③ まちの決断
枡幸一からプロポーズされるまち。枡の家は老人と障害者、そして商売もしている忙しい家。自分がやっていけるかどうか、真剣に考えて答えを出す。
枡幸一からデート3回目でいきなりプロポーズと同時に身体障害者の弟、三男を紹介され数日が過ぎた。
まちは両親に相談したが反対されたのだった。「もう少しあちらの家の事を知ってからでも遅くはないでしょう」という事になった。
次の休みに枡の家に行く事になった。枡の家は多田駅の真ん前だった。家は大きくて何かわからない倉庫のようなものもある。食料品などを扱うお店を両親が経営していた。
駅前は文房具店と薬屋、酒屋や駄菓子屋など数件あるていどだ。枡の家「枡商店」は客でにぎわっていた。枡の母の辰子は声も大きくキビキビと動きハツラツとした人だった。
枡幸一の母辰子は幸一からまちを紹介されるなりに「よくおいでくださいました こんなに良い娘さんが幸一と一緒になってくれるなんてねー」と微笑んだ。
「え⁈」まちはいきなり一緒になると言う言葉が出てきたので驚いた。幸一はすかさずフォローして
「母さん、まだ決まったわけではないよ!」
「そうだわね、よ〜く考えてね 大変な家だから」と辰子は、言うだけ言ってソソクサと接客に戻って行った。
その後は家の中などを案内して、近所を散策した。枡の家は以前は「石炭屋」だったのだと枡から聞いた。
枡の祖父幸次は妻初子と埼玉から館林に越してきた。そして鉄道が活発になる頃には石炭を仕入れてこの地に石炭店を開いたのだった。
当時は従業員も20人くらいいて景気が良かったが、世の中のエネルギー事情が石炭から電気に変わると同時に衰退していった。
枡幸一の父新一は小売業に業種変換し、いまに至る。新一は戦後の混乱時期も東京まで通い貴重な物品を仕入れるやり手で、石炭業が廃業してもすぐに家を立て直したのだった。
枡の家族は、父の新一、母の辰子、祖母の初子、二歳下の妹敏美、4歳下の弟の健二郎と6歳下の三男の7人。
弟の三男は養護学校に預けられいる。
商売をしている家に嫁ぐということは今後の苦労も大いに違いない。それに身体障害者の三男の事もある。間違いなく苦労する。
しかしまちは、なぜか心配と同時に好奇心のようなものも心の片隅に芽生え始めていた……
いよいよ幸一は、早田家に結婚の許しをもらいに行く。はたして簡単に事がはこふわのか?