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NOAH ~希望と地上の守護神~  作者: 地理山計一郎
第1章「ノア,東京に現る」
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最終話「またいつか」

ノアはガルタークに反撃させまいと,ガルタークに突進し,襲いかかる。

ガルタークはノアを近づいてきたところで,口から唾液弾を発射した。

ノアはよけずに手のひらでそれを受け止めた。凝結した唾液弾は手のひらに刺さったものの,装甲の表面で止まり,奥には刺さらなかった。

ノアは馬乗りになり,唾液弾を引き抜きガルタークの右目に突き刺した。

『ギャオオオオオオオオオオオッ!!』

ガルタークはあまりの激痛に叫び声を上げた。ノアの右目に突き刺したものを,今度は自分で受けるのだ。

ノアは,ガルタークが右目の痛みに悶えている隙に,下腹部の袋を握り,そのまま思い切り引っ張って袋をガルタークの下腹部から引きちぎった。

『オオオオオオオオオオオオオッ!!』

ノアは右手に力を込め,自身の手の上で脈打つその袋を握りつぶした。

袋の中から血が飛び出す。恐らく,袋の中に入っていたガルタークの子どもだ。

「・・・・・・」

俺はその光景を見て,胸が痛くなった。自分が殺したわけではなく,自分の子でもなく,さらに,相手は人類の敵だが,なぜだか胸が痛くなった。外敵相手にこんな気持ちになってしまうのは,俺自身が甘い証拠なのかもしれない。

『・・・・・ッ!!!』

ガルタークは自分の子が殺され,右目の痛みも忘れ,ノアに突進した。

ノアはそれを真正面から受けた。すると,体重が重いはずのノアが後ろに下がった。

母は強しというべきか,それとも,怒りで力が上がったというべきか・・・・どちらにしても,そのパワーは前と比べて上がっていた。

ガルタークはぐいぐいとノアを押していく。ノアもそれに押され,どんどん後ろに下がってしまう。

その時,ノアは両肩,両脚,背中内部に搭載されたブースターを起動させ,ガルタークとともに空への舞い上がった。

『ウオオオオオオオオオオオオオッ!!』

ノアは低空飛行でガルタークをコンクリートの地面に引きずり回る。

ガルタークはノアの攻撃受けながらも,ノアの片足を尻尾で巻き付け,渾身の力を込め,体の重いノアを投げ飛ばした。

ノアは投げ飛ばされるも,空中で体勢を立て直し,上空へと上がる。

ガルタークもノアを追い,上空へ。

「ノア!!」

俺はノアとガルタークがすぐ確認できるように,広くて見晴らしのいい場所に向かって走った。

「ノア・・・・死ぬなよ!お前は俺にとっても,みんなにとっても最後の希望なんだ!」

それからどれほど走ったか分からないが,俺は見晴らしのいい場所にたどり着いた。そこは,東京湾だった。

「こんなところまで走ったのか・・・・」

ふと気がつくと,自分の足に痛みが走り,気がついた途端,その場に膝をついてしまった。

走りすぎて立ち上がることができなくなってしまった。無理もない話だ。東京タワー近くから東京湾まで走りっぱなしなら,誰だってこうなる。

「よく頑張ったなぁ・・・・俺・・・・そうだ!ノアは!?」

俺は地面に膝をついたまま,辺りを見回した。

その時,遠くで巨大な何かが落ちる音が聞こえた。

それは,ノアとガルタークだった。

俺が走ってる間に,かなりの激戦が繰り広げていたのが見て取れる。その証拠に,ガルタークの左足がもげ,翼はボロボロになっていた。一方,ノアは目立った傷はないが,ガルタークに噛まれた跡に,体のあちこちに,装甲の表面に唾液弾が突き刺さっていた。

