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NOAH ~希望と地上の守護神~  作者: 地理山計一郎
第1章「ノア,東京に現る」
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第7話「目覚め」

『オオオオオオオオオオオオオッ!!』

ノアはガルタークを見つけ,雄叫びを上げながら突進していく。体がでかい分,スピードは遅いものの,確実に前に進んでる。

ガルタークは自分の体液を凝結させ,口から針のように尖った唾を吐き出した。

ノアは太い両腕を盾にし,走り続ける。そして,自身の間合いに入ったところで,右拳を鋭く突き出す。

しかし,ガルタークはひらりとかわしてノアの後ろに回り込み,背中に唾液の針を撃ち込んだ。しかし,ノアの装甲には通じない。

ノアは後ろに振り返ると同時に,振り返りの回転を利用し,左拳を突き出す。しかし,ガルタークは素早く後ろに下がってよけた。

「ミサイル発射!!」

自衛隊の戦闘機はガルタークにミサイルを発射した。しかも,発射されたのは普通のミサイルではなく,追尾ミサイルだ。

ガルタークは,ミサイルを見るなり,突然その場から逃げ出した。ミサイルはガルタークを追尾する。

ガルタークはミサイルを振り切ろうと,スピードを上げたり,進行方向を変えたりしたが,それでもミサイルは振り切れない。

一見,人類サイドにはいい状況に見えた。しかし,俺はなぜか不安になった。なぜなら,ガルタークの行動が妙だからだ。ガルタークの唾液弾ならミサイルを簡単に破壊できるはず。しかし,ガルタークはそうしないかった。

その時,先回りしていたノアが,ガルタークの前に出る。

前にはノア,後ろからはミサイル。ガルタークは挟み撃ちを受けた。

ガルタークは上空に飛ぼうとした。しかし,寸前にノアが翼を掴み,羽交い締めにした。

ミサイルはそのままガルタークに飛んでいく。ミサイルがガルタークに直撃したら,ノアも爆風に巻き込まれるかもしれないが,爆風くらいではノアはビクともしないだろう。

しかし,次の瞬間,ミサイルはガルタークではなく,ノアに命中した。

『ウオオオオオオ・・・・・!!』

ノアは悲痛な叫び声を上げ,よろめいた。

気がつけば,その場にガルタークはいなかった。

「い,一体何が起きたんだ!?」

司令室でも,混乱が広がっていた。もちろん,俺自身も混乱していた。あの時,恐らくガルタークがノアの羽交い締めから抜け出し,ミサイルはそのまま勢い余ってノアに命中した・・・・ということだろう。しかし,パワーはノアの方が上のはず。簡単に拘束から脱出できるはずがない。

「先ほどの映像をスローで再生します!!」

自衛隊員がコンピュータを操作し,ミサイルがノアに当たる前の映像をスローモーションで再生した。

ミサイルが当たる前,ガルタークは動けない状態だった。しかし,ガルタークは超至近距離でノアの顔に唾液の針を飛ばし,ノアを怯ませた隙に素早くノアの後ろに回り,ノアを盾にしてミサイルを防いだ。

「ま,まさか,最初からノアにダメージを与えるために・・・・?」

ガルタークは自分の唾液の針がノアに通じないと分かり,別の物でノアを攻撃する手を思いつき,行動に移した・・・・ということだ。

俺は驚きのあまり,しばらく唖然としていた。ミサイルがノアに当たったことではなく,ガルタークの知能,行動力に驚いたんだ。ガルタークの知能は猿・・・いや,人間以上かもしれない。

