21 精神世界
壁|w・)ここから第三話のイメージ。
ふと、わたしは目を覚ました。
「あれ……?」
わたし、何をしていたっけ。終業式が終わって、学校から帰ってきて、リーナと一緒に晩ご飯を食べて、お布団に入って……。それで……。
「…………。ええ……」
家で眠ったのは間違いない。ちゃんと自分の布団で。それなのに、布団の感覚がない。
不思議に思いながら体を起こす。
「…………。どこ、ここ……」
知らない場所だ。見覚えのない場所だ。
わたしがいるのは、広い草原。見渡すかぎりの草原で、地平線の果てまで続いてる。そして、わたしの側には大きな木。紅葉に似てるけど、知らない木、だと思う。少なくともわたしは見たことがない。
それ以外は何もない。他に木があるわけでもないし、岩があるわけでもないし、ましてや民家なんてものもない。ただただ広い草原だ。
あとは、ちょっと薄暗い。夜、だね。何の明かりもないわりには、不思議と辺りが見える不思議な状態。本当に、なんなんだろう。
「あれ。菜月?」
そんな声が聞こえて、わたしは跳び上がるほどに驚いた。慌てて振り返って、木の方を見る。いつの間にか、セーラー服の見知らぬ誰かが立っていた。
いや、見知らぬ誰か、じゃない。だって、その顔は、毎日鏡で見てるから。
わたしだ。わたしが、いる。違うところは、髪の色が白いことだけ。あとは、声。でもその声も、わたしには聞き覚えのあるものだった。
「リーナ?」
「ええ、そうよ。こっちに入ってきちゃったんだね」
「こっち……?」
「精神世界……? そんな感じ」
「へえ……」
そういうの、あったんだ。リーナと話すようになってもう半年以上経つけど、こういう場所があっただなんて知らなかった。
「リーナはどうしてわたしの姿なの?」
「私からすれば、菜月が私の姿なんだけど」
「え」
リーナは、わたしが鏡の前に立ってその姿を見た時、本当に驚いたらしい。わたしの姿は、月にいたリーナの姿とほとんど同じだったのだとか。やっぱり髪の色が違うぐらい、だって。
「ええ……。そんな偶然、ある……?」
「さすがに偶然じゃないでしょうね。もしかしたら、私が宿ってしまったことで、体の成長がそっちに引っ張られたのかも」
「ええ……」
なにそれ怖い。ちょっとしたホラーだ。
「それで、あの……。ここは?」
「だから、精神世界。多分だけどね」
リーナはずっとここにいるらしい。わたしが起きていると、テレビみたいにでっかく映像が見れるのだとか。なにそれすごい。
「こう、空中にモニターが出てるみたいな、そんな感じよ」
「すごいなあ……。見てみたい」
「それなりに楽しませてもらってるかな!」
「そうだった、わたしが見ているものだった……」
空中に映像が出てるというのは見てみたいけど、それで見れるのがわたしが見ているものというのは……。なかなか、変な感じだと思う。
それにしても。精神世界。リーナはずっとここにいるんだ。なんだか、とても寂しい気がする。
「寂しくない……?」
「いや別に。菜月といつも話してるし。菜月が寝たら私も寝るし」
「あ、寝れるんだ」
「さっきまで寝てたわよ! 菜月が来たせいでたたき起こされたの!」
「ご、ごめんなさい!?」
それはとても悪いことをしてしまったような気がする。でも、わたしだって何の前ぶりもなくここに来てしまったんだ。正直、理由も何も分からない。
「どうやってここに来たんだろう? 帰るのはどうすればいいのかな……」
「さあ? 寝れば帰れるんじゃない?」
「そういうもの?」
「私だって初めてなんだから分からないわよ」
それもそっか。そもそもわたしに取り憑く形になっているのが、リーナからすれば想定外だったって聞いてるし。
「まあ、でも……」
そこでリーナは、少しだけ優しげに微笑んだ。
「せっかく来たんだし、ゆっくりしていきなさい。お菓子も何もないけれど、こうして面と向かって話すことなんて滅多にできないわよ」
「ん……。それもそうだね」
そうだ。正直、ここに来てしまった原因が分からない以上、次また来れるかは分からない。リーナとはいつもお話ししてるけど、顔を合わせての会話は初めて。
そう思うと、ちょっと楽しみになってきた。
「じゃあ、ちょっとお話し、しよう」
「ええ。そうしましょう」
わたしが言うと、リーナは嬉しそうに笑ってくれた。
・・・・・
話し疲れて、菜月が眠る。すると菜月の体は薄くなり、あっという間に消えてしまった。
やっぱり、私の推測は正しかったみたいだ。ここで眠ると、菜月は表、と言えばいいのかな? とにかく、戻れるらしい。
「さて……。私もさっさと寝ないとね」
この精神世界は時間の流れがゆっくりだ……なんて、都合のいいことはない。普通に時間が流れる。私に肉体はないけど、精神が疲れるというのはあるみたいで、夜更かしすると翌日はちょっと眠気が続いたりする。どういう状態なのか、本当に分からないけど。
それにしても……。
「改めて見てみても、やっぱり私と同じ姿だったわね……」
菜月の姿は、私の月の姿と本当にうり二つだった。正確に言えば、私の幼少期と、だけど。ともかく、ほぼ同じ。
私に引っ張られたのかも、なんて菜月には言ってみたけど、さすがにそれはないと私は思ってる。魂が宿ったところで、肉体に影響するとは思えないから。
いや、影響……しないよね? しないはず。うん。きっとしない。調べようがないから分からないけど。
「さて……。どういうことかしらね」
考えたところで今はまだ答えなんて出るわけがないけれど。私はその場で横になって、眠りに落ちるまで考え続けた。
んー……。でも、やっぱりちょっと、体は羨ましいなあ……。
・・・・・
壁|w・)らすぼすむーぶ!




