第11話 初いじりをする僕
ポン…………
ジェットコースターを終えた6人は1人を除いて、疲れ切っていた。
「あぁー楽しかったっ! もう一回乗るかー?」
と、ノリノリの田中くん。僕を含めた残りの5人は空気読めよと、目で訴える。
「まぁー、乗らないよなっ。じゃあ次は…」
(そろそろお腹すいたから次は昼食かな)
と、僕は予想した。きっと皆んなもお腹が鳴っているし、昼食にしたいんだろうなと、察する事が出来たが、
「シングルライダー乗ってくるわ!」
と、田中くん。
(おいおいおい、空気読めないにも程があるだろ!!)
「馬鹿野郎! 田中くん!」
と、僕は思わず引き留めてしまった。もし僕が引き留めなかったら、皆んなは優しく見守っていたのかなと思うと、でしゃばりな事をして、友達キャンセルされないか怖くなる。
「駄目だ。ジェットコースターで助けを呼ぶ声が聞こえた。俺は行かないと!」
と、田中くん。それに対して僕は、こう言ってやった。
「だったらスタッフ呼んだ方がいいですよ。自分が乗りたいだけで、ヒーローごっこに転換しないで下さい。お昼食べに行きますよ」
と、まだ公園で遊びたい子供と無理やり引っ張って連れて帰る親の様な光景が、4人の目に映る。
「ぶうっ!!」
「あはははっ…」
さっきまで顔色が悪かった4人が、いきなり笑い出し、顔に元気が戻った。僕と田中くんは目を合わせクスッと笑う。零野さんのおかげでエキサイティングなジェットコースターになり、疲労困憊だったはずなのに、いつの間にか、僕も元気が戻っていた。
賑やかでカントリーな音楽が、トリマ中に鳴り響きながらの、友達との昼食。何だか夢みたいで、宙に浮いてる様な感覚。皆んなそれぞれ、ホットドッグ、チュロス、トリマ名物激辛肉まんなどを並べ、美味しそうに食べている。
「角田は何買ったんだ?」
僕が喋れないことを分かって、質問して話すキッカケを作ってくれる田中くん。
「激辛肉まんです」
「え!! 辛いの、いけるの!?」
と、田中くんが驚いており、僕は、
「はい、キムチや麻婆豆腐など、幅広く辛いのは好きです。田中くんは何食べてるんですか?」
「ふっふーん。俺は、ホットドッグとチュロス、そして、ソフトクリームだ!」
「そうなんだ」
…。
(駄目だ! せっかく友達が出来ても、ブランクが長すぎて、話が続けれない…)
僕がどんよりしていると、
「あれ… 僕の激辛肉まんが…」
僕の手の中にあったはずの肉まんが無くなっていた。心当たりは田中くんしかありえない。田中くんの方を見ると、
(普通に食ってる…)
「あ、ごめん。さっきから手止まってたから、要らないんだと思ってさ。返すよ」
僕の手に、また戻ってくる激辛肉まん。
「田中くん、辛いの苦手じゃないんですか? さっき驚いていたので」
「あぁ、めっちゃ好きだよ。一緒だ!って思ったの」
(なるほど。あの驚きは、共感しての驚きだったのか。人の表情の一つでも、色んな意味があるんだな…)
僕が、返ってきた激辛肉まんを口へ運ぼうとすると、異変に気づく。
「馬鹿野郎! 後一口しか残ってないじゃないか!」
「あぁ、ごめん。最後の一口は買ったやつが食べないと行けないと思ってよ」
「いやいや、それもそうだけど、普通一口だけもらうんじゃないの? こういうのって」
僕がぷんぷん怒っていると、
「田中がごめんなぁ。俺のあげたかったんだけど、もう食べちゃって」
「い、いえ…」
気を遣ってくれる廻宮くん。
「僕のチュロスちょっとあげるよ」
と、コーヒー片手にチュロスを一口くれる波風くん。
「あ、ありがとう…。でもこれ以上は、波風くんの分が無くなっちゃうし、僕は大丈夫だよ」
それを見てた零野さんが、
「ここで我慢したらダメだよ。角田が、何言ってもこのメンバーは何も悪く思わないし、そもそも、田中の奇行のせいだし。良かったら私の食べる? ホットドッグ頼んだけど1個は多いなって思ってたから。はい、あーん…」
「じじじ、自分で食べれます…」
僕は手のひらをばたつかせて、あたふたする。
「何? 桃香にはあーんしてもらったけど、私のあーんはダメなの?」
「そういうわけじゃ…」
「だったら食べなさいよ。ほら、あーん…」
