年功序列の終焉
年功序列は何故潰えてしまったのか?論じて行きたいと思います
その前にチョットしたコラムを
哲学的な話になりますが、「正義」とは「悪」とは?についてです
個人的見解なので、軽く聞き流して下されば幸いですが、経済学にも関係のある事なので・・・
「正義」にしろ「悪」にしろ、その人の主観やその人の立場、所属する組織や状況によって如何様にも変わってしまう、実に曖昧な観念です
例えば、ロシアにとって北方領土は戦勝権益地ですが、日本にとっては終戦間際に不可侵条約違反で強奪された土地です
また、義族にとって富める者から奪って貧困者に施すのは正義ですが、取り締まる役人にとっては、法を犯す悪党に過ぎない
この様に、その人の立ち位置や主観によって、正義と悪は簡単に入れ替わってしまいます
では、経済学的にはどう言う事かと言うと、例えば財務省が緊縮財政や増税でデフレを悪化させるのは国民にとっては「悪」正しく無い行為ですが、財務省の役人にとっては、国家財政を黒字化する事が最大の目標で有り「正義」になります
経営者にとってグローバリズムに迎合して無国籍企業化し、人件費や輸送コスト的に見合わない国を捨てて人件費の安い国に進出するのは経営学的にも「正しい」判断ですが、労働者にとっては人件費を安く押さえられたり、いつ失業してもおかしくない立場(非正規雇用)に置かれるのは「正しくない」状況ですね
こう言った双方の主観の違いが、諸処の問題や経済的にはデフレが長期化する一因に成っているのです
経営者にとってはコストを押さえたい・・・つまり「年功序列」や「終身雇用」はコスト増を招く要因であり、極端な話をすれば、役員以外は全員非正規で雇用したい・・・
これが、竹中平蔵氏の目指す経営理論ですね
つまり、国益や景気浮揚など捨てて、世界中で焼き畑農業的に経営を展開する概念です
個人的には、間違った概念だと思いますが、経営者側から見れば正しい概念なのです・・・非常にイヤな事実ですが・・・
後にキチンと論考したいと思いますが、やはり日本企業で有る以上、日本の国益に責任を持ち、労働者の雇用や収入を安定化させ、内需拡大による景気回復が正しいと個人的には考えております
では。資本主義や企業経営学的理論から見た人件費とは何なのでしょうか?
人件費も資本主義的見地から見れば、コストの一つに過ぎません
勿論、企業経営学的理論から見ても同じです
人材の教育費も設備投資と同じで、生産性向上の為の必要経費と見る事が出来ます
つまり、人件費もコストで有る以上、過剰生産能力に含まれる人材は、必要の無い景気後退期には出来るだけ減らしたい
そこで生み出されたのがアルバイトやパートタイマーでした
つまり、必要な時に必要な人材を必要な期間雇用し、不要になったら解雇できる人材枠ですね
わかりやすいのはパートタイマーで、例えばスーパーなどで忙しい時間帯(夕方等)に短時間だけ雇用する雇用形態ですね
忙しい子育て中の主婦達の貴重な雇用枠に成っております
更に一歩進んで、正社員や技術職が行うような仕事も、派遣社員や契約社員等非正規雇用で賄うように現在では成ってしまいました
資本主義的理論や企業経営学的には人件費もコストで有る以上正しい事なのですが、雇用が不安定化し収入が減る事によって貧困化が進む原因になり、結果消費者でもある従業員の購買力を奪ってしまいデフレが深刻化してしまいました
しかし、一概にこの事が悪い事だと断じてしまう事は出来ません
見方を変えると、正社員ではコスト的に雇用しきれなかった人材を、非正規化する事によって雇用する事が出来るようになったのも事実で、確かに従業員は貧困化しましたが、失業者を減らすことが出来た
これが起きたのが、いわゆる小泉改革の時で実際に失業率は改善されて行きました
しかし結果論では有りますが、デフレは深刻化したのも事実です
此処までの解説で何故「年功序列」が潰えたかおわかりいただけたかと思います
つまり、景気後退期において人件費を減らさざる負えなくなった企業経営者が、年次昇級である「年功序列」を維持する事が出来なくなったからであります
それどころか、雇用者数も減らさざる負えなくなった訳です
バブル崩壊が一番の原因では有りますが、もう一つ理由が有ります
それが、いわゆる「新自由主義経済論」”グローバリズム”です
「新自由主義経済論」や「グローバリズム」は最近新聞や雑誌、インターネットの経済ブログ等で良く耳にする経済用語だと思います
さて、新自由主義経済論がいわゆるグローバリズムの事なのですが、ではグローバリズムとは何でしょうか?
細かい学術論はさておき、大雑把には読んで字の如く、企業が無国籍化し国境を越えて経済活動を行うことです
近年○○ホールディングス等の持ち株会社が増えて来たのも、グローバリズムによる結果です
生産業では、例えばフィリピン等に工場を建設し、安い人件費を利用して、ローコストで製品を生産し近隣各国へ輸出したり生産国で流通させます
金融業では、保険会社等は各国へ同じく国境を越えて展開し、証券会社等はインターネットを活用して世界中で取引を実行します
つまり、生産業の場合、特殊な商品はさておき、一般的な工業製品の場合、人件費の安い国で生産し、日本やアメリカの様な経済大国に輸出した方がコストも安く、又儲けも大きくなる訳です
そして持ち株会社化する事によって、世界各国で作り出した業績による配当金を効率的に収集出来る訳です
しかし、このグローバリズムには致命的な構造的問題点があります
グローバル企業の本籍地である先進国の生産業が、空洞化して行ってしまう事です
つまり、安い人件費を求めて後進国等に進出する企業は良いのですが、その工場で働いていた本籍地の従業員が失業する可能性が有ると言う事です
この時点でおわかり頂けたかと思いますが、要するに「年功序列」以前に失業してしまう可能性が有る事
又は。本社勤務等のホワイトカラーは比較的大丈夫ですが、それ以外のブルーカラーでは格差が広がってしまう構造に有る事です
つまり生産現場の人間程失業等の貧困化するリスクが高い訳です
しかし、どんな先進国でも、国民全てがホワイトカラー等の頭脳労働に就ける訳では有りません
従って全体のパイ的に多いブルーカラー系統の労働者が貧困化する事によって、デフレ化が構造的に進み安くなるのです
日本もデフレ化が進んで行く中で、グローバリズムにどんどん突き進んで行き、国内は長期デフレ化、工場作業員や簡単な事務等は非正規雇用化され、格差がどんどん広がって行きました
こうした世の中の流れの中で、「年功序列」や「終身雇用」等の格差是正・生活安全保障の制度は失われて行きました
『年功序列』が実は日本の総中流化を支えていた事がおわかり頂けたでしょうか?
単純な実力主義に陥らず、長年真面目に務めた労働者には、それ相応に報いていた『優しい』社会構造だったのが過去の日本で有ります
キチンと業績を挙げた者には、出世や報酬で報いていたのですから、別に実力主義が無かった訳でも有りません
このまま『構造改革』と言う名の『日本型資本主義』が崩れるのは、格差拡大社会への道標に過ぎません