そして,ガルタークは背後からノアを蹴り飛ばした。ノアはそのまま前のめりに倒れてしまう。

ノアはミサイルを受けたことで,一時的に冷静な判断ができなくなっている。

ガルタークは,今度はノアの肩を足の爪で掴み,100tはあるノアの体を持ち上げた。そして,そのまま目の前にあった高層ビルにノアを投げ飛ばした。

ノアはとっさに受け身を取ることが出来ず,ビルに突っこんでしまう。

『ウウッ・・・・・』

ノアはダメージを受け,うめき声を上げた。

しかし,さらに不運なことに,ビルがノアの体重に耐えきれず,崩れてしまった。

ノアは地面に叩きつけられ,上層階の瓦礫に押しつぶされてしまった。

「ノア!!」

俺は思わず画面にいるノアに向かって叫んだ。

ノアは痙攣したかのように腕が震えていた。瓦礫の下敷きになって動けなくなってしまったんだ。

ガルタークはさらにノアに攻撃しようと,ノアの真上に現れた。

「撃てぇ!!」

その時,陸軍の戦車が一斉にガルタークに向けて発砲した。

ガルタークは上空に舞い上がり,砲弾をよけながら唾液の針を発射した。

「う,うわああああああああ!!」

ガルタークは針を次々と戦車に浴びせ,乗員もろとも破壊していった。戦車の中で乗員の悲鳴がこだまし,戦車は爆散した。

「このままじゃ・・・・」

このままではノアは殺され,自衛隊は全滅する。そう思った俺の脳裏に,あの予言書に書かれていたことを思い出した。

"巨人の力,地上の力を注ぎし石にあり。石は地上にあり"

俺はふとその一文を思い出し,リュックからあの石を取り出した。

「い,石が・・・・!!」

石は激しく光り輝いていた。まるで「急げ」と急かすかのようだった。

俺は,「この石を使えばノアは復活するかもしれない」と考えた。

でも,今外に出れば,死ぬ可能性がある。戦いに巻き込まれて死ぬ。怪獣に食われて死ぬ。建物の瓦礫に巻き込まれて死ぬ・・・・

死ぬ可能性は高い。でも,逃げたら前と同じだ。

(逃げちゃダメだ・・・・逃げたらダメだ・・・・逃げたくない・・・・!!)

俺は石を持って司令室を飛び出した。

「真銅さん!?」

「猛さん!!」

司令室を出て,すぐ榊さんに捕まった。

「真銅さん,どこに行く気ですか!?」

「この石をノアに届ける!」

「そんなの無茶ですよ!!」

榊さんと美咲は必死に俺を止めようとする。止めるのも当然だ。でも,これしか方法がない。

「そんなことして,もし,猛さんが死んだら・・・・ご両親が・・・・・」

美咲は悲しそうに言った。それに対し,俺は・・・・・

「前に,美咲ちゃん言っただろ?人間は生きていればどんなことだって出来るって。俺にとって・・・・今がそれなんだ!!」

俺はそう言って二人を振り切った。

「猛さん・・・・」

俺はただただ走った。息が切れようが,手足が痛くなろうが,知ったこっちゃない。躊躇してたら何も出来ない。それに,怪獣におびえて,言葉が通じない奴に命乞いして死ぬより,やることやって死んだ方が何倍もいい!

その時,車が俺の横を通り過ぎ,俺の目の前に止まった。

「真銅さん!早く乗って!」

車から顔を出したのは,榊さんだった。

「榊さん!?」

俺は思わず驚いてしまった。

「早く!!」

俺は榊さんに誘導され,車に乗り込んだ。

榊さんは俺が乗ったことを確認し,車を走らせた。

「榊さん・・・・どうして・・・・」

俺が尋ねると,榊さんはニヤリと笑った。

「民間人に危険なマネさせませんよ!民間人守るのが仕事ですから!」

俺はそれを聞いて,確信した。榊さんも,俺と同様に覚悟を決めたんだ。

「榊さん・・・・ありがとうございます!」

「お礼はいいですよ。その代わり,生きて帰ったら何かおごってくださいよ!」

「はい!」

俺は少しの間,榊さんと会話を楽しんだ。もし,学生時代の時に榊さんや美咲みたいな奴が友達だったら,俺は変われたのかもしれない。いや,会った時間や場所は関係ない。二人に会ったことに意味がある。俺を突き動かしてくれたのは,この二人と会ったからだ。二人のためにも,俺は絶対に成功させたい。