ノアは,手に持っていたガルタークの左足を投げ捨て,ガルタークを睨みつけた。

ガルタークも同様に,ノアを睨みつけた。

そして,両者とも動かなくなった。

俺はそれを見て,あることに気がついた。それは,両者ともこの一瞬で勝負を決めるつもりなのだ。お互いの持てる力で,一撃で決めるつもりだ。

俺は生唾を飲み,額の汗を拭い,遠巻きに見守った。

ガルタークは大きく息を吸い始めた。対し,ノアは仁王立ちをしたままだった。しかし突然,ノアの足元から波状のエネルギー波が全身に流れる。そして,全身に流れたエネルギーが,今度は両手に集中する。

「まさか・・・・あれが教授の言ってた『アースエナジー』・・・・!?」

ノアに流れたエネルギーは恐らく「アースエナジー」・・・・ノアは「アースエナジー」を使って何かをするつもりだ。

そして,ガルタークは口から唾液弾を吐き出した。しかし,今度はただの唾液弾ではなかった。大きさが違った。今までのはつららのような形だったが,今度はそれが何倍にも大きくなったかのようなものだった。恐らく,ガルタークは自身の体液のほとんどを攻撃に回したのだろう。でなければここまで巨大な唾液弾はできない。

対し,ノアは何を血迷ったか,攻撃しなかった。巨大な唾液弾は徐々に近づき,一緒に見えていたガルタークの姿も見えなくなるほど近づいてきた。

このままでは,ノアは直撃を受ける・・・・その時,ノアは両手から,溜めたアースエナジーを巨大な火球に変えて発射した。

その火球は唾液弾をも飲み込みほど巨大で,さらに速度もあり,咄嗟に気づいたガルタークもよけようとするも,火球の速さによけることができず,そのまま火球に飲み込まれ,ガルタークは爆散した。

その火球は,火球でありながら,稲妻のようなものを纏っていた。その後,俺はその技を,大好きなゲームの技名を真似てこう呼んだ。あの技は,『プラズマブラスト』。

「やった・・・・ノアが勝った・・・・!!よっしゃああああああああ!!」

俺は両拳を上に上げ,ガッツポーズを決めながら歓喜の叫び声を上げた。

それと同時に,ノアも俺と同じように歓喜の声を上げた。

『オオオオオオオオオオオオオッ!!』

俺は自分のことのように喜んだ。それも当然だ。ガルタークが死んだことで,人類も,地上も守られたんだ。誰だって喜ばずにはいられない。

俺はノアに向かって叫んだ。

「ノアーーーー!!ありがとーーーーー!!」

ノアは,俺の存在に気づいたのか,俺の方を向いた。

すると,ノアは手から粒子のようなものを放った。粒子はたちまち俺の体を包んだ。

「な,なんだ?」

俺は突然のことに戸惑うなか,あることに気づいた。

足の痛みがなくなっていたのだ。

「い,痛みがない!どうなってんだ!?」

俺は思わずその場でジャンプしたり,足踏みをしたりした。しっかり立てるし,しっかり動く。

「もしかして・・・・・」

俺はノアが「アースエナジー」を使って俺を治してくれたと考えた。

それと同時に,俺は自分の首元に,何かが下がっていることに気づいた。

「これ・・・・」

首に下がっていたのはペンダントだった。オレンジ色で,雫の形をした石のペンダントだった。俺は,その石があの石だと直感した。

「くれるのか・・・・?」

ノアの顔を見ると,ノアは何も言わずにコクリと頷いた。

その時のノアの顔は,目付きは今まで通りで,口にマスクはつけてたけど,俺は不思議と,その時のノアの顔は微笑んでいるように感じた。それを見て,俺も思わず微笑み,礼を言った。