ざっくりと開いた制服のシャツから、小ぶりの谷間が見え、目を瞑るが、男の本能が邪魔をして薄目を開けながらあーんをしてもらう僕。
(頭がぼーっとして味がしない…)
「飲み込んだ? 次行くよあーん…」
「も、もう…! 食べれます、自分で…」
顔を赤くしながら、もらったホットドッグをかぶりつく。
「角田ずるいぞー! 俺もあーんしてもらいたかったな〜」
テーブルに肘をつき、手で顎を支えながらため息をつく廻宮くんだったが、
「いや、廻宮には絶対にしないよ?」
と、冷たくあしらう零野さん。
「何で!? 俺の事嫌いなの!? ここは皆んな仲良し〜ってさっき話してた所なのに?」
「いや、絶対私の指までかぶりつくじゃん。野生の廻宮なんだから」
「いや、食べないし! てか、野生って何? 一応、屋根の下で生活させてもらってますけど!?」
と、零野さんと廻宮くんが話していると、横から甘井さんが話に入る。
「だ、だったら、私がしようか? 私も張り切ってホットドッグとチュロス買ったけど、ちょっと多かったなって思ってたから…」
「い、いいの!? では早速… あーん…」
「は、はい! あーん…」
廻宮くんも同様、男の本能で察知する。しっかり上まで閉められた制服のシャツが、大きい胸のせいでボタンがはち切れそうな、甘井さん。あーんの体勢になる事でより胸が寄せられ、ボタンとボタンの隙間から見える、爆乳の谷間。そして、甘すぎる可愛い顔をした、甘井さんをしっかりと目を開けて交互に見ている。僕を含めた男子メンバーの3人が、羨ましそうに眺め、それを見た零野さんが口を膨らませ拗ねる。
「やーーっぱり! ダメ! まだ俺には早いわ! 甘井、それは自分で食ってくれ」
鼻の上を押さえながら見上げる廻宮くん。
「はい、イモった〜」
「イモですね…」
「芋、さつま芋だ」
指を差して笑う田中くん、メガネを直しながら田中くんに続く僕、テーブルの下で何故かガッツポーズをしている波風くんは、廻宮くんをからかった。
「うるせーよ。そんなこと言うならお前らもやってもらえよ」
「い、いや、俺(僕)は大丈夫…」
同じくまだまだウブな田中くん、僕、波風くんは、口笛を吹くなり、そっぽを向いて、イモった。
「これだから男子は…」
「あはは…」
と、呆れ顔の零野さん、引き攣った笑顔で笑う甘井さん。
それからは、アトラクションに乗ったり、お揃いのカチューシャをつけたり、TORIMA・TANOSINDEテーマパークを堪能した。ホテルの集合時間が迫り、走ってホテルに向かう僕達。まるで青春の1ページを刻む様に。
次の日、ホテルで朝食を食べ、お土産を買い、帰りのバスに乗った。
「あー楽しかった」
「私も楽しかったー! もう一日いけたね」
「また行きたいね」
「それなー修学旅行最高だったな」
「ズズズ… ご当地の豆買えた」
廻宮くんに続き、零野さん、甘井さん、田中くん、波風くんは大満足の顔だ。
「角田はどうだった?」
そして、田中くんからの質問。
「た、楽しかったです…」
と、メガネを触り、窓を見ながら答えた。窓ガラスに映る、班のメンバーの顔を見ると、皆んなガラス越しに笑って僕を見ていた。
「なんだかんだ、このメンバーで出掛けた事なくね?」
田中くんの言葉に、
「2年も残りわずかなのに、それなー」
と、廻宮くん。その横でコクリと頷く波風くん。
「それ思ってた。桃香とも話してたの、皆んなで遊びに行きたいねって」
後ろの席から顔を覗かせる零野さんと、甘井さん。
「じゃー、まずはカラオケからだな!」
「賛成ー!」
僕以外の4人は田中くんの提案に賛同した。
「角田は、カラオケ嫌か?」
「い、いや、嫌というか… 行った事が無くて…」
(しかも、僕、音楽は顔に似合わずHIPHOPが好きだし… 引かれたら嫌だな…)
「じゃあ…カラオケ決定な! これから時間の許す限り、角田のやった事ねぇ事、全部やろうぜ!」
「賛成〜!!」
また、田中くんの言葉に、僕以外の4人が賛同した。こんな僕なんかに合わせて遊ぶ必要の無いのに、僕を皆んなが見てくれてる気がして、メガネを持ちながら、下を俯く僕だった。
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