愚直
間違った美徳にしてほしくない。
一度決めたのなら信じ抜いて
いつかそのむこうに届くだろうと
貫きとおすために一点にちからをしぼり
まっすぐ そそぎこむような愚直さを
美徳としているひとよ
いくら報われなくてもあきらめずに
挑み続ける懸命さとひたむきさは
時に賞賛や羨望を浴びるかもしれないが
それがほんとうに「最善」であるかには疑問がある
いや ほかに「最善」があるとしても
そんな器用さがじぶんにはないからこそ
「最善」ではなく愚直という「最良」を選ぶのだと
胸をはられたのなら
賛辞を送りたくなる気持ちもわかる
だけど愚直はときに
むしろ怠慢となりうる危険性を孕んでいるものだ
盲目的にひとつの方法を信じることによって
ほかの方法に頭をめぐらせたり
その方法がほんとうに信ずるに足りるのかと
考え直してみる「思考」と
ほかの方法を試して比較検証してみる「試行」
ふたつをおこなう場を奪ってしまっているとしたら
それこそ怠慢のうえにのっかった愚直さだ
「思考」と「試行」を経て
その他を雑念と排除することを
「判断」と「選択」して愚直に至る
そんな懸命さとひたむにさこそをのみ
愚直と呼びつつも賞賛と羨望を贈りたい
私は飽きっぽいので、程遠いですが。




