終身雇用とは?
終身雇用について論じて行きたいと思います
その前にショートコラムを・・・
日本では終身雇用は大昔から当たり前に行われておりました
公家が政府に奉公する時も、基本的には終身雇用で、逆に定年退職が無かった大昔には、自分が死ぬか身動き出来なくなるまで奉公していました
武家も基本的に終身雇用でした、裏切ったり敵に負けたり下克上しなければの話ですが(汗)
それどころか、武家・公家・農家・商人・職人に至るまで、世襲するのもほぼ当然のように行われていました
特に職人や農家は技術継承の為にも世襲は大事でしたし、職人の場合はお弟子さんに技術伝承したり暖簾分けして技術を広めて行ったりする効果も有りました
伊達に親御さんが、家業を継いで貰いたいと考えていた訳では無いのです
技術の伝承や技術の発展には必要な世襲でも有ったのです
商人なら経営ノウハウの継承と言う意味合いも有ったでしょうし、せっかく築いた財産を無駄にしたく無いと言う意味も有るでしょう
現代企業においては、終身雇用する事によって、これらの世襲や師弟関係による技術やノウハウの継承蓄積を行っていた訳です
技術やノウハウの蓄積は、その国の経済力に直結します
しかも、失われた技術の回復はとても時間が掛かります
後で詳しく論じたいのですが、特に土木建築業は、災害復興やインフラ整備に直結しますので、事態は深刻です
技術の蓄積を構造的に否定するグローバリズムは、結果的に国力を低下させて行きます
私がグローバリズムに否定的な理由の一つでもあります
「終身雇用」・・・ほんの30年前には極一般的に日本企業で採用されていた制度でした
若い人向けに解説すると、一度企業に入社したら、定年退職まで転職せずに一企業に勤め続ける事で、当時は何処の企業でも、一度採用した社員はそう簡単には解雇しませんでした
終身雇用の優れていた点は、勤め続ける事で仕事のノウハウが蓄積され、長期在職者から新人社員へと技術職に限らずノウハウが伝承される事です
そしてその事により、各社独自の運営方法が確立され。各々の企業の経営が効率化されて行きました
そして何より、「年功序列」を成立させる為には、長期雇用が絶対条件でした
高度経済成長期の日本は今のインドやタイやインドネシアの様に働けば生活が向上して行く高循環社会でした
特に日本の場合、戦前の軽工業品輸出(おもちゃ・衣料品等)から戦後政策において重工業(鉄鋼・自動車及び家電等弱電)主体に転換し成功を収めました
実は日本も工業技術的には航空母艦を世界で初めて実用化する等優れた面も有ったのですが、それだけに戦後GHQの占領政策により長らく鍋・釜日用品しか作れない期間が有りました
しかし、朝鮮半島で朝鮮戦争が勃発し、アメリカが自国で生産調達するよりも、日本でライセンス生産した方が安上がりな事から、弾丸やJEEP等戦略上極秘足り得ない軍需物資を日本に委託生産させました
これが朝鮮戦争特需です
韓国が主張する「日本の復興は朝鮮戦争のおかげ」は間違いで。朝鮮半島で内乱(代理戦争)が勃発した時”アメリカ”が日本に軍需物資を注文したから復興したが正しいのです
その後。例えば当時日産自動車はイギリスのオースチン社からライセンス生産の契約を結び、技術を習得して行きました
丁度今の新興国と同じ立場だった訳です
しかし、日本人の凄い所は、元々技術的基盤が有ったとは言え、それらの技術を自分の物とし、開発努力を続けた結果、今や弱電・自動車、最先端技術の分野で世界をリードする立場に成った事です
現在のグローバリゼーションによる新興国の好景気は、既に有る技術の生産拠点でしかなく、独自の技術開発努力が欠けています
技術開発には長い期間が掛かります
しかも必ずしも成功するとは限りません
しかし、無駄になる可能性が有っても続けなければ技術の蓄積は出来ません
その為にも、「終身雇用」は必要だったのです
それでは、何故終身雇用は潰えたのでしょうか?
その原因の一つはバブル期においてもてはやされた、トラバーユ・・・転職ブームです
より高い収入を目指して、転職を希望する労働者が増え、人手不足や他社との競争に勝ち残りたい企業が、より高待遇でヘッドハンティングする事が流行りました
経営者としても、人材教育の費用を掛けずに高い能力の人材が得られれば万々歳で、人材教育期間のコストを鑑みれば、最初から能力の高い人材をそれなりの待遇で雇った方が安上がりに成ったからです
しかも、他企業のノウハウを知る事も出来る訳で、一石二鳥です
この風潮がグローバリズムと結び付いて、終身雇用を過去の遺物と化してしまいました・・・
そして、終身雇用が付帯条件の年功序列も自然消滅して行く訳です
しかし、此処で問題が発生しました
有る特殊な技術職では、ヘッドハンティングで中途採用した労働者では代替えが効かない職種が出てきました
特に自動社業界なのですが、新車を開発する際や、特殊な手作りの生産車(ホンダのNSXやトヨタのセンチュリー)を制作する際に、熟練の板金工が必要なのですが、定年退職した技術者の技術がバブル期の転職ブームで継承されず、高度技術を持った板金工が居なくなってしまう事態が発生しました
マツダ自動車などは、退職した板金工を再雇用して技術者育成せざる負えなくなり、トヨタ自動車は専門学校を設立して高度技術者育成を始めました
そして現在は、こう言った高度技術者や高度人材は正社員で雇用し、その他の代替えが効く職種では派遣社員や契約社員で景気動向に応じて解雇又は雇用する形態に成っております
キャノンなどは、何と開発部門まで契約社員にしてしまい、労働争議にまで発展しました
この様なグローバリズム的雇用形態は、労働者の質を低下させ、技術伝承や技術開発に悪影響を及ぼし、そして何より労働者の雇用と収入を不安定化させ、消費者でも有る労働者から購買力を奪った訳です
良く、昔ほど自動車が売れない、家電が売れない、家具が売れない等と言われますが、そもそも購買力を奪っているのだから当然の結果と言える訳で有ります
そもそも、景気が悪化し続ける社会構造に、日本は成ってしまった訳です
如何でしたでしょうか?
『終身雇用』が生活安全保障を賄い、雇用不安に苛まれる事なく、安心して生活出来、又安心して消費を増やしたり、借金が基本の住宅投資や自動車の購入(維持費用も含めて)が可能で有りました
勿論、結婚出産も安心して行えた訳で有ります
技術継承や各種ノウハウの継承も、『終身雇用』なら確実に出来た訳です
今こそ、日本型資本主義経済で有る『終身雇用』や『年功序列』が必要なのでは無いでしょうか?