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神が死んでしまった!?

 ――龍神による一方的な殺戮劇が繰り広げられてから数分後。ちょっとした惨劇がトラウマになりつつ、恐る恐るお伺いを立てる。


 やばい、今も手足の震えが止まらない。


「あ、あの。殺してしまって良かったんですか?」

「別に問題はないさ、どうせ五十年くらいすれば蘇るんだから。私が閉じ込められた五百年に比べればクソみたいなものだ」


 ……その可愛い顔してクソとか言うの、止めてもらえませんかね? あ、やっぱりなんでもないです。


 でも、さっきの神様って人神って呼ばれてたくらいだから、たぶん人間界の神ってことだよな? 何気にとんでもない事態になっていないか?


 これってやっぱり俺のせい――いや、それは考えないようにしよう。心が折れてしまいそうだ。


 規則らしき百年を大幅に超えて五百年も龍神を閉じ込めてたくらいだ。閉じ込められてた側が怒るのも無理はないし、流石にこの結末は自業自得な気がしなくもない。


 龍神がその血まみれの手を振ると、血が消えて再び真っ白な手に変わる。


 さっきまでは全身に返り血を浴びてたから見ているだけで怖かったけど、今はもう何事もなかったように静かだ。


 今ならこの後のことを聞いても大丈夫かも……。


「先ほどの人神の口調だと、俺のことをどこかに転移しようとしていたみたいでしたけど、何処に転移させる予定だったんでしょうか?」


 ピシリと龍神の体が固まる。ああ、多分考えてなかったんだろうなあ。


「……すまない。勢い余って殺ってしまったから、あと五十年はわからない。あと、転移ではなく転生だな。魂魄はあるようだが肉体はここにはない」

「ってことは、俺はこれから五十年もここで待っていないといけないんですか?」

「いや、人の魂魄が五十年も肉体を離れることはできないな。このままだと近い内に消滅するぞ」

「それなら、出来れば元の世界に戻してもらうことは……無理そうですね」

「すまないな」


 龍神のやっちまった感満載の表情を見る限りは、恐らく元の世界に戻ることは不可能だろう。


 だけど、人神が何のために俺のことをどの世界に転生させようとしたのか、それが分からないことにはどうしようも――。


「……いや、ちょっと待て。行き先と思われる世界に薄っすらとだが霊糸が繋がっているようだ。途中までは準備していたのか。これなら少しばかり難しいが転生させてやれるぞ」

「本当ですか!? 違う世界ってことは異世界転生ってやつですよね!?」


 興奮してしまった勢いで、ついつい龍神に駆け寄って両肩を掴んでしまう。


 近距離で龍神の端正な顔がより鮮明に目に入ったことで、先程の惨劇が頭をよぎる。


 やばい、殺されるかも……。じっとこちらを見つめる龍神の視線に冷や汗が止まらない。


「異世界転生か、確かにそういうことになるな」


 よかった。怒ってないみたいだ。だったら龍神の気が変わる前にさっさと決めてしまおう。


「では、それでお願いします。ところでそこはどんな世界なんですか?」

「有り体に言えば剣と魔法の世界という分類だ。ただ、管理者である人神が死んでいるからな……」

「やっぱり神様がいないと都合が悪いんですか?」

「普通なら少しくらい居なくても問題はない。だが、あいつはいたずら好きで多方面に色々と反感を買っているからな」


 ……そんなに色々やらかしてるのか。俺はいったい何をさせられる予定だったんだ?


「ってことは、悪い神様だったってことですか?」

「いや、それほどでもないが……。この機会に他の神や従属神たちがこれまでの仕返しを目論(もくろむ)もこともあるだろうな。そうなると、脆弱な者が生き残っていくのは難しいかもしれない」


 話を聞いているだけですっげえ嫌になってくるけど、だからってこのままここで消滅するまで待つなんて選択肢はさすがにありえない。


 それにこの龍神は俺のことを心配してくれているみたいだ。それならダメ元で……。


「あ、あの!」

「ん、なんだ?」

「俺がその世界で生き残れるように手助けしていただくことは?」

「手助け、か。……よし、そういうことなら私が恩恵を与えてやろう。牢から助けてもらった恩もあるしな」

「そ、それは願ってもないですけど……、また罰で牢に閉じ込められませんか?」

「その罰を与える人神は死んでるからな。問題ないだろう」


 割と自由だなあ。


 少なくとも前回の罰に対して反省はしていないらしい。まあ、俺的には助かるけど。


「それじゃあ生まれてすぐに恩恵に守ってもらえるとか?」

「生まれてすぐに恩恵には目覚めないだろうな。身体と馴染むまで――転生後の世界で言う、成人の儀には私の恩恵に目覚るはずだ」

「それだと成人するまでに死んだりしませんかね? やっぱり一緒に来ていただけるとか?」

「一緒に行くのは無理だ。私が直接行くと格が違いすぎて世界が崩壊するからな。神は神託を授けたりするが、世界に直接介入することはない」


 なにそれ、怖い。


 確かにさっきの殺戮劇からしても圧倒的だったからなあ。あれ、また身体が震えてきたよ?


「そう心配するな。一緒には行けないが、成人して恩恵を授かるまでは死ぬことが無いように、こちらから守っておいてやる」

「守っていただけるなら助かります。ちなみに成人後は?」

「そこから先は自分の力で頑張れ。というか、せっかく私が恩恵を与えるんだ。思うように好きに生きればいい。……できれば従属神が起こす問題を解決してもらえれば助かるがな」


 ……確かに人神が死んでしまった一因は俺にもあるからなあ。俺に解決できそうな問題であれば頑張ってみてもいいかもしれない。


「そういえばいただける恩恵って、どんなものなんですか?」

「【超会心】というスキルになる。簡単に言ってしまえばものすごく強力な一撃を放つことができる。山は砕けるし海も割れるぞ」


 モーゼか。


 いかにもこの龍神様らしい大雑把なスキルだ。


「では、そろそろ始めるぞ。あまりのんびりしていては霊糸が切れてしまいかねん」


 そう言葉にすると、龍神のしなやかな手が両頬を優しく包み込み、微笑みながら艶のある口を薄っすらと開き顔を近づけてくる。


 必然的に胸の鼓動が高鳴ってしまうのを押さえられないまま、目を閉じて――


 ――そして……、ばっくんとひと呑みに食べられた。え!?


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