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婚約破棄を従姉に奪われた愛蘭は、伯爵家を追放され、路頭で死そうになるが、皇都で後宮画家になり、イケメン上司原水と出会い、溺愛される!  作者: 山田 バルス


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おまけその2 公爵令嬢ソフィア視点 三年後

公爵令嬢ソフィア視点 三年たったらあの木の下……


 


 三年という年月は、短いようで、永いものでしたわ。


 わたくしは毎朝、窓を開け、港の方角を眺めましたわ。

 今日かもしれない。

 明日かもしれない。

 そう思いながら。


 そして――その日は、突然訪れたのですわ。


 東国で、ブリテン帝国の野望を挫き、

 外交と知略の両面で大功を立てた英雄が帰国する。


 その名を聞いた瞬間、胸が大きく跳ねましたわ。


「……アンソニー様」


 港に降り立ったその姿は、三年前よりも、ずっと逞しく見えましたわ。

 少し大人になられた姿、

 そして、凛々しいお顔。


 まさに――わたくしの理想の殿方ですわ。


 待ちに待ったあの方が戻られたのですわ。

 わたくしは嬉しさで歓喜しましたわ。


 人垣をかき分け、わたくしは一歩前に出ましたわ。


「お帰りなさいませ」


 アンソニー様は、はっとしたように顔を上げましたわ。


「……ソフィア嬢?」


 信じられないものを見るような目。


「わたくし、待っていましたわ」


 その言葉に、彼はしばらく言葉を失っていましたわ。


「……まさか。あなたのような素敵な女性が、まだ私を待っているなんて」


 そして、苦しそうに視線を伏せるのです。


「私は……愛蘭を追って東国へ行った男だ。このまま、あなたと寄りを戻すなど、あなたに失礼すぎる」


 その拒絶は、誠実さから来るものだと、わたくしにはわかりましたわ。


 ――でも。


 わたくしは、そんな言葉では迷いませんわ。


 


 その夜、アンソニー様の功績を称える祝典が開かれましたわ。


 音楽、光、笑顔。

 華やかな夜会の中心に、彼はいましたわ。


 わたくしは、彼を見つけると、そっと声をかけましたわ。


「少し、外の空気を吸いませんこと?」


 バルコニーは、涼しい夜風に包まれていましたわ。

 お酒も入っていたのでしょう。

 わたくしも、アンソニー様も、少しだけ理性が緩んでいたのだと思いますわ。


「……なぜです?」


 彼は困った顔で言いましたわ。


「私は、あなたを裏切った。そんな男を選んではいけない」


 そして、静かに続けます。


「あなたは素敵な女性だ。私ではなく、あなたを幸せにしてくれる男性を選ぶべきだ」


 ――その言葉を聞いた瞬間。


 さすがのわたくしも、堪えきれませんでしたわ。


「……ふざけないでくださいませ」


 だからヤケになって、わたくしは、バルコニーの縁に足をかけましたわ。


「アンソニー様と結婚できないのなら――わたくし、ここから飛び降りますわ」


「なっ……!」


 あああ、次の瞬間、アンソニー様に強く抱き止められましたわ。


「馬鹿なことを言うな!」


 彼の息が、近い。


「自殺なんてしてはいけない。あなたを愛している人が、どれほどいると思っているんだ」


 その腕の強さに、胸が温かくなりましたわ。


 ――だからでしょう。


 わたくしは、少し大胆になっていたのですわ。


 彼の顔を両手で押さえ、唇を重ねましたわ。


 アンソニー様は、目を見開きましたわ。


「……っ!」


「ふふふ、いい気味ですわ」


 おどけて、そう言いましたわ。


「口づけを交わしたのに、責任を取ってくださらないなら、わたくし死にますわ。遺書にはちゃんとそのことを書きますのよ」


 彼は、完全に言葉を失っていましたわ。


「……それでも、いいのですか?」


 わたくしは、まっすぐに見つめましたわ。


 彼は苦しそうに言いましたわ。


「あなたは……私でいいのか。私は、あなたを裏切った男だ。選ばれる資格はない」


 わたくしは、首を大きく左右に振りましたわ。


「資格はありますわ」


 はっきりと。


「なぜなら、わたくしはあなたを愛していますから」


 胸を張って、続けます。


「他の者が許さなくても、わたくしが許します。後ろめたいのなら――それ以上に、わたくしを愛してください」


 静かな夜でしたわ。


 彼は肩で息をし、そして――深く、ため息をつきました。


「……降参です」


 呆れたような微笑みを浮かべて。


「あなたに死なれたら私は一生、後悔する」


 彼は、わたくしの前にひざまずき、手の甲に優しく口づけを落としましたわ。


「ソフィア嬢。どうか、私と結婚してください」


 その瞬間。


 わたくしは、嬉しさのあまり、彼に抱きつき――

 恥かしいことに、そのまま、意識を失ってしまったのですわ。


 ◇ ◇ ◇


 半年後。


 わたくしたちの結婚式は、何の障害もなく執り行われましたわ。

 もともと婚約は継続中でしたから、すべては驚くほどスムーズでしたわ。


 お父様は少し不機嫌そうでしたが――

 きっと、お腹の子が生まれれば、すべて許してくださるでしょう。


 わたくしは、確信していますわ。


 あの日から待ち続けた三年間は、決して無駄ではなかったと。


 わたくしは、愛する人を選び、

 そして――幸せを、掴み取りましたのですわ。

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