プロローグ
作者の腕がついていくか行くか心配ですが、残酷な描写が多々入るように話は組んでいます。人が死ぬ場面が嫌いな方は見ないほうがよいかもしれません。
遠くのほうからベルの響く音が聞こえる。少しずつ意識が覚醒していく・・・
目を覚まし、無意識のうちに手が時計に伸び音を止める。時刻は午前6時半。いつもの時間だ。今から支度をして8時までには学校に着かなくてはいけない。学生も学生なりに大変だよな・・・と、まだ眠気が完全に飛んでいない頭で考えていた。ゆっくりと布団の中で体を伸ばす。うん・・・いつもの調子だ。体が目覚めから慣れてきだしたところで、俺はゆっくりと布団から這い出した。立ち上がったところで、また大きく伸びをし、そのまま下着ををタンスの中からだし、吊ってあった学生服に着替える。この動作もここ2年半で大分板についてきた。あと半年・・・。そうすれば、今の学生生活も終わり社会に飛びだって行くことになる。そんな自分は想像できないが、何とかなるだろうと、心の隅では思っている。そんな事を考えているうちに、着替えが終わり準備が整ったので、鞄を持ち1階へと移動を開始した。
「琉にい。おはよ~う」
リビングの扉を開けると、パンの焼けた匂いと共に、美咲の声が聞こえてきた。美咲は3つ下の妹。中学のセーラー服を着てパンを食べていた。身長は149cmと小柄な方であるが、学校では結構人気があるらしい。実の妹なので、そんなに興奮することはないが、思春期の男女が同じ家にいると色んな所で気を使う。友人からは羨ましがられるが、自分はそうは思わない。
「美咲。おはよう」
俺はそういいながら、自分の席に着く。美咲の左側に位置し、正面には親父が、その右手には母が座る席がある。今朝は両親とも座ってはいないが、夕食時は基本的に家族全員で食べることの多いこの家庭は、今の時代珍しい部類に入るだろう。今日は平日なのに二人は朝から出かけて行った。いわゆるデートってやつだ。俺はなんで二人が、あんなにいつまでも愛し合えるのかが理解できない。まあ、そんな事は俺には関係ないが、しっかり働いてほしいものだ。元々母がお嬢様であった事もあり、お金には今のところ困っていないようだが、いい大人が平日の朝っぱらから遊びに出かけるのも変であろう。この食パンも本をただせば、爺ちゃん婆ちゃんのお金で買ったものだろう。そして俺は、美咲が焼いてくれたであろうパンを食べ始めた。
「今日は早く帰ってくるんだよ」
朝食を食べ終わり、さて出かけようとしているところに美咲から声をかけられた。
「ああ・・・今日は皆で食事に行くんだろ?」
「そうよ。今日はお母さんの誕生日なんだから」
忘れていたわけではなかったが、毎年毎年くる誕生日というものには憂鬱になる。この歳にもなって、家族と一緒に食事に行くというのは、あまり魅力に感じない。だが、このいわゆるプチ誕生会は強制参加なので、行かないわけにはいけない。
「わかったよ」
そう言って、俺は足早に玄関から外に出た。しかたない。今日はまっすぐ帰るか。俺は自転車にまたがり、学校へと向かった。