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「…おいしい」

目を覚まして、パンを与えると少女は言葉を発した。

先程公園の砂場で昼寝をしたような少女を見かけ、昼寝にしては変わった場所を選ぶなと思っていた。

しかしその少女は30分経っても目を覚まさず、おまけに同伴者も見受けられなかった。その30分ずっと俺は本を読んでいたが、少女が気になって内容が頭に入らなかった。

「しかし、お前はなぜここで30分も寝てたんだ?親は、友人は?」

変わった娘はさっきからずっとパンを食べて一向に話そうとしなかった。というか多分しらない男が幼女に声を掛けて食べ物を与える事自体犯罪なんじゃないか?少し狼狽えた。

しかし今はこの少女の身元が判らない限り、こちらも何も出来ない。ただの不審者になってしまう。

パンを早く食べるよう目で促す。少女はもりもりとパンを頬張り、そして一区切り着いたところでこう言った。


「私、自分でも自分が誰か判らないんです」


*


公園とは実に豊かで自由な場所だ。本を読み、季節を感じ、本を読む。

春や秋は快適だし、冬や夏も決して嫌いではない。まあ、その季節は図書館にいる方が多いが。

昨日は涼しかった故に公園に長居してしまった。そしてあの少女に出会った。

あの後少女には「交番に行け、多分なんとかなる」と言い、そのまま俺は家に帰った。

正直、俺は人付き合いが得意ではない。もちろんそれが可愛い少女であってもだ。

これは性質の問題だから、今更どうあがいても無駄であると承知している。それ故の残酷さ、これからの俺の人生は一定以上の幸せな事が起こることはない。その一定とは給料で買った本で休日を1日潰すとか、盆栽の切り方が上手くいった、だとか。

周りは俺みたいな地味な人間を見下す事に優越を感じて生きていくのだろう。俺にその価値しかないのなら、それを受け入れつつ小さな幸せを見つけて生きていこう。周りは敵だ。殻に入り、独りきりなりの喜びを探そうじゃないか。

そう考えて図書館に向かっていた矢先。

「…こんにちは」

「!!?」

びっくりした。

俺なんかに用があるやつなんてそうそう居ないのに。

と思ったら、昨日の少女だった。

「あれ、お前、交番」

「…無理でした」

「は?」

キツめの言葉に驚いたのか、身を少し引いた。

「分からないんです、全てが」


少女はこの街にいた事、した事、全く把握してないらしかった。

交番でも無口を決め込み、何も解決しなかったらしい。

「どうしましょう…」

これは俺が「じゃあ俺んち来る?」と声を掛けるべきか。そういうフラグが建っているのか、今。

歳は12前後、顔は幼いながら整った顔立ち。ここで17、8の男が「俺んち来る?」なんて言ったらどうだろう。誰が見ても犯罪者だ。

しかしこいつにホテルに泊まる財力は無いらしかった。昨晩は交番の近くの公衆トイレに寝泊りしたらしい。

「あの、出来れば家に泊まらせて頂きたく…」

もじもじしながら可愛い少女にこんな台詞を言わせるなんて、俺も罪深い男になったものだ。

「まあ、良いけど…」

結局、少女は俺の家に泊まる事となった。


*


「そう言えば、名前を聞いていませんでした」

「佐々木隆(たかし)だ」

「在り来たりな名前ですね」

「うるさい…」

少女は来るなり、急に生意気な素振りを見せた。打ち解けやすいのか、はたまたただ図々しい奴か。

俺は1人暮らしではあるが、買い食いは滅多にしない。欲しい本があるときに金が無いなんて言語道断だ。だから基本的に値段が安いなスーパーでしか買い物はしない。

「エッチな本とかはないんですかー?」

…あるかそんなもん。なんて言いきれないので無視。

ここから話が広がっても面倒だし。

「ほら」

そうこうしてる内に料理は出来上がった。今日はさやいんげんの油炒め、豚の生姜焼き、カプレーゼ、ご飯だ。

「この統一感が無いご飯はなんですか」

「嫌なら公園に帰れ」

そう言うと、少女はぶーたれた顔で飯を食べ始めた。公園よりはマシなんだな。何故かホッとした。

「…なんだか、面白いですね」

いきなりな言動に俺は混乱した。

「は?」

「いや…私、なんか佐々木さんに、会ったことがある気がする…」

「…んな訳ねえだろ」

少女は、何故か他の人と別だったと今なら思える。

人付き合いが嫌いな俺が、こんなに話せるなんて、不思議だ。

あれ…何だ…、


ね……む…



*


俺は公園で本を読んでいた。

季節は秋。そろそろ肌寒い季節である。

今日も穏やかである____


あの砂場で寝ている謎の少女以外は。


読んで頂きありがとうございます(*^^*)

更新が不定期になり、書いている内容を作者まで忘れる状態なので(笑)、今回は頑張ってダラダラ更新の間を空けないようにしたいです…(; ・`д・´)

では!!

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