表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界満喫冒険譚  作者: GDKK
大陸編
100/359

97、明かされた文献

王立図書館のバートの伝言でケイ達はアルバラントに向かった。

以前、彼に託した腕輪と共にあった本には何が書かれているのか?

エミリア達と別れたケイ達は、バナハを離れて伝言を残した三人目である王立図書館のバートに会いに行くために、久々の王都アルバラントへ向かうことにした。



数ヶ月ぶりの王都ということもあり、紆余曲折後に訪れるにはいささか足が重い。

そうは言っても以前バートに託した本を解読して貰っている手前、子供の様なわがままは違う気がする。


バナハからアルバラント行きの定期馬車が出ていたため、それに乗り込み目指すこと数日。馬車は予定通りに王都アルバラントに到着した。

お昼を少し回った頃に到着したため、近くのレストランで腹ごなしを下のち、王立図書館に足を運ぶ。



「館長のバートに取り次いでくれ。冒険者のケイと言えばわかるはずだ」


館内に入り、受付に居る眼鏡を掛けた女性にバートに会いに来たと述べると、今は来客対応中だと返事が返ってくる。しかし予め話は聞いていたのか、別の応接室に通されそこで待つことになった。


「でも、試練の塔にあった本には何が書いてあるのかしら?」

「恐らく歴史に関しての何かと考えられるだろうな。誰かの手記の可能性もある」

「腕輪と一緒にあったから持ち主の物ってこと?」

「前にエルフの里で会った、トレントとアンダラが言ったアスル・カディーム人の王の物ということか?」

「たぶんな」


シンシアとレイブンの思ったことが正解だとは限らないが、バートはあの本には少なくとも四つの言語が使われていると言っていた。そう考えると、その持ち主はよほど言語に精通しているのだろう。そしてケイが所持している腕輪のことも、当時の物である可能性がある。



「皆さん、お待たせしました」

「久しぶりだな」

「お変わりなさそうで安心しました」


暫くして、応接室にバートが現れた。

相変わらずくせ毛に寝癖を重ねたような髪型をしていることから、忙しいのか元より外見にあまり気を使わないのかどちらかなのだろう。


ケイは挨拶もそこそこに、さっそく話を切り出した。


「さっそくだけど、わかったことを教えてくれ」

「はい。お預かりした本ですが、実に興味深い内容でした。まず、この本には四つの言語が使われています」

「前に渡した時に言っていたアレか?」

「はい。全体的にアスル語が中心でしたが、ところどころに別の言語が記されていました。どうやらこの本の持ち主は、随分堪能で知識的な印象があります」


バートが解読したところ、他の言語であるベルテ語・アマリリョ語・ロホ語も同一の人物が記していたようで、幅広い知識量を有していたと思われている。


「その内容は、アスル・カディーム人が他の種族に世界発展のための知恵を授けたとありました」

「文化を進めるための手助けと言ったところか?」

「そのようですね。彼らは知恵を授けるために、他の種族と交流を開始したと明記されています」


この本の人物はアスル・カディーム人に関連のある人物のようで、当時は知恵を対価に交流を深めたそうだ。


「で、他の種族って?」

「ここにはアスル・カディーム人の他に四つの種族が記されていまして、ビェールィ人・アグダル人・シャムルス人・アフトクラトリア人が存在していたそうです」

「その種族ってどんなやつらなんだ?」

「この本は参考資料というより手記のような内容でして、もともとこの大陸に住んでいたのは、ビェールィ人・アグダル人・シャムルス人の三種族で、ビェールィ人は北大陸から西大陸にかけて存在し、アグダル人は東大陸から南大陸、そしてシャムルス人は中央大陸と西大陸の一部に存在していたようです」


本の内容にはそれぞれの容姿のことも触れていたようで、ビェールィ人は銀髪に青い瞳、アグダル人は金髪に耳の長く、シャムルス人は、われわれと同じ普通の容姿をしているなそうだ。


ビュールィ人は、以前フリージアの地下遺跡の隠し部屋で見つけた手記の内容と照らし合わせると、ワイト家がその容姿に該当する。

アグダル人は恐らくエルフ族のことだろう。

シャムルス人は我々と同じと言うことであるから、人族と考えられる。


「それとアフトクラトリア人ですが、彼らの詳細は触れられていませんでしたが、どうやらアスル・カディーム人と他の大陸からやってきた様な記述がありました」

「やっぱり他の大陸があったってこと?」

「記述が間違いなければ、おそらくは・・・」


シンシアが驚きの声を上げた。


しかしケイは、ある程度推測していたのであまり驚く様子はなかった。

エルフ族のセディルが召喚した上位精霊・ダビアの話にも、ドゥフ・ウミュールシフという別の大陸が存在していたことが語られていたし、魔導航海士のダットが体験した不思議な出来事も他の大陸の存在を考えさせられるような様子だった。


