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異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
101/359

98、南大陸へ

大変!大変!お待たせしました!

今回から南大陸ルフ島編の開始です。

王都アルバラントから一度港町アーベンに戻って来たケイ達は、そこから定期船で南大陸のルフ島にある港町レベノを目指した。



船で揺られること三日、ケイ達は無事に南大陸のルフ島に到着する。


南大陸のルフ島は大小八つの島が存在しており、そこに30万人ほどの獣人族と魔族が共存しなが暮らしている。特に明確な棲み分けは意識されていないようだが、自然に中央から東寄りが獣人族、西寄りが魔族となっているようで、船が到着する前に島の周辺を見たところ、獣人族と魔族の建物の様式が異なることが目視できた。


今いる港町レベノは、ルフ島の玄関口と呼ばれており多種多様な人種が行き交っている。この国では主に自作した工芸品などを取り扱っており、いろいろなタイプの職人が住んでいるとしても有名な大陸なのである。


「しかし暑いなぁ」

「さすがに南大陸は段違いに暑いわね」

「初めて来ましたが、マライダとは違いますね」


砂漠の国の暑さとはまた違った暑さに、アレグロとタレナも舌を巻く。


ルフ島は、北大陸のフリージアとは真逆の気候で一年を通して気温が高く、大陸の南側にはヴノ山が眼前に拡がりその周りを密林が取り囲んでいる関係で亜熱帯性気候だと考えられる。ある一定の時期には夕方にスコールが降ることもあり、南国のそれを思わせる。



船を下り、港から町の方に進むと南大陸独特の赤い屋根と紫の屋根ががついた木造の建造物が建ち並んでいるのが見える。


ちなみに赤い屋根は獣人族、紫の屋根は魔族が好んで使用している。

赤はレドという染料が使われ、紫はモヴという南大陸特有の染料を使用しているのだそうだ。景観自体はそれほど違和感がなく、むしろまとまりが見られる。


港から町に続く道の間に石垣の壁が建っている。これは海風から建物を守るために建てられたもののようだ。

その証拠に、店先に並んでいる商品に日光から守るために日除けを使用しているのだが、日除けの骨組みの部分が鉄のような素材が使われている。潮風によって鉄などが錆びるため、それを考えてのことだろう。



今回のケイ達の目的は、五つ目の女神像のありかを知っているであろうコボルト族のナットに会うこと。そしてエルフ族と獣人族が密かに交わした契約内容の確認である。


現在コボルト族は、南大陸に十人もいないそうなので、まずはどこに行けば会えるのかという確認が第一とする。あとヴィンチェの話では、テジオラの家系が大陸の代表ということから、その契約を確認する前にテジオラ自身に会っておく必要がある。ガレット村の騒動の時に、テジオラはルフ島の冒険者ギルドを中心に活動していることを思い出し、コボルト族の情報も兼ねて冒険者ギルドに足を運ぶことにした。



ケイ達は、町の中央に他とは少し大きめな二階建ての木造の建造物にやって来た。


入り口に剣を交えた看板が掛けられていたため、ここが冒険者ギルドのようだ。

中に入ると、全体的に木の匂いと冒険者ギルド独特の臭いを感じる。


ケイ達はテジオラの所在を聞くため、中央にある受付で業務している兎の耳がついた獣人族の少女に話しかけた。


「なぁこのギルドに、テジオラという冒険者がいるって聞いたんだがいるか?」

「テジオラさんですか?今、依頼で商業都市のダナンに向かわれておりますが、急ぎの用でしょうか?」

「いや、それほど急いでいない。いつ戻る?」

「既にダナンからの定期便が出航しているため、あさってには戻られるかと」

「じゃあ、伝言を頼む」

「はい。承ります」


生憎テジオラは島を離れているそうで、ケイは自分たちがルフ島に来ていることを伝言で伝えることにした。そして、受付嬢からギルドの三件隣に宿泊施設があることを教えてくれた。


