第一話 始まりの春,1
「なぁ…」
「…なに?」
「今日って何の日か分かるか?」
「……特にこれと言った日じゃなくない?」
「うん、俺が悪かった。質問の仕方を変えよう。今日は何の為に登校したのかな?」
「……そんなの、入学式に出席する為でしょ…」
「だよな?」
「……うん」
「………それじゃあさ」
「………うん」
「…………何で俺等、立たされてんの?」
〜数時間前〜
青い空、白い雲。鮮やかな色をした桜が宙を舞い、地面は桜色のカーペットを敷いたようだ。
前を歩く生徒の中には、真新しい制服に身を包んだ新入生の姿も見える。
「はぁ〜…春だなぁ」
そんな事をポツリと呟く俺、天寺 護は今年進級して高校2年生になる。
これと言って楽しみな事もなければ、これと言って不安な事もない。ただ、しいていうなら…アイツとまた同じクラスになれれば嬉しいかもな。と思うぐらい。
それにしても俺は今、今朝に地域の人から掃除をしていた事を褒められ上機嫌なのだ。昨日、お気に入りのCDが割れてしまい、(そんな事は俺の不幸レベルの中の中級に過ぎないのだが)ショックであった。しかし今朝、褒められた事によって、それすら忘れられた。それ程嬉しかったのだ。
だから、何だか今日は悪い事が起こる気なんて、さらさら感じていない。
もしかすると、今日はとても幸運な一日になるかもしれないと思うぐらい……は、言い過ぎだった。
そんな事を考えながら歩いていると、あっという間に学校へ着いた。
俺の通う学校は、家から徒歩で約40分という、決して遠くない所にある星乃瀬学園…通称、星学。
高くも低くもないといった偏差値の高校で、俺はその学園で高校生活を送っていた。
正門をくぐると、いつもと少し雰囲気が変わっていて胸が高鳴る。そして、この位置から見える紙には…これからの高校生活の2年間を左右すると言ってもいい程の重大な事が書かれている。…そう!!
_____クラス表である。
これを見る瞬間は、誰だってドキドキするだろう。
あの子と一緒かなー、とか
あいつは嫌いだから同じクラスはヤダなー、とか
知ってる人何人いるかなー、とか
人それぞれ色々な事を考えてしまう。そしてこの星学は、クラス替えが2年生に進級する時にしかない。つまり、今回決まったクラスがこれからの2年間共にする大切なクラスという事!
「あぁー…。やっぱドキドキする…」
そういいつつも目は懸命に自分の名前を大きな紙から探している。そして______
【2ーC 天寺 護】
「げっ…出席番号1番…?」
自分でも驚く第一歓声だった。
まあ…あ行なので、いつも3番目ぐらいには入ってしまうんだけど…。
あっ、そうだ。アイツは…………
「………っ!…っし!同じクラス!!」
素直に嬉しかった。また…また、同じクラス!
他の奴の確認なんて忘れて、指定されたクラスに早足で歩く。
いつも登校するのが遅いアイツだが、今日は早めに着いているかもしれない。そんな期待を胸に、俺は校舎の中へ入った。
新しい下駄箱に自分の名前が書いてある札を入れ靴をしまい、階段を一段飛ばしして駆け上がる。
ガラガラッ
教室のドアを開け、周りを見渡す。
やっぱり……まだ来てないか。
少しガッカリしたが、それでも嬉しかった。
この時俺は気付かなかった。
まさか、こんな日に罰を受けるだなんて…。
護「まさかの続く!」
優「そして一話目にして出番が少ない主役…ッ!」
護「……ドンマイ」
優 「まあ、出番が少ないのは楽で嬉しい」
護 「おい主役」
優 「………てへ」
護 「棒読みで『てへ』と言われても…。まあ、この物語って俺の視点から描く事が基本らしいからな」
優「ふーん。じゃあ、出番までゲーm…」
護「やめろ」
次回《第二話 始まりの春,2》