そして,目の前にノアが見えてきた。

「もう少しですよ!」

もう少しでノアを助けられる。そう思った次の瞬間,隣にあったビルが爆発し,車は爆風に吹き飛ばされてしまった。

どうやら,戦車の砲弾が外れ,流れ弾がこっちに飛び,ビルに激突したんだ。

「うわあ!!」と声が出そうになったが,そんな暇がないほど,あまりに一瞬の出来事だった。

車はひっくり返り,街の街灯に激突した。

「ううっ・・・・」

二人ともシートベルトを着けていたため,一命は免れた。あの石も,俺ががっちり掴んでいたため,落としてはいなかった。

「さ,榊さん・・・・」

俺は自分のシートベルトを解除し,榊さんを降ろそうとした。

その時,

「お,俺は大丈夫です・・・・早くノアの所に・・・・」

「で,でも,榊さんが・・・・」

俺は榊さんの安否を気遣った。でも,榊さんは・・・・

「いいから早く行け!!人類はあんたにかかってんだよ!!」

その言葉は,俺の胸に突き刺さった。

今まで,俺は部長や委員長といった責任が重い物を背負ったことがなかった。でも,今は違う。俺がやらないと,みんな死ぬ。

俺はノアの元に走った。幸いだったのが,ガルタークは陸軍の相手をしていたため,こっちに気づいていなかった。

「ノアーーーーー!!」

俺はノアの元にたどり着いた。

ノアの体は瓦礫に埋もれ,両腕と頭だけが瓦礫に埋もれていなかった。

ノアの目には輝きはなく,灰色の単色のみになっていた。

俺は静かにノアの手のひらに石を置いた。すると,石はスッとノアの中に吸い込まれていった。

しかし,それでもノアは目覚めなかった。

「そんな・・・・」

俺は絶望した。ここでノアが目覚めなかったら,俺の覚悟は,榊さんの覚悟は,自衛隊のみんなの犠牲が・・・・全部無駄になってしまう。

「ノア・・・・どうしたんだよ・・・・目ぇ覚ませよ!!頼む!お前が必要なんだ!!お前しかいないんだ!!」

俺はノアに向かって叫んだ。しかし,叫んだところでノアは目覚めない。

その時,ガルタークが俺の存在に気づき,こっちにゆっくりと近づいてきた。

絶望と同時に死が近づいてきた。

このとき,俺は,ノアが目覚めないのは,俺や他の人間のせいなんじゃないかと思った。人間は環境を破壊し,守護神であるノアも殺そうとした。そのせいでアースエナジーが答えてくれないんじゃないかと思った。

「・・・・なぁ,ノア。」

俺はガルタークが近づくのに関わらず,静かにノアの指に触れた。

「人間って,勝手な生き物だよな。俺自身が勝手だからわかるよ。簡単に人や自然を傷つけて・・・・お前が怒るのも無理ないよ。でも・・・・人間は勝手な奴ばっかりじゃないんだ!俺と違って,必死に生きてる奴がいるんだ!だからノア!俺達にチャンスをくれ!!人間は,生きてればどんなことだって出来る!!人は変われる・・・・時間はかかるけど,絶対に変われるよ!!だから,俺達人間を信じてくれ!!俺もお前を信じるから・・・・」

俺は自分の気持ちや思いをノアにぶつけた。

そして,ガルタークが俺の目の前まで来た。俺を食おうと,こっちを睨みつけ,よだれを垂らす。よだれが凝結し,地面に突き刺さる。

「だから・・・・頼む!!目覚めてくれ!!ノアーーーーーー!!!』

俺はノアの名を叫んだ。それと同時に,ガルタークは牙をむき出しにし,俺に食らいついてきた。

しかし,その瞬間,ガルタークの首が掴まれた。

「あっ・・・・」

ガルタークの首を掴んだのは・・・・

「ノア!!」

『オオオオオオオオオオオオオッ!!!』

ノアはそのままガルタークを投げ飛ばした。

そして,立ち上がった。

本当の戦いは・・・・ここからだ。



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