野球部補欠と女子卓球部エースの、野球はそっちのけで恋する話
まずは登場人物の紹介から。
野球部補欠
今市 哲郎
あだ名 補欠 太郎
女子卓球部 エース
譜久村 愛
この子も『愛ちゃん』
僕の名前は今市哲郎。
彼女の名前は譜久村愛ちゃん!
僕と彼女は小学校、いや幼稚園の時からの幼なじみ。
彼女、譜久村愛ちゃんは、幼い時から、天才卓球少女と呼ばれていた。
卓球の練習はつらかったけど、がんばっていた。
時には自分より年上の相手と試合をしたりもした。
試合で負けたりした時などは、思いっきり泣いたりして、それでも泣きべそかきながらラリーの練習をしていたのを、
僕は今でも昨日のことのように覚えている。
そして時は流れ…。
僕らは高校に進学。僕は野球部に入り、愛ちゃんはもちろん卓球部。
僕らの進学した高校は、県内でも屈指のスポーツ強豪校で、青島山田高等学校といった。
この時代はスポーツエリートになる者が、世の中のエリートとして社会をリードしていくような時代になっていた。
おりしも2020年の東京オリンピックの開幕が迫っていたため、どのスポーツでも、人材育成が急務だったんだ。
そして我らが譜久村愛ちゃんは、我が青島山田高の卓球部のエースとなり、それと同時に2020年東京オリンピックの強化選手にも指定され、テレビのCMや、スポーツバラエティーの番組の対戦コーナーなどにも呼ばれるようになっていた。
さすが、譜久村愛ちゃん。我らがアイドルだよ!
それにひきかえ、僕は、今市哲郎の方は、野球部に入ったものの、万年補欠の扱いだった。
監督からもいつもどやされていた。
「こらあ!今市!ちゃんと練習せえや!
そんなんだから、お前は万年補欠なんじゃ!このボケナスが!」
青島山田高の野球部は、県内でも屈指の強豪校で、毎年のように、高校野球では甲子園に行くような強豪校。
全国的にも知名度が高くなっていたため、県外からも入部希望者があとをたたなかった。
だから県外から来たような部員たちとともに、レギュラーポジション争いをしている。
しかし僕は、いまだにレギュラーを獲得することができないでいた。
万年補欠の扱いで、今では「補欠太郎」などというあだ名までつけられるくらいだった。
てか、青島山田高に限らず、私学の野球部はほとんど、県内のやつらじゃなくて、
全国から優秀な選手を集めた、いわば寄せ集めのような感じだった。
これじゃあ、名前だけ県代表で、全国からの寄せ集めの、多国籍チームのようだ。
そんなやつらを、県代表として応援せなあかんのか、と思うと、やってられんわ。
と思いながらも、今日も今市哲郎は、ノックの球を満足にキャッチすることができずに、監督からどやされていた。
我が校のアイドルというのも、男のアイドルと、女のアイドルとがいてさ、
男のアイドルは、それこそ全校女子生徒からキャーキャー言われるようなやつのことを言う。
僕らの学校でいえば、野球部にもいた。サッカー部にもいた。あとは、バレーボール部のかっこいいやつと、なぜか男子シンクロ部にもいた。
が、しかし、僕らの学校の場合は、男のアイドルを追っかけているような女たちは、たいがいイケメンを追っかけるしか能がないようなブスが多いと、これば僕じゃなくて、僕の友達が言っていたこと。
最近はスポーツエリートも、女のアイドル選手が増えてきたような気がする。
もちろん追っかけるのは、僕らのように、お世辞にもイケメンなどとはいえないような、いわゆるアイドルヲタ男どもと呼ばれるような面々。
そして、そして、我が校一番のトップアイドル選手といえるのが、女子卓球部のエースである、
そう、我らが、譜久村愛ちゃんなのである!
本当に譜久村愛ちゃんが我が校のアイドルでよかったよ!
そして僕らは野球部の練習の合間に、女子卓球部の練習を見に行っていた。
すると、愛ちゃんが僕に気づいたのだった。
「今市哲郎君?何してるの?こんなところで。
もしかして、私たちの練習見に来たの?」
「あ、いや、愛ちゃん。
やっぱり愛ちゃんはすばらしいなって。
やっぱり愛ちゃんが僕の幼なじみでよかったって。
今や愛ちゃんは女子卓球部のエースにして、2020年東京オリンピックでの活躍が期待される、強化選手にも指定されているわけだから。」
「そうなのよ。だけどそれでも、必ずオリンピックに行けるわけじゃないからね。
ところで、哲郎君は野球部のレギュラー取れそう?」
「いやー、それが実は、まだ補欠なんですよー。」
「いくら哲郎君でも最初からレギュラーは取れないか。
だけどがんばっていればレギュラー取れるって、愛ちゃんは信じてるから。がんばってね。」
「うん、わかった!それじゃ、そろそろ練習に戻らないとな…。」
僕はまた、野球部の練習に戻っていった。
愛ちゃんはかわいいな、かわいい…。
他の男になんか渡してたまるか!僕のお嫁さんにするんだ!だけどそのためには、野球部の練習もがんばって、まずレギュラー取らないとな…。