「それと、コボルト族のナットってやつに会いに来たんだがどこに住んでる?」

「ナット君ですか?その子なら、北東にある島に住んでいます。町の東から島に続く桟橋がありますので、そこから歩いて行けますよ」


受付嬢からもしかして噂を聞いてやってきたんですか?と聞かれたので、なんのことだと返すと、ナットという人物は『神に気に入られた少年』として有名なのだそうだ。


「神に気に入られた?」

「この国の守り神である霊鳥・フォティア様に見定められたと言われています」


コボルト族のナットという少年は、霊鳥・フォティアの子供を従魔として育てているそうで、一時期それをひと目見ようと様々な人が訪れたということがあったそうだ。もちろんその時は、島の代表とテジオラが所属している冒険者ギルドが場を治める。


「まぁ、ナット君は人気者ですから」

「そうなのか?」

「えぇ。最近では、アシエル商会経由で自身が作製した工芸品なんかを販売しているようですし、人気も高いですから地元でもなかなか手に入らないんですよね」


と、受付嬢の少女がこのように教えてくれた。

もともと物を作ることが好きだったようで、彼が作る工芸品の珍しさに注文が殺到しているそうだが、本人曰く自分の作りたいものを作るという言葉をモットーとしているそうだ。なんとも芯が強い少年である。



冒険者ギルドを出てこのままコボルト族が住む北東の島に向かおうと思ったが、やはり新大陸に上陸したからには堪能したい。特に食べ物を。


「やっぱりそうだと思ったわ」

「まぁ、急ぐ旅でもないし、少しぐらいはいいか」


案の定シンシアとアダムが口に出すが、最近では諦めモードにも見える。


町を散策すると、どこからか肉の焼ける匂いを感じる。

その匂いを辿ると、冒険者ギルドから左手に向かった先に屋台が建ち並ぶ広場が見えた。


「兄ちゃん達!よかったら食っていかねぇか!」


虎の獣人族である男性店員が声をかけてきた。

どうやら先ほどの匂いはこの屋台から来ているようだ。


「これって焼き鳥か?」

「おうよ!今日は新鮮なダンドも入ったから、今焼いているところだ!」

「ダンド?」

「南大陸に生息する大型の鳥のことだよ」


屋台を覗くと、焼き鳥より一回り大きい鳥肉が串刺しされて炭で焼かれている。

通常はグーシーというガチョウに似た鶏肉を使っているのだが、今日は珍しく大型のダンドが手に入ったようで、店員はホクホク顔で語る。


レイブンの説明によると、ダンドというのは南大陸のヴノ山中部に生息する鳥で、赤と青のカラフルな外見に70~1mほどの大きさだという。

市場には出回らないが、味付けなしで濃厚な味が楽しめるためグルメと呼ばれるマニアがわざわざ食べに足を運ぶそうだ。


「まぁ、一本焼いたから食ってみな!」


店員は丁度焼けた分を差し出し、ケイは豪快に頬張る。

味は焼いた鶏肉の味だが、外側の皮のパリパリ感と内側はジューシーで味付け無しで、肉本来の質感が楽しめる。


「旨っ!」

「そうだろう!そうだろう!他のも焼けたからもっと食っていけ!」


店員に即され、ケイ達は焼き鳥をいくつか購入し頬張った。

肉は女性陣にも好評のようで、シンシアに至っては三本も平らげたのは内緒の話。



屋台を後にしたケイ達が次に向かった場所は、町の一画にある雑貨屋だった。


「これは何かしら?」

「見たことがないな?」


アレグロとレイブンが、店先に配置されているある物に疑問を示した。

ケイが二人の隣からそれを見ると、カゴの中に球体に色鮮やかな糸が模様を形作りながら巻かれている物が積まれている。


「蹴鞠に似てるな」

「蹴鞠?」

「俺の国だと娯楽の一種で、蹴って遊ぶものに近いかな?」


手に持ってみると球体の中に何かが入っているようで、カラカラと音が鳴った。

大きさは大体20cmほどで、色鮮やかな糸が太陽の光を反射してキラキラと光っている。


「おや?お客さん達、それ気になるのかい?」


店先でたむろしていたケイ達に、店員とおぼしき牛の獣人族の女性が顔を出す。


「これってなんですか?」

「あぁ。それはアンバロだよ」

「アンバロ?」

「鹿の革を球体状に加工して、虹蜘蛛の糸で模様を施しながら巻いていった玩具だよ。ナットの作った物で、子供達にも人気があるんだ!」


レイブンが示したモノに店員が答えると、どうやらこのアンバロはナット発案のようで、ケイが言った蹴鞠のようなものらしい。時には、一日に五十個も売れることもあるそうだ。虹蜘蛛の糸は一つとして同じ配色をしていないことから人気が高いのだろう。

