はじまり
作者の只野と申します。
春ですね。私の住む地域は桜がたくさん咲いてもう散り気味です。
散るのも美しい、日本の四季は最高ですね。
そんな四季を題材に小説を書かせていただきます。
風はまだ冷たくても、陽のぬくもりが心地よい季節。
桜の花がもうすぐ満開になる頃、
「春だね。志季ももう高校生かあ。」
「だからほら、今日制服届いたから着てきたのよ。」
「すごく似合っているよ。」
「ありがとう。」
そう微笑む少女、花見志季。
その少女を見てさらに微笑むのは兄の花見志満である。
「入学式はいつなんだ。」
「来週だよ。」
「そうか。入学式、いけなくてごめん。」
眉をさげ、申し訳なさそうな表情を浮かべる
そんな兄を見て少女は笑顔を見せた
「大丈夫よ、それに卒業式は来てくれたでしょう?」
「妹の、最後の晴れ舞台だったからね。収めたかったから先生に無理言ったよ。」
志満は父の遺伝により生まれつき体が弱く、心臓の病気をもっていた。
そのため入退院を繰り返している。
父は、数年前に亡くなった。
母は仕事に追われ、入院する志満の面倒をみて、志季と顔を合わせるのが少なくなっていた。
そのため入学式も卒業式も出席することはない。兄の志満はそれを気にしていた。
「志季、そのカメラまだ使っていたのか。」
「そうよ?すごく好きなの。」
「それでも今は新しいものがたくさん出てるだろ。新しいの買ってあげようか。」
「私はこれがいいの。大丈夫よ、兄さんありがとうね。」
シワのないセーラー服に少し古い一眼レフ。
焦げ茶色のおさげの少女はカメラをもち、嬉しそうに笑った。
そんな妹を見て、兄も少し笑って外を見た。
病室の外、そこには綺麗な桜がたくさん咲いていた。
少女も外を見た。風が吹いて、少しずつ散る桜。とても幻想的であった。
「私、写真撮ってくる。」
「いってらっしゃい。」
綺麗なものを見て、目を輝かせ外へ向かう志季。
そんな志季を、志満は目を細めて見送った。
そして外に目をやる。
「あ・・・そうか、今日は彼が居る日だ。」
そう呟いてふふっと笑みを零した。
「きっと志季も、“うつす”だろうな。」
いつもより暖かな風が吹き、花びらを舞わせた。