「それと、皆さんがおっしゃっていた試練の塔と地下遺跡のことも書かれていました」


バートが解読した内容は、当時地下遺跡にはアスル・カディーム人が住んでいたとおぼしき箇所が見つかったのだ。

それにアスル・カディーム人はアフトクラトリア人に従っていたようで、彼らの王を【帝王】と呼び、アフトクラトリア人の国を【帝国】と呼んでいたそうだ。

そして他の種族と交流するため、アフトクラトリア人とアスル・カディーム人は海を渡ってこの大陸に来た記述も残っている。


試練の塔=ペカド・トレは、当時互いの友好を記念して建てられたモニュメントのような物だったようで、建てられた場所もケイ達が巡った場所と一致していた。

しかし何故その塔がペカド・トレ(罪の塔)と呼ばれるのかは記されていない。

それと、ヴィンチェ達が聞いた『一つを守るために三つを建て、生け贄を捧げた』という部分も謎である。


ケイがフリージアで入手した手記には、アスル・カディーム人を裏切ったと記されていたことから、状況的に何らかの原因で争いが起こったのだと考える。

しかし、どうも塔の話と合っていない。


ケイは、また今度それぞれについて考え直す必要があると考える。



「あと地下遺跡のことですが、当時の状況を記入した箇所もあります。こちらを見てください」

「これは、大陸の地図か?にしてはなんか変だな?」


バートが本を捲り、真ん中辺りを開くとケイ達に見えるようにその箇所を示した。

彼が指し示した箇所を見ると、大陸全体図の中に別の線で何かの全体図が記されていた。


「私はこれを、地下遺跡の全体図と考えています」

「まさか!?」


ケイ達が驚きの声を上げるなか、バートは独自に地下遺跡の情報も収集していたそうで、遺跡の位置などを総合的に考えるとかなりの広さが地下に拡がっていたようだと結論づけている。


「ち、ちょっと待って!この図だと、南大陸に繋がる海の下にもその場所が存在したということになるわ!?」

「私も海の下に遺跡があるとは考えづらいのですが、この情報も無視出来ません」


ダジュールの地図を見るとわかる通り、南大陸だけ離れた場所に存在している。

大小八つの島で構成されている南大陸は、船で三日ほどの距離にある。

したがってシンシア達には、海の下に地下空間が拡がっているとは想像しづらかったのだ。


「たぶん海底トンネルか何かだろうな」

「海底トンネル?」

「簡単に言うと、水域でも行き来できる通路みたいなものだ」


バートの話は本の中には地下遺跡建設のことも触れており、図解込みの内容だったと述べる。ケイ達がその箇所を見てみると、文章はわからないが図を見る限り海底トンネルの建設方法の一つであるシールド工法によく似ている。


シールド工法とは、掘削面を小さく区画ごとにわけ、天井や壁を固定しながら掘り進めるといった技法である。その本には全体の完成図もあり、地下鉄のトンネル部分を思い浮かべて見ればわかると通りである。


そう考えると、当時の技術は今よりも進歩していたことになる。


他のみんなが知らなかった技術があった事を考えると、文化は一度退化したのだろうとケイは考える。


「俺たちも地下遺跡をいくつか行ってみたが、人が生活していた形跡があった」

「それはこの本にも書かれていました。どうやらアスル・カディーム人は地下遺跡を築き、暮らしていたものと思われます」

「大陸の外に自分たちの国があるのにか?」

「それに関しては詳細はわかりません。アフトクラトリア人が命じたのかまたは独断で建てられたのか」


地下遺跡も遺跡と言うより、一つの国といってもいいほどの領域である。

アスル・カディーム人は、一体何を考えてそのような広大な地下遺跡を建設したのだろうか?


「じゃあ彼らと来たアフトクラトリア人も一緒に住んでいたの?」

「その記述は確認できませんでしたが、彼らは彼らなりに他の種族と交流をはかっていたという可能性はあります」

「別々で行動していたってことか・・・」


なぜアスル・カディーム人とアフトクラトリア人は一緒に行動していないのか?

そこにはなにかあるのではないかと考えざる終えない。


バートから今のところ読み進められる部分は以上のようだった。

ケイは今まで見聞きした物を元に推測してきた部分を一度バラして、再度考え直す期間がいるなと独りごちた。


「ところで、ケイさん達はこれから何処へ?」

「歴史のヒントとなる物が南大陸に存在するらしいから、それを見に行ってみる」

「獣人族と魔族の大陸ですね」

「あぞこには魔族もいるのか?」

「南大陸は八つの島で構成されている特殊な島で、獣人族と魔族は互いにほどよい距離を保って共存しているようです。もしかしたら、なにかわかるのかもしれないですね。私の方でも他になにかあるか調べてみます」


バートは、ケイから預かった本のさらなる解読と調査を重ねると話し、ケイ達はヴィンチェとダットから聞いた話を元に南大陸へ渡ることにした。

当時の暮らしぶりの一端を垣間見たケイ達は、ヴィンチェと魔道航海士のダットの証言を元に南大陸へ渡ることになった。


次回の更新は11月15日(金)です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