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NOAH ~希望と地上の守護神~  作者: 地理山計一郎
第0章「NOAH THE ORIGIN」
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第8話「悲しみの風 後編」

ウィンディは僕に刃を向けた。僕はウィンディを止めるため、攻撃を防ぎ腕を掴んだ。

「やめてくれ!君と戦いたくないんだ!」

僕は必死になってウィンディを説得しようとした。しかし、ウィンディは聞き入れず、脚のつま先から生えた刃で斬りかかる。僕はそれを大きく後ろに下がってかわす。

「あんたにはその気がなくても・・・・あたしにはあるのよ!!」

ウィンディは後頭部の触手、両手首、両脚のつま先に装備された刃を使い、連続で攻撃を仕掛けてくる。その優雅かつ素早い動きに、僕の目は追いつけなかった。

「くっ・・・!」

僕は体を丸くし、アルマジロのように防御態勢に入る。彼女を傷つけるワケにはいかない。かと言って、このまま負けるワケにもいかない。僕は考えを巡らせるため、防御態勢に入ったのだ。

そんな僕に、ウィンディは容赦なく攻撃してくる。装甲が厚い分、僕に痛みはない。この隙に僕はウィンディを傷つけずに勝つ方法を見出すため、思考を巡らせた。

(どうすれば・・・どうすればウィンディを傷つけずに勝てば・・・・)

その時、僕はウィンディが言っていたことを思い出した。


『あなたは必ず殺す・・・・そしてその次は教団の奴らを皆殺しにする!!』


ウィンディは教団と言っていた。言動から察すると、教団の人間達はこの地上のどこかにいると考えられる。しかし、冷静に考えればありえないことだった。僕がノアとして生まれ変わってからもう100年以上も経っている。教団の連中も、人間だ。100年以上も生きられるわけがない。それに、アグニル先生の時も思ったが、誰が先生やウィンディはどこから来たのかがわからない。もし教団が生きているなら、どこかに拠点があるはずだ。

(ウィンディに聞きたいけど・・・・どうやって聞けば・・・)

僕は再び考えを巡らせた。そして、僕はいい作戦を思いついた。しかし、その作戦は一歩間違えれば僕自身が死ぬことになる。しかし他に思いつく作戦もない。

僕はさっそく行動に移すことにした。僕は防御態勢を解き、大の字になった。

僕の行動が変だと思ったのか、ウィンディの攻撃の手が止まった。

「なに?あきらめがついたわけ?」

「・・・ああ、僕を殺したいなら、殺せばいい。」

僕がそう言うと、ウィンディは鼻で笑い、手首から生えた刃を僕に向けた。

そして、刃が僕の胸目掛けてゆっくりと伸びてくる・・・・その時、僕は言った。

「ウィンディ、これだけは言っておく。君は今も昔も変わらない。姿形が変わっても、ウィンディはウィンディだ。僕は、僕だけはそう思ってるよ。」

「な、何よ、いきなり・・・・」

ウィンディは僕の言葉に一瞬動揺を見せたが、すぐに強気な態度に戻った。しかしそれでもまだ動揺しているのか、腕が震えていた。

「そんなこと言われても、もう遅いのよ・・・・あたしは、あたしはもう・・・!!」

ウィンディは震える腕を振り上げた。その瞬間、僕は彼女を抱きしめた。

僕は、ウィンディには誰かのぬくもりが必要だと思った。それは家族や友達といった大切な人、大事な人のぬくもり・・・ウィンディはずっと一人で戦ってきたんだ。相談する相手もいないで、ただ復讐するためだけに力を注いで・・・・だけど、それももう終わりにしないといけない。悲しみの風は止めないといけない。

「・・・・離してよ。あたしは、あたし達はもう戻れないじゃない・・・・」

ウィンディはそう言いながらも、逆に僕を抱きしめた。

「戻れないよ。絶対に戻れない・・・・でも、だからこそ強く生きないと。戻りたいって思ってたら、死んだ人の思いはどうなるんだ?」

兄さんは僕に未来を託して死んだ。ウィンディの両親も、きっとウィンディに何かを託していったはずだ。

「ウィンディ、これまで一緒にいられなかった分、ずっと一緒にいるよ。」

僕がそう言うと、ウィンディは泣き笑いのような声で話し始めた。

「約束、覚えてたんだ・・・・」

僕は昔交わした約束を覚えていた。忘れたこともなかった。今までほったらかしにしてしまったけど、やっと約束を守れた。

「ウィンディ、僕が代わりに君の復讐を果たすよ。」

「えっ?それって・・・・・」

「僕だって、奴らには恨みがある。それに、君やアグニル先生をもてあそんだことは、絶対に許せない!」

僕は強く拳を握りしめた。「アルケー教団」の奴らだけは許せない。奴らはアグニル先生やウィンディを殺し、そして兵器として利用した。死んだ人間を利用するなんて、絶対に許されないことだ。僕は段々と怒りがこみ上げてきた。

「教団の奴らは、一体どこにいるんだ?」

「ここからそう遠くない。あいつら、海の中に建造物作って、その中であたしや先生みたいな巨人作ってた。」

「巨人は、まだいるの?」

「先生が炎で、あたしが風・・・・後、水の巨人と大地の巨人を作ってた。それと・・・・後一体、別の巨人を作ってた。あいつらが言うには最終兵器だって・・・・」

「最終兵器・・・・考えていても仕方がない!行かないと!」

「うん!」

こうして、僕とウィンディは教団撲滅のため、奴らのアジトへと向かった。

全ての元凶、全ての始まり、悲しい過去・・・・全てを乗り越えるため、僕達は進んでいった。


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