、他にも大陸があると考えている」

「その疑問を知りうるモノが、エルフ族と獣人族が交わした契約と文献のことね。それなら以前解読しようとしたけど断念しちゃったの」

「あんたも参加してたのか?」

「えぇ。少なくとも他の言語と組み合わさって書かれているようで、解読ができなかったの」


ベリルの話では、以前オブスの依頼で解読専門家のメンバーに彼女も参加してたがあまりの複雑な言語に途中までしか解読ができていないと言った。

その内容は四つの塔に関するモノだったが、彼女自身アスル語とベルテ語しかわからなかったため、文章の中に『太陽』『月』『星』『空』『大地』そして『鍵』の単語がかろうじて読めたそうだ。


「太陽と星は、おそらく俺とナットが持っているコレのことだろうな」


ケイとナットが二つの鍵を取り出すと、テジオラが驚きオブスとベリルが興味深そうに目を細める。


「ベリルの解読した中に『鍵』という単語があったと思うが、俺が推測するにそれは太陽のカギと星のカギのことじゃないかと思う」

「え?じゃあ、あと三つも同じようなカギがあるってこと!?」


シンシアが驚きケイの方を向くと他の三つの所在はわからないが、鑑定の結果を見れば結界を解く鍵となっているため、解読された単語と照らし合わせると今のところこれが該当するのではと返す。


「ナット、お前の見つけたそれは何処で拾った?」

「以前、エルフの森に行った際に女神像の近くに落ちていたのを拾いました」


その時エルフ族のセディルと上位精霊のダビアが同行していたが、彼ら曰くナットが見つけたから君が持ってたほうがいいと言われたと説明した。

本来であればエルフ族の物であろうと思っていたが、彼らに半ば強引に押し切られてしまったそうで、それ以来ずっと大事に保管していたのだという。


オブスはそれを聞いて息を吐くと、恐らく何らかの意味があるのだろうと悟る。


「親父、もしかしてナットからそれを取り上げるとか言わないよな?」

「ん?どういうことだ?」

「獣人族の掟で、未成年者が見つけた貴重なモノは代表が管理する決まりになっているの。しかし今回の件は、私もオブスが管理するなんてちょっと違うと思うの」


どうやら獣人族の掟で、子供を危険なことから遠ざけるために貴重な物は全て代表のオブスが管理するきまりになっているらしい。


ナットは14才と成人前なので普通なら回収して代表であるオブスが管理するらしいのだが、今回はナットがエルフ族から託された形で渡っているため、逆に回収してしまうと別の掟で窃盗にあたるため、罪に問われることになる可能性がある。


ケイが密かに星のカギを鑑定すると、所持者がナットになっていることが判明する。それを彼らに伝えると、オブスが再度ため息をつきナットにお前が持っていろと指示をする。


「ケイ、とにかくお前の言っていた文献は家にあるから明日以降にまた来てくれ。それまでに用意する」

「わかった。こっちもしばらく宿に滞在するから、もしいなかったらそっちに伝言を入れてくれ」

「承知した」


ケイ達が話を終えると、テジオラはこれからおつかいの報告がこれからあると言ったためナットと一緒に執務室を後にした。



「ナット君!ちょうどよかった!」


ケイ達が一階に下りると、先ほど会った受付の少女がナットを呼び止めた。


「ハナンナさん、どうしたんですか?」

「実は少し前から、ゼム達がナット君を探していたみたいなの」

「ゼム達が?どこにいるの?」

「スル大森林の前で待っているって言ってたわ。どうやらバニューボ達と一緒みたいで動けないそうなの。見に行ってくれないかしら?」


受付の少女の言葉にナットが了承すると、ケイ達はここで別れることを話してから宿に戻って行った。

オブスと約束を取り付けたケイ達は、この後何を知るのでしょうか?

次回の更新は11月27日(水)です。

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