わたし
悪くはない人生だ。
私の人としての生は、悪くはないものだったのだ。
そんじゃそこらの12歳のじゃじゃ馬娘が何を言うか、といわれるのが関の山だから、二度ときっと口にはしないのだろう。
私の家は、まぁ世に言うエリート一家だ。
父親は大企業の社長。母はやり手の弁護士。一番上の兄は国一番の大学へ行った。二番目の姉は飛び級で進学した。
末っ子の私にも、それ相応の成果を求められていたんだろう。
…でも、私はそれに応えられなかった。
精々私にできたのは絵画や歌。
勉強面はどんなに頑張っても、兄と姉にも追いつけなかった。
最初は諦めずに塾を増やしたり家庭教師をつけたりしていた両親も、次第に私に失望していった。
父に捨てられていく私を、兄は見て見ぬふりをした。
母に叩かれる私を、姉は歯を食い縛りながら物陰で見ていた。
最初は嫌だった。痛かった。何もかもが憎かった。
私が何をした。こんなに頑張っているのに。こんなに応えようとしているのに。
どうして結果しか見てくれないの。どうして過程を知ろうとしてくれないの。
自問自答を繰り返し、両親を糾弾し、兄姉を罵った。
行きついた先は、無気力だった。…無関心だった。
何もかもを受け入れよう。
何もかもを許容しよう。
もう私は、貴方達のために無駄に感情をすり減らし、精神を疲弊させたくはない。
貴方達のために神に祈りたくない。貴方達に応えるために神に縋っていた私のために、祈りたくない。
私は神に祈らない。
私は私のために神に祈らない。
私は神に祈らない。