第9話 分からない僕
「ごめん、遅くなった! 先に並んでると思ったけど、外で待っててくれたんだな…ってみんな顔どうした?」
何故か並ばず、青ざめた顔をしている4人。僕と田中くんは目を合わせ、首を傾げる。
「な、なんでもないよ。さっ…のろのろ〜…」
いつも強気な零野さんだが、言葉に気迫が無い。
「そ、そうだね。のろう〜」
引き攣った笑顔の甘井さん。
「お、おい! 行く…」
廻宮くんがチラッと僕の顔を見たあと、
「よな! よっしゃあー! 行くぞー!!」
ジェットコースターに乗るだけなのに、両頬を力強く叩き、気合を入れて並びに行った。
波風くんはコーヒーカップをプルプル振るわせながら、廻宮くんの後ろを着いて行く。
「どうしたんだろう、皆んな」
「どうしたんだ、皆んな」
僕と田中くんは声を揃えた。よく分からないまま、4人の後を追う僕達。
入り口には待ち時間は30分と書いてあった。並び始めてから10分ほど経つが、4人が黙り込んだままだ。この6人で行動してから少ししか経っていないが、それにしても静かすぎる。
「なぁ、皆んなどうしたんだ? テンション低いけど。何にも無い事はないだろ?」
僕が言わなくても、田中くんが聞いてくれるから助かる。
「あ、あのね…」
と、零野さんが僕をチラチラ見ながら、気まずそうに話し始める。
「まさかの、この4人、みんな絶叫系苦手だって事が分かってさ…」
「えぇぇぇ!!」
僕と田中くんが驚く。だって、メリーゴーランドから次のアトラクションに向かう時、全員一致でジェットコースターと言っていたんだから。
「じゃあ、やめましょうよ。無理して乗る必要無いですよ」
4人という、僕が人と会話する中で史上最多の人数だから怖くなり、田中くんの後ろに少し隠れながら、気遣いの言葉をかけた。
「ちなみにさ、角田はジェットコースターとか乗れる系?」
と、廻宮くんが僕に聞く。
「乗れますね。幼少期に一度来たぐらいですけど、その時にこのジェットコースター5回乗りました」
と、顎に手を当てながら目をキランッとさせて、僕が話すと、
「じゃあ… 辞めないぜ、俺は!」
と、腕を組んで鼻から鼻息が目に見えるぐらいの勢いで息を吐き出した。
「そうだね、じゃあ私も降りるのパス!」
「私も頑張る!」
「ん、ん、ん。僕も乗るよ」
零野さんは並んでいる場所の仕切りに両肘を付き、もたれかかり、両手をガッツポーズして可愛らしく気合を入れる甘井さん、カップに入っていたコーヒーをごくごく飲み干して、いつもより目が開き切っている波風くん。
「む、無理はダメだって」
僕は、背負ったリュックを握りしめながら4人に伝える。田中くんの方を見ると、
(何かこの人ニヤニヤしてるんですけど。怖い。何で?)
にやけて何も話さない。
「違うの、本当はこんな姿、角田に見せるつもりじゃなかったんだけど、私たち想像以上にイモっちゃって。ここ、角田が選んでくれたでしょ? だから、苦手だとか言って乗らないのは無しだからさ」
「ん?何でですか?」
(何故、僕が選んだから乗らないという選択肢が、無くなるの? 全然分からない)
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