第4話 気まずくなる僕
バスに乗り、しばらく腹痛と戦ったが、なかなか治らず、サービスエリアについて用を足し、やっと平常運転に戻った。だが、平常運転に戻ったとしても、初めての行事参加が修学旅行とは、なかなかハードルが高い…。
行く気が無かった僕は、バスの席順を見ていなかったが、田中くんの隣だった。
「腹いてぇの治ったか?」
と、心配する田中くんにうんと頷き、僕は質問する。
「ねぇ、朝の僕を追いかけて来た人って誰だったの?」
「あぁ、目の前に通った、ただのジョギングしている知らないおっさんだよ」
「え、やっぱり知らない人だったの!?」
片足と両手を挙げて、できる限り壁に引っ付いて引いた僕。田中くんは挙がった腕をゆっくりと下ろしながら、
「角田見つけた時、信号変わりそうだったんだよ。学校の近くで信号無視するのは、先生に見られたらめんどくさいからよ、ジョギングのおっさんに、あのメガネかけてる男子校生、捕まえて下さい! グラビアアイドルの『麗 花』のし… って言ったら、全速力で走って追いかけてくれてさ。ほんと助かったよ」
(いやいやいや、親戚でもないですけど!? なんなら、僕も一目見たいぐら… じゃなくて、本当、田中くんは何で、僕なんかに執着しているんだ?)
「そ、そうなんだ…」
僕は愛想笑いをしながら、目的地に着くまで寝ようとしたが、
「おい、腹痛いの治ったんなら寝るなよ!」
傾けた体を起こされ、
「まだまだこれからだ。寝たら勿体無いぞ。頼んでたやつ持って来たか?」
ノリノリな田中くんに圧倒される僕。
(そうだ、この頼まれていたやつのせいで僕は修学旅行の準備をして家を出たんだった)
リュックから箱に入ったクッキーにチョコレートがかかっているお菓子を取り出し、田中くんに見せた。
「お、センスいいじゃん!」
(よかった…)
ホッとする僕の隣で、リュックの中をかき分ける様に何かを探している田中くん。何だか様子がおかしい。冬なのに、だんだん汗が出ている気が…
探すのはやめて、ふぅーっと息を吐いたら、爽やかな顔をしながら、
「ごめん、忘れたっ」
と、言ったのだ。
「馬鹿野郎、田中くん! なんだか、ぼ、僕だけ浮かれているみたいじゃないか…」
忘れていた事に僕は怒っていない。ただ、ずっと行事を休んでいたのにも関わらず、浮かれてお菓子を買って来た僕に苛立ったんだ。
「ご、ごめん、角田…。俺から言ったんだから、お金返すよ」
と、千円を僕の手に置いた。
「いや、こんなにもしないよ!?」
「細かいの無いから残りはあげるよ」
「いやいや、これご両親のお金だろ!? 釣りはいらねぇみたいな事されても困るよ!」
僕は田中くんに千円を返して、目を瞑り壁に寄りかかった。それから、少し気まずい空気が流れながら、目的地に着いた。
バスに降りてからも、田中くんは僕に話しかけることも無く、陽キャ達とワイワイしている。
(所詮、僕を揶揄いたかっただけだったんだ。…って、何で僕は落ち込んでいるんだ?)
友達でもなかった田中くんが、他の生徒と楽しそうにしているのが少し気に食わなかった。今まではボッチでも何とも思わなくなったのに、牛丼の紅生姜の様な無くても食べることは出来るけど、無かったら無かったで欲しくなる、そんな感情が僕の胸をざわつかせる。
修学旅行初日は、合同の観光をして、ホテルに向かった。
「夕食の時間があるから、みんな荷物を置いて整理をしたら降りて来てくれ」
と、先生の声掛けの後、各自部屋に向かった。そういえば、僕の部屋は誰とだろう…
ガチャッ…
伝えられた僕の部屋番号の前に着き、扉を開けると、
キー…、バタンッ!
田中くんが見えて、急いで扉を閉めてしまった。
「おい、角田! 部屋合ってるぞ!」
と、どんどんドアを叩いて、開けようとする田中くん。僕は気まずくて顔を合わせたく無い。
「コ、コノ扉ハ、故障シマシタ… シバラク立ッテカラ、ゴ利用クダサイ…」
と、声を変えてその場をどうにか魔逃れようとする僕。だが、ひょろひょろの僕は、ガッチリしている田中くんに力で勝てるはずはなく、扉が開いてしまうのだった。
「角田…」
(あぁ、きっと何してんだって怒られるんだろうな…)
「角田、このドア喋るのか!? 自動ロックついてない普通の鍵穴ついてるドアだけど。何だかイマドキだなぁ〜、修学旅行楽しぃー!」
「馬鹿野郎! 自動ロックついていても喋るかー!」
と、気まずかったバスからやっと言葉を交わせた僕と田中くんだった。
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