第12話 スキップする僕
修学旅行先が近場だったので、あっという間に学校に着き、解散した。同じ班だったメンバーとも別れ、1人でトボトボ家に帰る僕は、時々スキップしたりなんかもしてみるほど、楽しく充実した修学旅行だった。
家に着くと、
「充、おかえり」
と、優しい笑顔の母。
「た、ただいま」
と、いつも休んでいるのに、珍しく行事に参加した事が少し照れ臭くなる僕。
夕食を食べている最中、母はスマホを見ながら終始ニコニコだ。
(何かいい事でもあったのかな)
そう思いながらも、何も聞かず僕はお風呂に向かった。僕がお風呂に入っている間に、父が帰ってきて、母と父の話し声が聞こえてくる。
「お父さん、これ見て」
「おぉ!? 充が…」
「し! 充に聞こえちゃうじゃない」
「何だその顔は。涙と鼻水で5歳は歳食ってるぞ」
「うるさいわね。お父さんも、メガネ濡れてるわよ」
「お互い様だろ」
(父さんと母さんが泣いてる? そして僕に隠そうとしている… どういう状況?)
よく分からない状況に戸惑いながらも、僕はお風呂から上がり、リビングに戻る。すると、慌てて、平然を装う両親。首を傾げて、ソファに向かうと、キッチンへ向かう母と肩をぶつかってしまった。
「ごめ… ん? それ何の写真?」
「あ、あああの、これはね…。充、今から母さんが言う事、怒らないで聞いてくれる?」
「何の事か分からないけど、分かった」
「充、行事全部お休みしてたじゃない? お父さんも、母さんもちょっと心配はあったの。学校で虐められたりとかしてないかなって。でも、充は何もされてないし大丈夫って言うし、普段の学校は休まないし、見守る事にしたんだけど、今回の修学旅行に行った事で、本当に修学旅行に行ってるのか心配になったの。修学旅行に行くフリして、違うところで寝泊まりするんじゃないかって。過保護すぎるかも知れないけど、念のため学校に連絡したら、担任の先生に繋げてくれて、ショートメッセージで、この写真を送ってくれたの。そしたら、この充、すっごく楽しそうで幸せそうな顔してて。周りのお友達も優しそうな子達で、すっごく安心した。ごめんね、勝手に心配して。充に合う友達が出来たみたいで、良かったね。そして、頑張ったね、充」
と、両親は僕を抱きしめてくれた。両親は僕が行事に参加しない事を干渉してこなかった。きっとどうでもいいんだろうと思っていた。何も言ってこなかっただけで、心配をかけていたんだという事、頑張ったと褒めてくれた事に、ごめんなさいと嬉しい感情が溢れ、涙がポロポロと出てくる。後一年で成人する歳なのに、恥ずかしい姿だ。
それから、僕が行事に休んでいた理由、これまでの学校での状況をちゃんと説明した。両親からは、薄々感じていた事と、何もできなくて悪かったと謝られた。両親は何も悪くない。僕が弱かったのが悪いのに。
「でも、その田中くんって人と出会えて良かったね。次の学校からは、楽しみになるんじゃない?」
と、母の一言で、浮かれ気分だった僕の心に霧がかかる。修学旅行期間は、ワイワイとその場の雰囲気ノリもあっただろうが、休みを挟み、学校が始まっても僕は友達として見てくれるのかと言う不安が芽生えたからだ。僕自身、家に帰って来て、我に帰ると、あのグループに本当に僕が必要か?と自分に問うと、答えはNOだ。今までは、居ない存在として学校に通っていたから気が楽だったが、人の目をまた気にしないと行けないと言う現実が、僕を突き刺し、もやもやな振替休日を過ごすことになった。
一日の休みが終わり、また学校が始まる。
(あー、憂鬱だ)
母は僕がノリノリで学校に行くと思っているから、今日の朝ごはんは特に豪華だ。こうやって喜んでもらえるだけでも、ありがたいと思わないと行けないなと、霧のかかった心は隠し、笑顔で家を出る。
学校に着き、教室に向かうがいつもより足が重い。今にでも体調不良を理由にして帰りたいぐらいだ。教室のドアを開き、僕の席に座ると…
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