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R童話-名無しの世界-情景童話

森の妖精

作者: RYUITI

森に生まれた妖精のお話です。

妖精の想いはどうなるのか…


※この話には妖精が会話する部分があります。

口調や語尾は意図したものであることをご理解下さい。


昔、むかし、とってもとっても大きなおおきな森がありました。


その森は大地と共に生き、鳥と共に遊び、


川の水と共に歌を歌っては、とても楽しく日々を過ごしていました。


そこにある日、小さくて、羽根を持ち、

きらきらした目をするいきものが生まれたのです。


森はこのいきものに、妖精と名付けました。


妖精は、ほかの生き物を食べることなどありません。

森に生った果実や木の実、川の水を飲んだりして生活するのです。

森さんも、妖精も、大地さんも、とりさんも、

毎日まいにち楽しい日々を過ごしていました。



それから幾億の月日が経ったある日、


妖精は共に住む鳥に意気揚々と話をしていました。


.近くに国というものが出来たのですよ。

それも水を好きだと言ってくれる国なのです。

そこにいる、人間という種族もとても良い生き物なのです。


そんな妖精の言葉に、鳥はうんうんと相づちを打ちながら話を聞いています。


それが鳥と妖精の楽しい時間でもあったのです。



ある時、


森と大地の具合が少しずつ悪くなっていくことに気付いた妖精は、

直ぐに、森の大きな大きな木の元へ行き、尋ねました。


.いったい何が起こっているのです?


 森はうーんと考えた後、妖精に向かって言いました。


.私達が穏やかに時を過ごしている間に、王国というモノが生まれ、

そのモノ達が大地や森を自分達のいいように使おうとしているみたいですね。


その言葉を聞いた妖精は早速、森と大地の状況を確かめに行こうとしましたが、

その様子を見た森は、妖精に向かって一言いいました。


.ショックを受けないようにしてくださいね。と


なんだか不安になった妖精は鳥と一緒に空から森を見上げることにしたのです。


段々と空に近くなっていくにつれて、妖精の不安はどんどんと大きくなりました。



森を上から見上げた妖精はとても悲しみました。


大地と生を共にするかのように、

根付いていた沢山の木々の姿は其処には無く、


あったのは綺麗に整えられた白い路でした。


それも大地の上に。


もう森が残っているのは、水を好きだと言ってくれた国と、

王国の間だけになってしまいました。



その様子をぼんやりと見ていた妖精が次に目にしたのは、

王国から森へ武器や刃物を持って向かってくる大勢の兵士達の姿でした。


それを見た妖精は、目に涙を溜め、血が出るほど手に力を込め、


非力な自身を恨みました。憎みました。



すると、水を好きだと言ってくれた国から、

馬に乗り、森へ向かってくる一つの影が見えたのです。



それを見た妖精は安堵したと共に、

鳥を置いて影の方向へ急ぎました。


.いくらなんでも一人であの数を相手にするなんて。と思った妖精は

向かってくる影の前に止まりました。


するとその影はぴたりと馬を停め、

妖精の目を見て、言いました。


.妖精か、久しいな。我が名は騎士。

我が心の意思の儘にこの森を救ってみせよう。と



初めて見たその騎士という男は、

随分と錆びれているように見える黒い鎧を纏っており、

何故か片方の目の色が違いました。


しばらくの間の後。


男の言葉を聞いた妖精はハッとして男を睨みました。


いくら水を好きでいてくれる国の者だとしても、

笑えない話を言われては、怒りが芽生えるのは当然のこと。


と思っていると、男は突然、妖精に紙を渡し、いいました。


.森を救うのは良いが、一つ約束をして頂こう。

救った後、その紙の内容を決して忘れ無いと。


その姿を見た妖精は、この男が本当に森を救ってくれようとしてるのだと思い、

力強く頷きました。


刹那。


男は目にも留まらぬ速さで森を駆け抜け、

兵士達の群れへと飛び込んで行きました。



全てを屠った男は、

国に残した若いせがれと妻を思い、静かに目を閉じたのでした。







涼やかな川の音を聞きながら、

妖精は、男の渡した手紙を何度も読み返していました。



騎士が駆けた後、戦は終わり、

騎国と王国の間にある森は少しも減ることなく、

平穏を取り戻した森は静かに、

穏やかな風と水に身を任せていました。



貰った手紙には一言。


.私と同じ様な騎士という者が森へ来たら、

身体に触れて脅かしてやってくれ。


と書かれていましたとさ。


【おしまい】


森の妖精を読んで頂きありがとうございます。


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