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婚約破棄を従姉に奪われた愛蘭は、伯爵家を追放され、路頭で死そうになるが、皇都で後宮画家になり、イケメン上司原水と出会い、溺愛される!  作者: 山田 バルス


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閑話3 ブリテン帝国 キャサリンの狙い

キャラリンの確信 ――獲物を定めた瞬間――



 初めて劉原水を目にした瞬間、わたくしは理解した。

 ――ああ、この男は「使える」。

 そして、それ以上に――「欲しい」と。


 東国の官吏にありがちな卑屈さはなく、背筋は自然に伸び、視線には迷いがない。

 武官でもないのに、あの落ち着き。外交の席に立つ人間特有の、感情を内に隠す技を身につけている。

 そして、もっとも気に入ったのは、見た目だ。

 整えられた黒髪、鋭すぎない眼差し。女に媚びない態度が、ともて興味をそそる。


(将来性もある……ええ、間違いない)


 わたくしはブリテン帝国には戻れない。

 それは、もう決まっている事実だった。


 祖国は遠く、戻ったところで「厄介な女」として処理されるだけ。

 ならば――この東国で、最も有利な場所に居座るしかない。


 劉原水は、そのための「最適解」だった。


 彼は帝に近い存在でありながら独身である。

 だからこそ、利用価値が高いし、わたくしが入り込む余地がある。


(一時的にでも婚姻する以外の選択肢はない……ええ、それしかないのだわ)


 それは打算であり、同時に――愉悦でもあった。


 わたくしは、自分の欲望に正直だ。

 彼の外見を、気に入った。

 声も、所作も、距離の取り方も。

 すべてが「手に入れがいがある」。


 想像するだけで、胸の奥が熱を帯びる。

 彼が、わたくしだけを見る未来を。


 ――だが。


 彼の隣に、すでに「女」がいた。


 あれが噂の愛蘭。

 フランの王族の血を引く娘。

 後宮絵師などという、曖昧で厄介な立場。


 確かに、美しい。

 異国の血を感じさせる瞳、柔らかな輪郭。

 守ってやりたくなる類の女だ。


(……けれど)


 わたくしほどではない。


 それに、あの女の美しさは「無自覚」だ。

 自分がどれほど価値を持つか、理解していない。

 それが、何より気に入らない。


 劉原水を見る、あの視線。

 まだ恋とは言えない、だが確実に“情”を孕んだ眼差し。


(先に見つけたからといって、勝者だと思わないことね)


 わたくしは、奪うことに慣れている。

 地位も、信用も、男も。


 愛蘭は――潰す。


 正面からではない。

 そんな野蛮な真似はしない。


 噂。

 疑念。

 出自。

 外交上の「問題」。


 方法はいくらでもある。


 彼女がフランの血を引くことは、武器にもなるし、致命傷にもなる。

 ブリテン帝国とフラン王国の関係を考えれば、なおさらだ。


(フランにも、愛蘭にも……絶対に負けない)


 そう、わたくしは負けない。

 この東国で、生き残るために。


 マイケルとの会話は、その夜だった。


 灯りを落とした応接室。

 酒杯を傾けながら、わたくしははっきりと宣言した。


「わたくしは、劉原水を手に入れますわ」

「そして、愛蘭は排除する」


 一瞬の沈黙。

 だが、マイケル卿はすぐに笑みを浮かべた。


「それは頼もしいですな、キャラリン嬢」


 彼は、嬉しそうに頷いた。

 ええ、その反応で十分。


 彼も理解しているのだ。

 これは感情の問題ではなく、戦略だと。


「ブリテン帝国のためにも、わたくしのためにも」

「彼は、必要な男ですの」


 マイケルは杯を掲げる。


「成功を祈ります。――いえ、成功するでしょう」


 その言葉に、胸が高鳴る。


(ええ、当然)


 劉原水は、わたくしのものになる。

 必ず。


 そして、愛蘭は――

 気づいた時には、すべてを失っているのよ。


 わたくしは微笑んだ。

 鏡に映るその笑顔が、あまりに完璧だったから。


 ――狩りは、もう始まっているのだから。

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