第1話 ボッチな僕
「今年クリぼっち確定だわ」
「可哀想に〜、私もその日空いてたら一緒居てあげれてたのにぃ」
「わー、羨まし。クリスマス前に別れた人の前で、惚気ないでよ」
「ごめんごめん。でも、冬ってイベント結構あるじゃん? クリスマスにお正月、バレンタインデーにホワイトデー! クリスマスは諦めて残りのイベントに勝負かけよ!」
「リア充さんは簡単に言いますけど、また一から始めるとなるとなかなか大変な道のりだと思いますよー」
クラスの女子の会話が耳に入る。
(今年はクリぼっち…。甘いな)
男女に限らず、ボッチ歴17年の角田 充。クリスマスに限らず、全てのイベント、ボッチ全クリア中の男に関係のない話だ。
僕はメガネをかけていて、サラサラな前髪パッツンショートヘア。学校にいる間は、席にずっと座り、帰りのチャイムが鳴ると下校。特に決まった趣味も無く、両親が曜日毎にいつも見ているテレビを見ながら食事して、お風呂に入って寝る、の繰り返しだ。退屈な人生を過ごしているなと思うだろ? 案外これも悪くないと思えてきたんだ。人と群れると嫉妬や争いが生まれる。思ってもない事も言わないと行けない場面もある。空気を読んでと言うヤツだな。そんなめんどくさい事もせずに過ごせるのだから、逆に幸せな生活を送っているのかもしれない。
今は高校2年の冬。俺は小学校に入ってから今まで、誰とも仲良くなった事はない。モブ的存在だ。いや、モブと言ってもいいのだろうか? 高校に入ってからは、オレンジ色の声が行き交う学校の中で、ボッチという事自体、少し恥ずかしく思う様になり、存在を消す事に徹底している。授業でも、近くの席の人達と班になってコンセンサス形式で受ける時でも、決まって仕切る人がいる。よって、僕は一言も話さず答えが導かれ、終了さ。遠足など、行事の日は、高校に入ってから常に休んでいる。
そうして、ボッチでいることすら目に入らない程、存在を消す事に成功し、もはや孤独感すら湧かない。最近は、この学校に来ると幽霊になれると思うほど、ウキウキしている。
だが、たった1人の男によって、僕の幸せで穏やかな生活を崩壊させたのだった…。
「なぁ、何でいつも本読んでんだ?」
僕は、目線や表情を変えず、ただ無でいる事に徹した。
「おい、聞いてんのか?」
僕に話しかけた人は、一点を見つめる僕と目を合わせる様に、本の上から覗きだしたのだ。そこで僕はこう言ってやった。
「もしかして、僕のことが見えるのですか?」
と。こう言えば、気持ち悪がり、去っていくだろう。ところが、
「お、お前… もしかして、う、ううう宇宙人なのか!?」
と、声を張り上げて言ったのだ。僕は思わず、
「馬鹿野郎!」
と、叫んでしまった。普段叫ぶこともなく、学校で人と話すこともないから、声が裏返りもう色々と最悪な事態が起きた。
「う、うう宇宙人が、日本語を話している? 凄い、俺、宇宙人と話がしてみたかったんだ。宇宙人は何の本を読むんだ!?」
田中くんは、僕の読んでいる本の題名、『花びらが散ったその後で』を読み上げる。
(おいおいおい、コイツ正気か? ボッチに何でいつも本読んでんだ?は禁句事項だし)
「宇宙人でも、人間が読む様な本読むんだな」
「いや、僕は宇宙人じゃ…」
斜め下を見つめながら僕はボソッと呟いた。すると、田中くんはとてもびっくりした顔をして、こう言ったんだ。
「いや、本当に宇宙人だなんて思ってねーよ、ノリだよノリ」
「じゃあ、さっきの顔は何だったんだ!? あたかも宇宙人じゃなかったのかよって驚いた顔してたけど!?」
急いで僕は口を塞ぐ。
(しまった…。心の中で留めておくつもりが、声に…)
「ははっ。角田って思ったより思った事、喋るんだな」
男の僕でもトキメク様な目の横にシワが入った笑顔で笑ってきた。だが、後ろからざわざわ声が聞こえる。
「え?角田? そんな人居たの?」
「俺知らない」
「私も私も…」
(終わった… )
高校生活残り1年とちょっとを残して、僕の存在が知られてしまった…。2年の冬まで話しかけて来なかったのに、何故今なんだ。
「馬鹿野郎、田中くん!!」
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