ちなみにアンバロに使われている糸は、南大陸にしか生息していない虹蜘蛛という魔物から作られる特殊な色の糸で、重要指定生物に認定されているため、捕獲や飼育は御法度だそうだ。


ケイはその内の一つを手に取り、店員にお金を支払い購入した。


「綺麗な色ですね」

「そういえば前に、ヴノ山近くの湿地帯に金色の蜘蛛がいるって聞いたことがあるわ!」

「何それ!すんげぇ気になるんだけど!」

「南大陸の特徴として、魔物も色鮮やかなモノが多いと言っていたな」


ケイの好奇心をくすぐるアレグロの話に、レイブンが補足を付け加える。

この大陸は全体的に華やかな印象を持っているといったところだろう。



日も沈みコボルト族の訪問は明日にしようと、ギルドに教えられた宿泊施設に足を運ぶ。宿泊施設は南大陸にこの一箇所しかなく、二階階建ての建物は周りのどの建物より豪華な印象を持つ。


部屋割りはちょうど個室が六部屋空いていたため、そこに泊まる。


「そういや、ベルセとヴィンチェからメールが来てたな」


久々の個室に羽を伸ばしていたケイが、ベッドに横になった状態でそれを思い出した。鞄の中からスマホを取り出し、ベルセのメールから開く。



ケイさんへ


ベルセです。先日はいろいろとありがとうございました。

今回はこちらでも進展がありましたので、ご連絡いたします。


まず、アルペテリアから当時の記憶が少し戻ったようなのでお話させてください。


彼女がその記憶を思い出した時、私たちに酷く怯えていました。

時には錯乱することもあり、落ち着いた頃に話を聞いてみたところ、

「父親に裏切られた。自分を氷塊に閉じ込めたのは父とビェールィ人だ」

と述べたのです。


しかも驚いたことに、ビェールィ人はワイト家に容姿がよく似ていたそうで、それが彼女の恐怖心をかき立てたのかもしれません。


今はまだ緊張した場面もあるようですが、比較的穏やかに過ごしています。

最近では、侍女のポーラが彼女に言葉を教えたり、家事を一緒に行ったりと精力的に活動しているようです。


それに、アレグロさんとタレナさんの事をすごく気にかけていました。

アルペテリアは、次に会う時までにこちらの言葉を覚え、二人と会話をすることを目標にしているようです。


もし、また何かわかりましたらご連絡いたします。



ベルセ



次にヴィンチェからのメールを開く。



ケイへ


久しぶりだね。

僕たちは今、フリージアとウェストリアの境にあるオネットの町に来ているんだ。

ここに来る途中にカロナック大橋という大きな橋があるんだけど、行ったことはあるかい?


実はこの橋に不思議な箇所をみつけたから連絡をしたんだ。


カロナック大橋の中間部分にあたる部分なんだけど、一部別の素材が使われている形跡があったんだ。

橋自体は大理石で作られているようで白を基調としているんだけど、その部分だけ微妙に色が違ったんだ。


なぜ知っているのかだって?たまたまエイミーが見つけたんだ。


僕も鑑定を持っているからその部分を確認したんだけど、青銅のようなモノで補修されていて、その上から砕いた陽花石というものが使われていた形跡があった。

その補修された部分は大体5~6mほどの幅で、僕はそこから海に向かって別の場所に繋がる橋がかかっていたのではと考えている。


確証はないが、この橋を管理しているのが聖都ウェストリアらしい。

これからそれを確かめに行ってみることにするよ。


また何かあったら連絡する。



ヴィンチェ



二人の連絡内容はケイも驚きの内容だった。


特にベルセのことは、アレグロとタレナにも伝えた方がいいのか?と考える。

しかしいくら記憶がないからとはいえ、アルペテリアは二人の妹だ。

折を見て話をした方がいいだろう。


ケイは、二人に返信とこちらでわかったことをまとめて就寝することにした。

ベルセとヴィンチェの内容に驚きながらも、次回はコボルト族のナットに会いに行くことになります。

次回の更新は11月18日(月)です。

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