クリスマスのキセキ
はい、みなさん、メリークリスマス
と、まぁ私、キセキ屋には仕事が多く入ってくる、大変な日なわけですけど
正直、テレビで「恋人達の奇跡の日」とか
子供達が「サンタさんがいるかいないか口論したりする日」みたいな雰囲気なのですが
サンタもカップルも後付け、結局はイエスさんの誕生祝いなんですよね
正直、そんな雰囲気にイラッとしてます
…また話が逸れてしまいました
さて、今日はいつもは奇跡を押す側のサンタさんに、キセキを、起こした話です
それでは…
〜The beginning of the miracle〜
サンタはいるか、いないか
子供達の中で定番の疑問だ
答えを言ってしまえば、いる
根拠は?証拠は?
そう言う子供達もいるだろう
根拠も証拠も簡単、俺が、サンタだから
とは言っても、プレゼントを配ことをすることは、もうできない
なにしろ、煙突がない
そして、みんなが信じない
一人の子供がサンタはいないと噂してしまえば、その子供が大人になった時、サンタは親だと思っていて、子供にプレゼントを買ってくるだろう
人間、そういうのには流されやすいもので、それが続き、100年くらいして、もうサンタの仕事はその噂のせいで消えた
「今年も、何もないクリスマス、か…」
「そんなもん、サンタが言うことじゃねぇだろ、しっかり見回りはするぞ」
同じサンタが、そう言う
「へいへーい」
緑色の服と、サンタ帽を着て、ソリに乗った
ソリは、自然に浮き、そのまま上空へ登って行った
「って言っても、もうないだろ、煙突があって、プレゼントを親があげないとこなんて」
後ろに積んだ今年流行ったおもちゃを見て、そう思った
「純粋なのは、どうせ4歳くらいまでさ、大人になるにつれ、人は疑うことから始めちまう、本当に、嫌な生き物だ」
長い独り言を終えたとき、ソリの異変に気がついた
「なんか、引っ張られてねぇか?」
ソリが、明らかに自分が行こうとしている方向じゃない方に行っている
「ちょっちょっ、えっ!?」
目の前が雪やらなんやらで全然見えない
「ー!!」
目の前がやっと晴れて、やっと視界が開けた時、目に飛び込んできたのは
一つの、煙突だった
「ぶつかるっ!!」
と、叫んだその時
ソリが突然、急ブレーキをかけた
「…え?」
その勢いで、そのまま、煙突へ
「い、痛った…」
ふわっ
「く、ない?」
下を見ると、ソファが置いてあった
そして、恐る恐る、前を見てみると…
そこには、目を輝かせる女の子と、テーブルを囲んで座って、おどろいた顔で見ている夫婦がいた
「サンタさん!サンタさんだ!」
目を輝かせた女の子は、そうはしゃぎ、俺の方に走って寄ってきた
「あ、あの、あなたは…」
椅子に座ったお母さんが、震えた声で聞いてきた
「あ、はい、信じてもらえるかわかりませんけど、サンタ、です…」
こちらも震声で答える
「いえ、あの、すいません、うちの子がサンタさんとお話ししたいと言って聞かなくて」
お父さんの方が、なぜか頭を下げ、謝ってきた
「いえ、僕からすれば、信じてもらえてることがまず嬉しいです」
ちょっと苦笑いで、そんな風にいってみる
「サンタさん!サンタさん!」
そして、無邪気に笑って、膝の上に飛びついてきた女の子は、こう言った
「信じるって、ステキだね!」
俺は、その時、凍っていたその心が、溶けていくのを感じていた
それから、その夜、俺はその家族と暖かいご飯を一緒に食べ、いろいろなことを話した
「もう、信じてもらえないんですよ、サンタなんて、世の中の流れが、早すぎるせいで」
そんな風に思って、去年までやっていた俺の話
「たまに、難民の子供達に、食事を配ったりするんですよ、ボランティア、ですね」
そうやって、俺が変な風に生きてきた話
「こうやって、本気で信じてる子がいると、僕らとしても、元気が出ます」
この女の子から、元気をもらえたっていう話
そんな、温かい家庭に、俺はソリに引き寄せられたんだ
「サンタさん、来年も来てね!」
こうやって、行ってもらうために
また、クリスマスが来た
一年なんて、早いもんで、本当にすぐにきてしまった気がした
「行ってくるわ」
仲間のサンタにそう言って、やっぱりあの子の家に向かった
今度は、ソリを使わずに
「これまで、こんなに楽しみなクリスマスはなかったなぁ」
そんな、独り言を言って、街を歩く
イルミネーションが、綺麗だった
キラキラと光る、LEDが、眩しかった
そして今、目の前で見ている炎も
「え、あ…」
間違いなく、あの子の家だ
田舎なせいで、まだ通報されていないのか、消防車などは来ていない
「突っ立ってる、場合か!!」
必死に、ドアに体当たりした
生きててくれ、俺に暖かさをくれた人…
ドゴォッ
ドアが破れ、中の惨劇が目に飛び込んだ
暑くは、なかった
ただ、あの時の暖かさが、俺の中に灯っていた
「生きてろよ!!」
そう叫び、燃え上がるリビングに入る
その中に、一人泣き叫ぶ声を見つけた
もう、必死で、無心だった
俺は、サンタだ、子供を、幸せにするんだ
それが、サンタだ…
「サンタ、さん…」
泣き叫ぶ声が、悲しく、小さな声になった
「外に、出よう」
「でも!お父さんとお母さんが!」
「いない!」
「え…」
その目から、光が消えた
「お父さんとお母さんは!いない、もう…」
もう、その顔を見たくなかった
だから、女の子を抱き上げ、そして、走った
外に出た頃に、消防車と救急車が到着し、いつのまにか火傷をおった俺と、女の子を、病院へと搬送した
目を覚ました時、目の前に、女の子の顔があった
俺よりも火傷は浅く、早く治ったらしい
「サンタ、さん…」
涙をこらえていることが、わかった
「泣いて、いいよ」
名前も知らない女の子は、俺の胸で、声を上げて泣いた
「ごめんな、ごめんな、俺が、助けられなかった…」
「サンタさんは、悪くない…」
泣きながら、鼻をすすりながら、女の子は言った
「サンタさん、私に、プレゼント、ください」
涙がほおを流れ、俺の上の布団に落ちる
そして、こう願った
「お父さんと、お母さんを、ください」
多分、できないとわかっていたのだろう、涙は、さっきよりも流れ、布団の上で、俺の涙と混ざった
「ごめん、それは、できないよ…」
でも、でも、俺は…
「なんで!なんで!」
でも、俺は…
「でも、俺は、君の家族になら、なれる」
家族を失った、少女の心に空いた穴は、あまりにも大きいだろう
これから、何があるかわからない
でも、それを一人で埋めることなど
できるはずが、ない
「サンタさん」
涙はやまない
でも、これから、少しずつ、涙の蛇口を閉めていこう
何年、何十年かかかっても構わない
俺は、君の家族だから
〜The end of the miracle〜
さて、これから二人がどうなったかは、ご想像にお任せいたします
で、多くの皆さん、疑問に思いませんでしたか?
なぜ、サンタの服が、赤ではなく緑なのか
みなさん勘違いしてるようですが、本当は最初、サンタは緑の服だったんですよ?
なぜ赤くなったのかは…
ここでは話さないでおきましょう
それではみなさん、良いクリスマスを…