金魚と雪だるま
飼っていた金魚が今朝死んだ。
夏祭りで娘が捕ってきた金魚だ。半年生きただけでも長命だろう。
孫娘は大層悲しんだ。あれだけ一生懸命お世話していたのだ。
毎日エサやりを、一日三食おやつ付き、たまにお夜食。
多すぎるエサによる水質汚染と、金魚の死因との因果関係は現在もって捜査中である。
私と孫娘は庭に金魚のお墓をたてた。
私は土を盛り、孫娘はアイスの棒をてっぺんに差し込んだ。
孫娘がたからばこに大事にしまっていた、あたりの棒であった。
「おはかはこうなの」
と孫娘が言う。譲れぬこだわりがあるらしい。
線香を供えて火をつけると、孫娘は初めて嗅ぐ線香の匂いに言い表せぬ顔をした。
一夜明けると雪が積もっていた。
今年初めての雪に孫娘ははしゃいだ。
そんな姿を見て、私も年甲斐もなくはしゃいだ。
ゆきだるまをつくる、と孫娘が言う。
私は膝の丈ほどの雪玉をつくり、孫娘は肩の丈ほどの雪玉をつくった。
爺と孫娘の合作の雪だるまが完成した。
よる年の波に勝てない私は、屋内に戻って暖かいお茶を飲むことにした。
孫娘は、カゼをひいてしまうと言っても聞かず、雪の中を転げていた。
しばらく経ったあと、庭から戻ってきた孫娘が
「きんぎょのおはかがない」
と言う。
雪が被っているから見えないだけで、雪の下にはあるのだよ、と孫娘に諭したが、
「はっくつする」
と言い残して再び庭へ走って行った。
雪をかきわけかきわけ、やがて孫娘はアイスの棒を探し当てた。
孫娘は、幼い字で、きんぎょのおはか、と書いてあるそれを、
雪だるまの脳天に突き刺した。
彼女は得意げにこちらを見ている。
孫娘よ、私は悩ましい。