「ありがとな・・・・ノア。」

その時,

「猛さーーーーん!!」

「真銅さん!!」

聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

そこには美咲と榊さんがいた。

「2人とも・・・・」

俺は2人に会ってホッとした。しかし突然,美咲が俺に抱きついてきた。

俺は突然のことに動揺し,胸の鼓動が早くなった。

「み,美咲ちゃん!?どどど,どうしたの!?」

俺はドキドキしながら美咲に尋ねた。

すると,美咲は小さな声で呟いた。

「よかった・・・・本当に・・・無事でよかった・・・・」

美咲は俺のことを心配してくれていた。

俺はそれがすごく嬉しかった。こんな俺でも,親以外で心配してくれる人がいることが,心から嬉しく感じた。

俺はお返しに,美咲の頭を撫でた。

すると,ノアは海の向こうへと歩き出し,その場から立ち去ろうとした。

美咲はハッと気づき,俺を抱きしめるのをやめ,ノアの方を見た。

俺と榊さんも同様に,ノアの方を見た。

その時,美咲は呟いた。

「ノアが・・・・ノアが行っちゃう・・・・」

美咲は去っていくノアを見て寂しくなったのか,俺の手を静かに握った。

俺はそれに答えるように,美咲の手を握った。

すると,榊さんも続いて呟いた。

「もし,また怪獣が現れたら・・・・ノアは来てくれるんでしょうか・・・・」

榊さんの疑問に,俺は答えた。

「ノアは来ますよ。必ず・・・・」



それから,俺は親父と2人で話した。親父は,俺と同じ気持ちだった。親父も俺を傷つけたくなくて,わざと俺を遠ざけようとしたんだ。俺はそれを聞いて,少し安心した。親父の本当の気持ちがしれたこと,俺自身がちゃんと親父と話せたこと・・・・昔の俺だったら,こんなこと出来なかったと思う。それもこれも,ノアは美咲,榊さんのおかげかもしれない。

その後,俺は両親に無理言って,短大に入って考古学の勉強を始めた。あの怪獣騒動から,俺は古代文明に興味を持ち,ノアのことをもっと知りたいと思ったんだ。

騒動から3年後,俺は短大を卒業し,大崎教授の助手になり,一緒に古代文明の調査をしている。そして・・・・俺は美咲と交際を始めた。美咲は大学を卒業後,フラワーショップで働き,暇な時間を利用して調査を手伝ってくれた。

そして,榊さんは出世し,陸士長になった。その時の榊さんは,「いつか里中一等陸佐よりも上になる!」と張り切っていた。俺は自分のことのように嬉しくなり,同時に榊さんをエールを送った。

そして今,俺は美咲と2人,ノアが去った東京湾に来ていた。

「なぁ,美咲。」

「ん?」

「もし,あの時ノアがやられてたら,今頃どうなってたかな。」

俺の質問に,美咲は苦笑いを浮かべた。

「うーん・・・・考えたくないなぁ・・・・でも,あの時,猛が行かなかったら,私達,死んでたと思う。だから,私達人間が助かったのは,猛のおかげでもあるんだよ。」

「ありがとな。なんか,あいつが頑張って戦ってると,俺も頑張りたくなったんだ。だから,そういった意味でも,ノアのおかげだ。あいつには感謝してもしきれない。あいつ,今頃どうしてんのかな・・・・」

俺は海を見ながら思いふけっていた。

その時,美咲が俺の腕を引っ張った。

「ホラ,早く行かないと遅れちゃうよ。今日は榊さんの結婚祝いなんだから。」

「そうだな・・・・行くか。」

俺は美咲の後ろに続き,東京湾を去ろうとした。

その時,

『オオオオオオ・・・・・!!』

俺の耳にノアの声が届いた。

しかし,後ろを振り向いてもノアの姿はなかった。

「気のせいか・・・・」

俺はノアからもらったペンダントを握りしめた。

「ああ・・・・またな,ノア。」

この世に絶望の影が来るとき,地上に巨人が現れ,影を討つ。

その巨人は古代人に作られた,地上を守る守護神。

その守護神の名は・・・・ノア。



第1部 完  



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