プロローグ 神様に殺されました。
なんとなーく書いてみたくなったので書きました。
小説を書いて投稿するというのは初体験なので、見苦しい点が多々あるかと思いますが、少しでも面白いと思ってもらえたら嬉しいです。
俺、竜崎 仁は逃げていた。そりゃあもう全速力で。
「クソッ、どうなってんだ!?なんで追いかけてくんだよ!!」
バイクは聞いたこともないような轟音を立てる。景色が流れるように過ぎ去っていく。それでも、後ろから来る「奴」との距離は縮まっていく。唸り声をあげる鉄塊が放つ光がじわじわと大きくなってゆき、俺に残された猶予が縮まっていくことを感じさせる。
「なんでっ…なんでトラックが追いかけてくんだよぉっ!?」
俺の叫びは虚しく虚空に響く。そう、俺を追いかけてくるのは、ギラギラとヘッドライトを光らせ、エンジンから重く地響きのような轟音を響かせながら迫ってくる大型トラックだった。
「このままじゃ追いつかれる…早く、早くなんとかしないと…!」
俺は誰にともなく言うが、既に思いつく限りの手で失敗している。曲がりくねった道で撹乱しても完璧に先回りされ、踏切をギリギリですり抜けても普通に突き破って追いかけてきた。唯一の救いはここがど田舎で、いくらバイクで飛ばしても誰ともかち合わずに済んでいることか。
ダメだ、もう追いつかれる…
諦めかけたその時、道の片隅に人1人がギリギリ通れるかという細さの小道が目に映る。あそこに行けばなんとかなるかもしれない。
「どうせ失敗したら死ぬんだ…いくぞっ!」
トラックはもうすぐそこに迫っている。俺は意を決してハンドルを切り、小道へ飛び込んだ。
ガリガリと火花が上がり、俺は空中へ投げ出される。空中で一瞬停止したような感覚があった後、俺は勢いよく地面に叩きつけられた。
「痛ってえ…。あれ?でも俺、生きてる!!やった!助かったんだ!」
俺が叫んだその時、
ガシャン。
その音に恐る恐る俺が振り向くと、俺の相棒…苦楽を共にしてきた大切なバイクが見るも無残に踏み潰されていた。
「あああぁっ!俺の魂があああぁっ!」
決して高いとは言えない中古のオートバイだが、コツコツバイトして貯めた金で買った、俺にとっては命より大切な相棒だった。それが今、俺の目の前でただの鉄の塊になっている。
俺は絶望感に苛まれて膝をつく。そのとき後ろから俺に話しかけてくる奴がいた。
「へえ、あのトラックから逃げ切るなんてやるじゃん」
俺は驚いて振り向く。さっきまでそこには誰もいなかったはずだ。この路地は狭い一本道で、そもそも地元の人間以外は存在すら知らないような場所なのだ。
振り向くとニヤニヤと笑いながらこっちを見る女がいた。人を小馬鹿にしたような表情とパステルカラーの派手な衣装が妙にムカつく奴だ。
「私の名前はシエル。君たちの言葉で言えば神、みたいなものなのかな…って、君は何やってんのさ」
「あー…圏外になってら。さっきの衝撃で壊れたのかなあ…。お前スマホ持ってない?このバイクレッカーに出さないとダメなんだが」
「ふっふっふ…。この私の言葉を無視しようとするとはいい度胸じゃないか。君の電話を使えなくしたのは私だよ。正確には、君と私しかいない結界にいるから使えない、と言ったほうがいいのかな」
目の前の自称神はドヤ顔でこっちを見る。馬鹿らしくて無視しても、わざわざズイズイと俺の視界に入って話しかけようとしてくる。
「君、ここに来るまでに誰かと会ったかい?いやそれより前、なぜトラックに追われていたのか覚えているかな?」
そう言われてみると、さすがに田舎とは言え、あれだけバイクを走り回らせても一度も他の人に会わなかったのは不自然だし、今までの経緯も靄がかかったように思い出せない。追われていてパニックになっていたから気づかなかったようだ。
「…わかった。仮にお前が本物の神だとしよう。それで、俺に何か用なのか?…まさかあのトラックはお前が仕向けたのか?」
「そうだよ。トラックを操ってたのも、君の逃走ルートを読んで先回りさせたのも私の力!すごいでしょ。まあ、逃げ切られるのは予想外だったけどね」
こいつはヘラヘラと笑っているが、つまり俺はこいつに殺されかけたってことか?
神が俺を殺そうとしている。妄言と思いたいが、こいつの言うことを信じかけている俺がいた。
「なんで俺を殺そうとしてるんだよ!?俺、別に宗教とかはやってないけど、神に恨まれるようなことはやってないはずだぜ!?」
俺は必死で反論するが、シエルは笑って流す。
「恨むなんて心外だなぁ。今、人間の世の中じゃトラックに轢かれて異世界転生ってのが流行ってるんだろ?面白そうだから、君に体験させてあげようと思ってさ」
こいつの言っていることが何一つ理解できない。異世界転生?面白そうだから?俺の命はそんな理由で奪われるってのか?
いや、絶対そんなことさせない。絶対逃げ切ってやる。神だろうがなんだろうが知ったことじゃない。
俺は決心して一歩後ずさる。かかとが何かにぶつかった感触がして、何かが転がるような音がする。見ると、バイクのハンドルが外れて転がっていた。根元からポッキリと折れて、短い鉄パイプのようになっている。武器になるかもしれない。俺はさっと拾い上げて体の前で構える。
「へぇ、抵抗するのかい?いいねぇ、そのぐらい生きが良くないと」
シエルはスッと右手を上げて俺の前に突き出す。俺は払いのけ__ようとしたが、体がピクリとも動かない。
「なっ…!?」
「暴れられても面倒だからね。悪いけど、チャチャっと終わらせてもらうよ」
シエルが人差し指を立てると、それに呼応するように俺の体が宙へ浮き上がる。逃げようとしても体が動かない。声にならない叫び声が漏れる。
「じゃあね。生まれ変わったらまた会おう」
パチンと指を鳴らすと俺の体は小道から吹き飛ばされ、道路の真ん中で転がった。起き上がろうとした俺の目に飛び込んできたのは、目の前まで迫り来る巨大なトラックだった。
そこで俺の意識は暗転し、その世界から竜崎 仁という人間はいなくなった。
プロローグなのに長くなってしまってすみません。
ここはこうした方がいいんじゃないか、話が長くて読みづらい、単純に面白くないなど、意見があればぜひ感想欄に書き込んでください。